べ、別にあげたくてあげるわけじゃないんだから!
『もう一度言おう。今引き返すなら見逃してやる』
大地に降り立ち、私たちを見おろしている巨大鳥は山と見間違えちゃうくらい大きい。
ただ、話しかけてきたということは交渉の余地があるのかもしれない。
とりあえず大声で話しかけてみる。
「あのー!私の声聞こえますかー!」
『聞こえるぞ』
「私たちこの先にあるシャトールブドーという果実を採りに来ただけなんですー!それ採ったらすぐに帰るんで通らせてくださーい!」
『…』
私がシャトールブドーと口にしたらものすごい勢いで睨んできた!
『その果実は我の魔力で育てたものだ。誰にも渡すことはない!わかったらさっさと帰れ』
凄い鬱陶しそうにこっち見てくるんですけど!
ちょっとイラっと来たけど、ここは冷静に相手の気持ちになって考えてみる。
確かに自分が一生懸命作っていたものを知らない人が突然やってきて、それ欲しいんでくださーい!とか言ってきたら…なんだこいつ?ないわーってなるね!うん。
「どうする?」
「戦って勝てば納得してくれるんじゃね?」
「えー。なんかそれかわいそうじゃない?」
「あの鳥が喜びそうなのなんかないの?」
「見たとこあの鳥オスだし、芽衣のお色気で何とかならん?」
「私~!?」
「このメンツだと一番性的なのは芽衣だし」
「葵いい?」
「いいよ」
「葵ちゃん!?」
「ちょっとだけ!試しに少しだけでいいから!」
「ええ~…意味ないと思うけど…」
芽衣が納得していない表情で一歩前に出て、上目遣いで巨大鳥を見上げる(若干胸元を見せながら)。
「かわいい鳥さん♡ちょっとだけ鳥さんのブドー。分・け・て?」
ノリノリじゃねーか!
『我を馬鹿にしているのか?』
しかもダメだし!
でもちょっと鼻の下ひくひくしているような…あと心なしか赤くなっているのような…?
小声で作戦会議をする。
「(意外にこの路線は間違ってないかもしれないわね)」
「(スケベな鳥だし)」
「(女の子にお願いされ慣れてない感じね。可愛い系で攻めてみる?)」
「(一番かわいいのはリルちゃんかな)」
「(リルが?)」
「(おじいちゃんに甘える感じでお願い)」
「(…わかった!リルやってみる!)」
リルちゃんが芽衣と交代で前に出る。
「あの!リルはリルって言います!鳥さんのお名前を教えてください!」
『小さきものに教える名前などない』
「え…そんなぁ」
『…ペトリョスだ』
「ペトリョスさん!」
『う、うむ』
いいねー!リルちゃん。
完全にペース握ってるよ!
「お姉ちゃんたちがどうしてもブドー欲しいんだって!だからお願いします!」
『先ほども言ったが…誰にもやる気はない』
「どうしたらくれますか?リルができることなら何でもやります!」
『う、うむ。だからな…』
「ちょっとでもいいですから!」
『いや、あのな…』
「お願いします!」
それからリルちゃんのスーパーごり押しタイムが始まった。
お願いします!→いやいや→どうしてもダメ…?→う、うむ。
を繰り返すリルちゃんとペトリョス。
その会話を聞いていて思ったけど…リルちゃんは将来いい主婦になれるね!
値切り主婦になりそう。
そんなどうでもいいことを思っているとついに会話の流れが変わった。
『わかったわかった!もう好きなだけ持っていけ!』
「本当?ありがとうペトリョスさん!」
『ああ。その代わり採ったらさっさと帰ってくれ…まったく…なんなんだこいつらは…』
ついに根負けしたペトリョス。
結構粘ったじゃない。私がリルちゃんに串焼きおねだりされたときは1分もたなかったよ!
『その代わり、我もついていく。大量に採られると困るからな』
そう言って徐々に小さくなっていき、人型になったペトリョス。羽が頭についていたりして、部族の長老みたいだ。
ダハクさんとかルコアさんも人化できるし、ある程度力を持った魔物は人化できるようだね
「こっちだ。ついてこい」
「私の出番なかったし。ついてきた意味あるの?これ」
「キューさんは血を吸ってただけよね」
「まあ楽しかったしいいんじゃない?」
ペトリョスについていきながらせっかくなんで話しかけてみる。
「ペトリョスはずっとこのジャングルで住んでいるの?」
「まあな。シャトールブドーを見つけてからはずっとここに住み続け、日々品種改良を行っている。これは我の生きがいだ。だからお前たちのような見ず知らずの輩にくれてやる気はないのだ」
「そんな大事なものを分けてくれてありがとう!ペトリョスさん!」
「う、うむ。特別だぞ」
鳥のツンデレいただきました。
「着いたぞ。これがシャトールブドーだ」
「おお!」
「でけえ!」
「これは…想像以上ね」
「ファンタジー」
それは私たちが想像するぶどうとはサイズから違った。
まずブドーが生っている木が何千年も生きてきたかのような大木で、その木になっているブドーの一粒がバスケットボール以上の大きさ。
一房で見ると私たちより大きいものもざらにある。
「こんなの初めて見たよ!」
「すっげえ!」
「木が凄いわね。生命力を感じるというか」
「初めはかなり小さかったのだがな。魔力を与えるとより大きく、よりうまくなることが分かったのだ。それからは何年、何十年とかけて大きさと美味しさが丁度よくなる魔力量はどれくらいかの研究を続ける毎日だ」
「へえ~。そんな話を聞いちゃうと食べたくなるよね」
「ペトリョスさん。1つ食べてみてもいい?」
「もう好きにしろ」
ペトリョスの許可が出たので1ついただく。
かなり大きいので全員で1粒を分けることに。
私たちは遠慮をわきまえていますから!
夕陽が切り分けてくれたものを食べる。
「こ、これは…!」
口の中で広がる果汁。皮もほんのり苦くていいアクセントに!
そして喉越しはさっぱり!
「おいしい!」
「大きいから味は期待していなかったけど、とても繊細で美味しいわね」
「果汁がぶわっと口の中で広がるね~」
うまいぞ!」
「これなら寝起きでも食べられるし。夜食にもいいかも」
「すっごく美味しいです!ペトリョスさん!」
「…そうか」
この世界に来て食べた果物の中で一番おいしいかもしれない。
ユアとメアちゃんにもお土産で持って帰りたいな。
ここら辺一帯は全部シャトールブドーの木だし、ちょっとくらい持って帰ってもいいんじゃないかなー。チラッ。
ペトリョスをチラ見してみる。
「そんな風に見なくても、好きなだけ持っていくがいい」
「あれ?急に太っ腹になったね」
「お前たちの美味しそうな顔を見ているとな。何十年も研究してきた我の成果はちゃんとあったのだとな。実感できた。この感情は我1人では得ることのできなかったものだ。遠慮せずに持って帰れ」
「わーい!ありがとうペトリョスさん」
「うむ」
最初はずっと顔が険しかったけど、今はたまにチラッとリルちゃんを見ては孫を見るようなまなざしで見つめているペトリョス。
まぁリルちゃんはかわいいからね。ただでさえかわいいのに狼耳がついてさらにあざといからね。
そして葵はペトリョスの目を盗んではせっせとシャトールブドーを回収している。
あまりばれないように転移で飛びながら複数の木から満遍なく採っているのでペドリョスは気付かないだろう。葵ナイス!
それからもシャトールブドーを満喫しつつ、ペトリョスの苦労話を聞いていたのだけど、そろそろ夕食の準備をしなければいけないので帰ることに。
「なんだ。もう帰るのか」
「うん。娘のご飯の支度しないといけないから」
「ふん。騒がしいやつらだ。もう来るんじゃないぞ」
と言いつつもまた来てほしいくせにー。ほんとツンデレなんだから。
「それじゃあね!ペトリョスさん!」
「うむ」
「葵よろ」
「ん」
葵の転移でサキさんとイルキさんのいる魔王城に移動する。
そこでは四つん這いで目隠しされた男性の背中に足を乗っけているサキさんと、それを見ながらワインを飲んでいるイルキさんが目の前に。
「ほらぁ!もっと無様に泣きなさい!」
「ぶひぃ!ぶひぃ!」
「うふふ。…あら。お帰りなさい♪」
「おや。早かったね」
「「「「「「………」」」」」」
「サキとイルキはこれが日常茶飯事だし。気にしなくていいし」
「葵」
「ん」
何も言わず私たちはキューさんを置いて王城を後にした。
家に戻ってきて一息つく。
ふぅ。
…そりゃショータくんも魔王は悪いやつだと思っちゃうよ!あんな光景を子どものうちに見せられたらさ!
「何やってたんだ?あれ」
「フェル君にはまだ早い」
「大人の世界」
「そっかぁ。大人になったらあんなこともするのか」
いえ。特殊な人だけです。
「ま、まぁ最後はあれだったけど、無事にシャトールブドー採れてよかったね」
「ええ。明日にでもサキさんとイルキさんに届けましょう」
「うん。そうだね。日を改めよう!」
そういえばブドーがワインになるまでどれくらいかかるんだろう?
明日サキさんとこに行けばわかるのかな。
次の日。再び魔王城。
「すぐできるわよ」
「え。そうなんですか?」
シャトールブドーを持って朝から魔王城に来た私たち。
どれくらいでワインが完成するのかサキさんに尋ねてみると意外な答えが返ってきた。
「他ではどれくらいかかるかわからないけどね。私たちにはワイン作り専用の魔法があるから」
「まあ見ていなさいな♪持ってきてくれたシャトールブドーをこの樽の中に入れてちょうだい」
葵が樽の中にブドーを入れる。
「さすが世界最高峰のシャトールブドー。昔見た頃よりも格段にうまそうだ」
「よし。それじゃあ久しぶりにやりますか♪」
「ああ」
「「【グラヴィトン】」」
サキさんとイルキさんが樽の上で手をかざし、重力魔法を発動。
樽の中でシャトールブドーがつぶれる音が聞こえる。
「【選定・果皮、種子】」
続いてイルキさんが選定のスキルを発動。
イルキさんの横にあったかごの中に果皮や種子が突然現れる。
つまり、樽の中には果汁だけが残っている状態なのかな?
「【発酵】」
次にサキさんが発酵のスキルを発動。
もうここまでくると私はこの後どうなるかわかりません!
というか、発酵って腐らせるって意味だよね?たぶん。大丈夫なの?
私の不安をよそに2人はどんどん作業を進める。
それはもう慣れた雰囲気で、熟練のプロっぽい。
「【熟成】………【選定・不純物】」
「だれかー!ワイン瓶持ってきてー!」
「こちらに」
「ありがと♪この樽にあるワイン全て詰めてちょうだい♪」
「「「「喜んで!!」」」」
あれよあれよという間に完成…したのかな?
一番最初に詰められたワイン瓶をもってこちらにやってくるサキさんとイルキさん。
「お待たせ。早速飲んでみる?」
「いただきます!」
最高級ワインの味はどうなのかな!?
さーて、どんな戦闘を書こうかな?
と思ってパソコンの前に座ったんですが…
朝日たち戦いませんでしたね。
ほんと作者のプロット通りに動いてくれない子たち。まぁそれが書いてて面白いんだけども!




