歯ごたえがなくてつまんねーです!
副団長さんの訪問から約2週間が経った。
いよいよ明日は魔王さんのところに出発だ。
「それでは今日の授業は終わりとする。また明日…と言いたいところだが、明日から私は魔王討伐の遠征に向かうため、代わりの先生がしばらく授業することになると思う。帰ってきたら小テストをするからしっかり授業を聞くように」
「先生も行くのですわね!頑張ってくださいまし!」
「白百合騎士団の10番隊までの全員で出撃するんだよね!かっこいい!」
「それだけ魔王が強いってことだよアス。私なら絶対行きたくないよ…」
「ああ。それと言ってなかったが、ユアとメアも今回の遠征に参加することになっている。2人もしばらく休みになるが、心配しなくても大丈夫だからな」
「ええ!?ユアとメアも参加するの!?」
「危なくないんですか?」
「参加するといっても一番後方にいてもらうつもりだ。危険なことは私がさせない」
「私たちも参加したいです!」
「やめてよアス。危ないよ」
「リブの言うとおりだ。本来ならユアとメアも連れて行きたくなかったんだが…道中も魔物がいる危険な遠征だからな。もう少し大きくなってからだ」
「すやすや…平和が一番」
「そうですの…ユア!メア!無事に帰ってきてくださいまし!」
「君たちに何かあったら僕たち悲しむからね」
「うん!ケガしないように頑張る!」
「ユアはちゃんと守る」
「がんばってね!」
みんなから応援してもらえて嬉しい!頑張らないと!
それから家に帰って、いつものように今日あったことをママにお話しして、家族みんなでご飯を食べてお風呂に入って寝た。
私は明日のことを考えたら緊張してあんまり眠れなかったけど、ママたちは普段と変わらない様子だったなー。さすがママたち!
朝起きて夕陽ママと運動をして、いよいよ出発!
南の門に行くと白百合騎士団の人たちがずらっと整列していた。
白と黒の鎧を着て、かっこいい!
鎧じゃなくてロングコートの人は偉い人なのかな?副団長さんとユイカ先生がそうだし。
副団長さんがこちらに気づいたみたいで駆け寄ってくる。
「皆さんよく来てくださいました。今日はよろしくお願いしますね」
「よろしく!」
「とは言っても、皆さんには後方を担当していただきます。出来れば私たち騎士団でシロを救出したいので…ですが何かあったらよろしくお願いします」
「おっけー!」
「ではこれで」
副団長さんが騎士団の戦闘に戻ってみんなにお話ししている。
それを聞いた騎士団さんたちが「おお!」って声を出している。
「私たち後方だってー」
「そのほうが都合いいわね」
「あんまり目立ちたくなかったからね」
「のんびり行こう」
「うおーー!緊張してきたーー!」
「がんばろうね!フェルにい!」
私も緊張してきた!
でもメアちゃんが手を繋いでくれているおかげか怖くはない。
副団長さんの号令でついに動き出した。
騎士団の行軍は1番隊から順に続くみたいで、私たちは最後尾の9番隊と10番隊の人たちの間を歩いている。
一番後ろだと奇襲があったときに危ないからとユイカ先生が進言してくれたみたいでこの位置になった。
だから位置的に私たちの後ろには10番隊の隊長さんがいるのだけれど、ママたちがその隊長さんを見て驚いている。
あんなに驚いている夕陽ママを見るのは初めてかもしれない。
「サシャじゃん!なんでこんなところに!?」
「ん?誰かと思えば朝日に夕陽、芽衣に葵もいるじゃねーですか!奇遇ですね!」
「ルコアさんが突然居なくなったって悲しんでたわよ。出るときはちゃんと挨拶してから出なさいよ」
「あのドエス魔王にそんなこと言ったら監禁されてしまうです!こっそり脱出するに決まっているです!」
ルコアさんのとこにいたんだ。この人。
「そっちの子供2人と獣人の2人は見ねー顔ですね」
「俺はフェルってんだ!」
「リルはリルです」
「ユアだよ」
「メア」
「私の名前はサシャ!最強の魔法使いです!魔王を倒すのは私ですから、覚えておくといいです!」
「サシャはね、ルコアさんを倒すために勇者パーティーに入ってたんだけど、ボコボコにされた子だよ」
「僅差でした!ボコボコじゃねーです!」
「それで、どうして騎士団に入ってるのよ。しかも隊長?」
「よく聞いたです!私はあのドエス魔王を倒すためにダンジョンで修行していたのですが、そこでこの騎士団たちと鉢合わせたのです!それで私の強さに感動して是非騎士団に入団してくれとスカウトされたので仕方なく入ることにしたのです!それで隊長は一番強いのがなるらしくて無理やり隊長をやらされているです」
「そうなんだ。元気そうで良かったよ。ルコアさんに伝えておくね」
「やめろです!」
仲良さそう。いいなぁ。
私よりちょっとお姉さんくらいだし、私も仲良くしたいな。
私の熱い視線に気づいてくれたのかサシャさんが話しかけてくれる。
「なんです?私の顔に何かついてるです?」
「あの!サシャお姉ちゃんって呼んでもいいですか?」
「お姉ちゃん!?私がお姉ちゃんです!?」
「はい。ダメですか?」
「だ、だめなわけないです!むしろ嬉しいです!えっと…ユアでしたか?うへへ…お姉ちゃん」
「じゃあ私もサシャお姉ちゃんって呼ぶ」
「ぐへへ…どんとこいです」
「俺たちは歳同じくらいだよな?サシャって呼ぶぜ!」
「サシャよろしくね」
「一気に知り合いが増えました!これはテンションアップです!」
サシャさんが手を上げて喜んでいる。
それを見て後ろの騎士団の人たちがざわざわしている。
「サシャ隊長今日もかわいいんじゃ~~」
「(*´Д`)ハァハァ。サシャ隊長ラブ」
「サシャ隊長を膝枕したいわ」
「わかる」
「甘やかしたいわよね」
「お姉ちゃんって呼ばれてあんなに喜ぶなんて…ナイス子供たちb」
みんなサシャさんのこと好きって気持ちが伝わってくる。
面白い人たちだね!
それからはしばらく歩いたけど、特に何事もなく時間が過ぎていく。
何度か授業で倒したことのある魔物が襲ってきたけど、近づいてくる前に誰かが弓か魔法で倒しちゃうから本当にやることがなかった。
でもお外をこんなに大勢で散歩することないから楽しい!ピクニックみたい!
お昼はあまり美味しくなかったけど。
騎士団の人からパンとスープを貰ったけど、硬いし味があんまりしなかった。
葵さんなら美味しい料理をいっぱい持っていると思ったけど、ママに全員分の食事は用意できないから我慢してねって言われた。
私たちだけが美味しいもの食べていたら騎士団の人がかわいそうだし、ガマンガマン!
でも夜はこっそりテントの中で美味しいもの食べた。サシャさんには内緒だけど。
夜のテント内でママたちが話し合っている。
「だいたい50~100レベルね」
「ん。結構強い」
「ざっと1000人くらいかな~」
「でも100を超えているのは副団長のクロって人とサシャだけ」
「サシャが厄介だねー。また強くなってるし。性格は変わってないみたいだけど」
「なんでも他の騎士団と合流したのも今日が初めてらしいよ。ずっとダンジョンに籠ってたみたい」
「だからか!10番隊だけレベルも練度も飛び抜けてるよね」
「副団長が指揮している1番隊と2番隊、サシャの10番隊をなんとかすれば魔王が倒されることはなさそうね」
「だね~」
「ん」
「私たちはどうすればいいの?ママ」
「ユアとメアは、私たちから絶対にはぐれないこと!もし戦闘になったら、芽衣のそばを離れないで」
「ユアちゃんとメアは何があっても守るからね~」
「俺たちは!?」
「んー。フェル君とリルちゃんも出来れば芽衣のそばを離れないでほしいけど…」
「それじゃあここまでついてきた意味がないぜ!」
「そうだよ!リルたちも頑張るよ!」
「ですよね~。まぁ隊長くらいのステータスは2人ともあるし、一緒に戦おうか」
「そうこなくっちゃな!」
「やった!」
私もやれることがあればやるけど、クラスのみんなにケガしないで帰るねって約束したから、あんまり危ないことはやらないでおこう。メアちゃんも心配そうに私をずっと見ているし。
「大丈夫だよメアちゃん。ママたちの言うとおりにするから」
「…ん。約束だよ」
「うん!」
そんなこんなで順調に旅は進み、ついに魔王城が見えてきた。
「あれじゃない?」
「おお!あれ日本の城じゃない!?」
「ぽいわね。芽衣か葵は何城か知ってる?」
「知ってるよ~。あれは姫路城!」
「別名白鷲城。世界遺産にも登録されてた」
「へー。きれいなお城だね」
「白いから白鷲城なのかしら?」
ママたちはあの白いお城の名前を知ってるみたい。
物知りだなー。
白くて、三角のお屋根がいっぱいついている。
どうやって建てたんだろう?とっても難しそう!
「やっと着いたですか。遠かったです」
「ん?誰か出てきたね」
「魔王かしら」
「シロっっ!!!」
副団長さんが駆け寄っていく。
シロって団長さんのことだよね?生きてたんだ!良かったー。
でもシロって人は悲しい顔をしている。
そして団長さんが副団長さんに信じられないことを言う。
「クロ…ごめん…帰って…」




