JK、家を買う
久々の朝日視点。
朝日視点
今日も朝から夕陽とユアが木刀で打ち合っている。
この木刀は特別製で夕陽が【武器生成】で創った剣に芽衣の付与魔法で固定ダメージ1を付けた特別製なのだ。ポ〇モン弱らせるのに使えそう。
芽衣の付与魔法のおかげでどんなに打ち合ってもダメージはほぼないどころか、ユアに取ってもらったHP自動回復LV5のおかげでダメージは相殺されている。
まだまだ動きはぎこちないけれど、レベル100を超えている夕陽相手に立ち向かっていることが大きな経験としてカウントされているのか急速にレベルが上がり、ユアは毎日凄まじいスピードで強くなっている。
別に戦闘狂にするつもりはないのだけれど、この世界は何があるかわからないから強くなっておくことに越したことはないのだ。
私と宗近さんと網じいはその練習を見ながらお茶を飲むのが日課なのだ。
宿の裏庭を借りてやるその朝の光景は物珍しさからか日に日に観客が増えている。
「お嬢は剣の才があるのう。それもとびっきりの」
「5歳であそこまで戦える人を俺は初めて見たよ」
「まあこの世界にはレベルがあるからね。日本人とは違うでしょ」
「それはそうだがのう。それでも凄まじいことには変わらんよ」
「自慢の娘だからね。この前Aクラスに上がったみたいだし」
「優秀だね」
「だのう」
そう。うちのユアは天才っ子なのだ。
たまにおお!っと思う太刀筋を見せる。そのたびにビクッと焦るけど親の余裕を見せようとする夕陽かわいい。
「そろそろお嬢にも剣を与えてもよいのではないか?」
「剣って夕陽が女神様から貰った10本の剣のうちの一本をってこと?」
「左様」
「早くない?」
「確かに早いけど、剣との相性もある。小さいうちから意思疎通を図ることは間違ってはいないと思うよ。別に今すぐ使えってことじゃなくてね」
なるほど。夕陽の貰った剣はいずれも魂が宿っているみたいだから、小さいうちからコミュニケーションを取るのはアリかもしれない。
「渡すとしたらどの剣がいいんだろ?」
「やはり短刀かのう」
「だよねー。ちょっと葵から受け取ってくる」
剣…というか私たちの所持品はすべて葵が持っているからね。
「ふわぁ…なに?」
「夕陽が貰った剣出してもらっていい?」
「…ん」
「ありがとね。起こしちゃってごめんよー」
床に並べられた剣を眺める。
うーん。これがいいかな?小さくて手ごろっぽい。
短刀を持って裏庭に戻る。
持ってきた剣を宗近さんと網じいに見せる。
「これがいいかなって」
「…ふむ。正宗か。いいんじゃないかの」
「どんな剣?」
「日本刀の代名詞のような剣だね。この作品に影響を受けた剣は多いよ」
「ふーん。夕陽―!ユアー!ちょっと来てー!」
2人がこちらにやってくる。
「どうしたの朝日」
「なになに?ママ」
「ユアもAクラスになったことだし、剣を持ってもいいんじゃないかって」
「早すぎるわ」
「これで戦えってわけじゃないよ。ほら。どんな魂が宿っているかわからないから今のうちにコミュニケーションをね?網じいみたいなのかもしれないしさ」
「ひどい言われようじゃ…」
「…そういうことなら」
「ってわけで、はいこれ。正宗。抜いてみてよ」
「うん!わかった!」
ユアが勢いよく剣を引き抜く。
するとまばゆい光が立ち込め、それが収まると…生意気そうな男の子が立っていた。
「やっと俺を使ってくれる人間が現れたか。ん?あんたか?女かよ…まぁいいけど」
「私じゃないわよ。あなたを使うのはあの子」
夕陽が指差した先にいるユアを見て少年が笑う。
「あはは。何言ってんの?こんなちっこいのが俺を使えるわけないじゃん」
「ちっこいのじゃなくてユアだよ!」
「聞いてねえよ!…え?冗談だよね?」
うーん。やっぱ5歳の女の子が剣を持つのは常識的じゃないよねー。
夕陽が少年に向かって声をかける。
「ありえない?」
「うん」
「そう。じゃあ今から私たちで練習するから、それを見て判断して頂戴」
「いいけど…」
「行くわよユア」
「うん!」
さっきまで打ち合っていたところに2人が戻り、再び朝の訓練を再開する。
それを見た少年がギョッとした目で2人を注視する。
ちょっと嬉しかったから私も声をかけてみる。
「どうどう?その気になった?」
「…すごいなあの子。うん。気に入った」
「おお!じゃあ!?」
「ああ。俺の所有者として認めてやるよ」
「やったね!」
それからしばらくして汗をかいた二人が戻ってくる。
「はあ!楽しかったー!」
「おい」
「ん?」
「見た目で判断して悪かった。今日からよろしく頼む。ユア」
「ほんと!?よろしくね!マサくん!」
「マサくん!?」
「うん。まさむねってママが言ってたからマサくん!」
「はぁ。まあいいけど。戦いになったら俺を抜いてくれ。助けるからよ」
「うん!」
「じゃあな」
正宗もといマサくんが刀に戻る。
それを大事そうに抱えるユア。
「ユア。わかっていると思うけど、剣は危ないものだからね。簡単に抜いたりしちゃだめだよ」
「そうね…誰かを守る時だけ抜きなさい。それ以外はなるべく使わないように」
「わかった!」
手を挙げて答えてくれるユア。
うんうん。私たちの娘は道を間違えたりしないよ夕陽。だからそんなに心配そうな顔はしないでほしい。
さてさて、ユアたちはそのあとご飯を食べて元気に学校に行った。
いきなり一番優秀なAクラスに入るとは我が子ながら恐ろしい才能…
この後私たちが何をするのかというと…家を探しに行きます!
長期滞在になりそうだし、ここらでいい家を探そうと思う。
そんなわけでとりあえず6人で外を出る(私、夕陽、芽衣、葵、フェル君、リルちゃん)。
「不動産なんてないよねー」
「誰かに聞いてみましょうか」
屋台で適当に食べ物を買っておじさんに家を売っている人はいないか聞いてみる。
「いるぜ。アトゥムって商人がこの街の賃貸家を管理してるんだ。白百合学園わかるか?だったら話は早い。ここから学校に向かう途中にアトゥムの店の看板があるからすぐわかるはずだ」
「ありがと。おじさん」
「いいってことよ。今日の目標だった売上分全部買ってくれたからな。大助かりだ」
買った分の大半は葵のアイテムボックスに入れて、残りは6人で食べる。
そのまま食べ歩きしながら看板を探す。
「それにしても学校に向かう途中にあるなんてね。全然気づかなかったよ」
「興味ないと見てても認識できないことってあるよね~」
「姉ちゃんたちいつもあんなに買うのか?買いすぎじゃね?」
「そうだよ!豪快すぎるよ!」
「備蓄?なんかあったとき用に」
「でも使ったことないわよね」
「いったい何年分の食費がアイテムボックスの中に入っているのやら…」
お金といくらでも入るアイテムボックスがあるとついつい要らないものまで買っちゃうんだよねー。
そうこう話しているうちに「貸家のアトゥム」と書かれている看板を見つける。
「お、あった」
「お店は…やってるね。入ろっか」
「うん」
中に入ると、壁一面に家とその値段の情報がびっしり書かれていて、奥におじいさんが座っていた。
「いらっしゃい。家をお探しですか?」
「はい。8人が暮らせるくらいの大きめの家を探してます」
「ふむ…何か希望はありますか?」
「そうですねー。お風呂があるのと、庭も欲しいですね」
「ふむ…少々値段が張りますがご予算はおいくらで?」
「とりあえず値段は気にしないで全部見てみたいです!」
「わかりました。希望に叶う物件が3件あります。順に見ていきましょうか」
7人で家に向かう。
お風呂がある家となると基本どれも大きいようで、紹介された物件はどれも8人どころか10人でも20人でも楽に暮らせそうな大きさだった。
その中でも満場一致で決まった物件が。学校まで徒歩10分くらいで、家と呼ぶよりもお屋敷と呼んだほうがしっくりくる大きい家だ。
何がいいかって、大浴場だあるのだ!
それも8人で入っても平気なくらいの大きさの。
「すげえ!こんなでかい風呂見たことねえぜ!」
「みんなで入れるね!」
「これはいいわね」
「最高じゃない!?学校からも近いしさ!」
「お部屋もたくさんあったから選び放題だよ~」
「でもお高いんでしょう?」
「お家賃はこちらになります」
「どれどれ?」
みんなでおじいさんの手元にある紙をのぞき込む。
月に光金貨1枚。つまり私の感覚で換算すると100万円だ。
「光金貨…ごくり」
「お姉ちゃん…私光金貨なんて見たこともないよぉ」
「だな。あきらめようぜ」
フェル君とリルちゃんは残念だけどしょうがないって顔をしている。
そんな悲しい顔をしないでよ。お姉ちゃんたちお金はなぜかめちゃくちゃ持ってるんだよ!
「みんなここでいい?」
「いいんじゃないかしら」
「そうだね~」
「うん」
「え?でも…」
「はい。とりあえず3か月分」
「「「!!」」」
葵がどこからともかく光金貨を3枚取り出す。
フェル君とリルちゃんが驚いている。
おじいさんもまさかここが選ばれるとは思ってなかったみたいで目を見開いている。
「ふむ…本物ですな。確かに。家賃は月末に受け取りに参りますので…また3か月後に」
「わかりました」
「それではこちらにサインをください。それで契約は完了です…はい。確かに。今からこの家はあなたたちのものです。」
獣人兄妹はまだフリーズしているけど…
これで家ゲットだぜ!




