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JK4人の異世界暮らし!  作者: 綿あめ真
南の混成魔王と白百合騎士団~学校通うよ!~
73/100

朝日VS佐々木小次郎

「きゃああああ!」


 芽衣の悲鳴が戦場に響き渡る。

 きっと私のグロテスクな姿を見てしまったからだろう。

 両手両足を秘剣・燕返しとやらで切断された私を。


 しかしそれを見ても冷静な葵が芽衣を諭す。


「大丈夫だよ。芽衣。ほら、血が出てない」

「ふえ?」



 そう。普通ならこんなことされたら出血多量の大惨事だろうけど、私は普通ではないのだ。


 左手を強引にくっつけてから、くっついた左手で残りの三肢も繋ぎ合わせていく。

 そんな猟奇的な光景を見て目の前にいる佐々木小次郎は引いている。


「なんと面妖な。もしや貴様は妖の類か?」

「ちゃんとした人間ですよ!知らないですか?バラバラマジック」


 秘剣が飛んでくる前に私のスキル【手品魔法(マジック・マジック)】を発動させておいたのだ。

 おかげで命は助かったけど…


 本気で殺されるところだった。

 そのことが単純に怖い。昔の人はこんなにも血の気が多かったのだろうか?だとしたら争いの少ない時代に生まれた私たちは幸福だ。


「あのー…殺しあうのはやめたいんですけど!」

「真剣の中でこそ見つかる発見がある。俺は甘ったれた戦いをするためにこの数年貴様を探していたわけではない。悪いが付き合ってもらうぞ」


 小次郎さんが再び剣を構える。

 話が通じないよ!ナンテコッタ!


 はぁ。私の愛武器であるモーニングスターを構えながらさっき受けた秘剣・燕返しを思い返す。


 まず小次郎さんが上段に構えてから剣を振り落とした。私とは結構な距離があったのにだ。

 その理由はすぐにわかることになる。信じられないけど斬撃が飛んできたのだ。

 勿論真っ二つにされると思って慌てて右に跳んだよ。でもその攻撃を完全には避け切れなくて左手と左足を切られてしまった。

 そこまではわかるけど、どうして右手と右足も切られていたんだろう?


 うーん…正直速すぎて全く見えなかったからわからない!




 だから遅くなってもらおう。


「【重力魔法(グラヴィティマジック)】」

「む…」

「小次郎さんだけ重力10倍だよ。これでちょっとはマシな戦いになるかな?」

「確かに動きづらい」


 そう言いつつも太刀をビュンビュン振り回しているんですけど!

 再び戦闘に入る。


 小次郎さんの刀は長いので一方的に攻撃される。


 身体能力は私のほうが上だ。

 たぶんだけど、ステータスが視えないのはそもそもステータスの概念がないからなのでは?かつての地球みたいに。


 その証拠…とは言えないけど、小次郎さんは魔法を一切使わない。

 もしかしたら、この圧倒的なスピードも日本で生きていた時のものなのかもしれない。レベルという概念での成長ではなく、ただ己を鍛えぬいて得た力。


 まぁそこは置いておいて、なんで身体能力で上回っている私が防戦一方なのかというと…戦闘経験の差。これに尽きると思う。


 この人の剣は速さとかではなく、とにかく上手いのだ。

 見えているのに避けられない、身体が動いてくれない。そんな絶妙なタイミングで攻撃を仕掛けてくる。


 私の息継ぎの瞬間、瞬きの刹那に最高の一撃を繰り出してくる。

 その一刀一刀が命を取るに足る威力を持っている。夕陽がこの日のために【武器生成】で作ってくれた最高傑作(モーニングスター)じゃなきゃとっくに壊れているよ。


 カカカカカッと絶え間なく武器と武器がぶつかり合う。


 「存外…やる」

 「ありがとうございます!」


 戦闘が進むたびに死の恐怖が加速する…と同時に興奮(・・)もする。


 やっぱり私っておかしいのかな?普通のJKだったら怖くて戦いどころじゃないはずなのに、少しずつ命のやり取りを楽しみ始めている自分がいる。


 今私が棒立ちになった瞬間、思考を途切れさせた一瞬で首が飛ぶんだろうなー。物理的に。

 そう考えるとアドレナリンが止まらない!もっと速く身体動け!もっと思考を加速させろ!と全身が訴えている。


 絶対かわいい美少女はこんな思考にはならないはずだけど、そのおかげで命を繋いでいることも事実。変な性格でよかったぜ!


 さてさて、躱すばかりだと勝負は着かない。ここらで攻めていかないと!

 どのタイミングで攻めるか…は決まっている。相手の攻撃が来ることが確実にわかっているタイミングだ。つまり私の息継ぎの一瞬。


 まだ息は持つ…まだ…まだ…まだ…




 もう限界!はぁっ!


 息継ぎのタイミングで予想通りのキタ!

 ガキンッ!


「!!」


 腕力で優っているため小次郎さんを仰け反らせることに成功する。

 追撃を加えようとしたけど、バックステップで距離を取られる。くそー。


 小次郎さんが剣を構え直しながら声をかけてきた。


「貴様…いや、朝日だったか。朝日、君は疑う余地もなく天才だ。恐らくどの流派にも属していないのだろう。型が無い。そのおかげかはわからないが私の剣を確実に覚え始めている。二度同じ技は通用しないほどにはな。やりづらいことこの上ない。……成程。神が君を名指しで指定するだけのことはある。 だが…俺の秘剣を二度見ただけで理解できるかは別だ」


 小次郎さんが腰を下ろし、剣を上段に構え、切先をこちらに向ける独特の構えを取る。秘剣の構えだ。


「そこは秘剣の距離。もう一度味わわせてやろう。秘剣・燕返し」


 やっぱりこの時だけは…剣の振り下ろしすら見えない!

 でもあの構えを取った時から私の回避行動は始まっていた。

 一応【手品魔法】発動!

 そんで足をチーターに変身させて最速で逃げ切れるように準備した。そして攻撃が始まった瞬間に左に全力で逃げる!


 いくら見えなかろうとも速さは私のほうが上!全力で逃げることだけ考えれば避けられるはず!




 そう考えていた時期が私にもありました。

 どうやらこの飛ぶ斬撃だけは私の速さを遥かに上回っているらしい。




 気付いたら右手右足が無くなっていた。


「ぅあ!!」

「ふむ」


 保険でバラバラマジックを発動しておいてよかった…

 急いで右手と右足をくっつける。でも超マズい。このスキルかなり便利だけど、消費するMPが半端ない! 重力魔法も常に併用しているから次は発動…できない。


 もう一度秘剣を撃たれたら今度こそバラバラになる。そして出血多量で死んじゃう。


 思考をフル回転させる。

 振り下ろしは見えなかったけど、斬撃の軌道は見えた!

 斬撃は3種類。真っ二つにしようと迫ってくる縦の斬撃と、獲物を逃がしてたまるかと言わんばかりに左右から円の軌道を描いて向かってくる二つの斬撃。これがほぼ同時に襲ってくる。後ろに逃げても斬撃のほうが速いからダメ。左右に逃げられないのはさっき証明された。


 あれ…詰んでない?

 

 自然と息が荒くなってくる。


「息が上がっているな。その不可思議な回復方法もいつまでも出来ないとみた」

「正解なんでもうやめましょう!私の負けです!」

「笑止。1度目は為す術もなくまともにくらったが…2度目は被害を半分に抑えた。3度目は?もしや攻略されるかもしれん。そんな状況で止めずにいられるわけもなし」


 もうやだこの戦闘狂!脳筋!!ファンキーモンキーベイビーズ!!!


「安心しろ…次で最後だ。この一刀に全てを賭す」


 再び秘剣の構えを取る小次郎さん。くそお。その最後でもう死んじゃうの!


 ああ死にたくない。まだ夕陽とイチャイチャしたいしユアの成長を見届けたいしせっかく家を借りたのに堪能できてないしまだ行ってない街もあるのに!


「もう!覚悟決めろ私!」

「秘剣・燕返し」


 斬撃が来る。

 全部だめならいっそ飛び込む!活路はここしかない!

【時間超越】発動!限界まで時間の流れを遅くさせる!


 それでもなお高速で迫る真ん中と左の斬撃の間に身体を滑らせる。


「うひゃあああ!!」

「!!」


 どこも切れてない!

 セーフ!朝日選手セーーーフ!!


「どおおりゃあああ!」

「ガハッ!!」


 その勢いのまま小次郎さんの懐に突っ込んでモーニングスターを叩き付ける!

 ステータスでは圧倒しているため大ダメージを受けて地面に倒れる小次郎さん。


 勝った!?私勝てたの!?


「見事…逃げる小鳥は捉えられても迫る乙女は捉えきれず…か」

「はぁ…はぁ…はぁ…生きてるって素晴らしい!」


 暴力反対!


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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚
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