サインはカッコよく崩すのがキーポイントだから!可愛い簡単な絵も描けたら完璧!
魔王城に来て2週間。
ミユちゃんにそろそろ帰ることを伝える。
「え?もう帰るの?」
「うん。もうミユちゃんがお家に居てもつまらないってことはないでしょ?魔物も減らすことが出来たし、そろそろ戻ろうかなって」
ここに来た本来の目的は達成したのだ。
居心地が良かったので思ったよりも長期滞在になってしまったけれど。
「寂しくなるわねぇ」
「もうちょっといてもいいのよ?」
「すまんのう。宿をいつまでもほっとくわけにもいかんのでな。そろそろ戻らんと」
私たちは特に予定があるわけではないのだけれど、スイナさんを宿まで送っていかなければいけない。
もう1か月近く宿から離れているから、そろそろ宿がどうなっているのかスイナさんが気になってそわそわしているのだ!
「うう…もっといて欲しいの…」
「ミユ。わがままを言ってはダメよぉ」
「ちょっとお別れするだけよ。また勇者の温泉に遊びに行けばいいじゃない」
「いいの!?」
出来ればミユちゃんには魔物の制御をしてもらいたいのでこの魔王城から離れて欲しくはないけど、たまに遊びに出かけるくらいなら大丈夫だと思う。
「1か月に1回とか、きちんと決めればいいんじゃないかな?」
「ん!じゃあそうするの!」
うん。ミユちゃんにはいつも元気でいて欲しいからね。
「これ、ワカサギ料理。芽衣の保持の魔法で腐ることは無いから」
「あら。ありがとう。嬉しいわぁ」
「こんなに貰ってもいいの?ちょっとおすそ分けする?」
「まだあるから大丈夫」
大漁に釣ったワカサギも渡したし、やり残したことはもうないよね?
「それじゃあ行くね。また遊びに来ますので」
「またの。ミユよ。宿で待っておるぞ」
「うん!待っててなの!」
「せっかくだから私の転移の魔眼で送ってあげるわぁ」
「ありがとうございます!」
私たち4人とスイナさんはエレーアさんの前に移動する。
「じゃあ、いくわよぉ」
エレーアさんの目が青くなると同時に、景色が移り変わる。
ここは…スクーナの街の北門近くかな?
「私以外の転移初めて」
「葵の転移とあまり違いはないかな?」
「近くにいなくても転移できるのはいいわね」
「さて、立ち話もなんじゃし、街に向かおうぞ」
門まで歩いて行ける距離なのでお話ししながら北門に向かう。
門番の人が見えてくる。
あちらも私たちを見つけたようで、二度見した後大慌てで街に入っていく。
なんだろう?
スイナさんが戻ってきたことを知らせるためかな?
1か月ぶりだからね。
街に近づくにつれ、門からどんどん人が出てくるのが見える。
住人全員がまるで勇者の帰還を心待ちにしていたような雰囲気だ。
あ、スイナさん勇者。
「スイナちゃんが帰ってきたぞぉ!」「今夜はお祭りじゃあ!」「またスイナちゃんの旅館に泊まりに行くか」「君たちのおかげで魔物が減ったよ!ありがとう!」「これで安心して暮らせます!ありがとう!」
おおう。物凄く好意的に迎え入れられている。
「皆の衆!魔物は数を減らしたのじゃ!これでしばらくは平和になることじゃろう!」
「「「「うおおおおお!!!」」」」」
「凄い熱気だね」
「スイナさん大人気ね」
「男の人がたくさんいるよ~。怖い…」
「…(後ろに移動)」
スイナさんの後ろからこそこそついていく。
私たちスイナさんみたいに知り合いがいるわけでもないし、黙って付いて行けばいいよね?
しかし私たちの情報もあったようで、全方向から声を掛けられる。
「ありがとう!スイナさんを無事に連れて来てくれて!」
「以前スイナさんの旅館に泊まっていた子たちだろ?見かけによらず強いんだな」
「旅館に泊まっていた時からファンでした!握手してください!」
「サインください!」
おお!私たちに声を掛けてくれる人もかなりいる。
はいはい。握手とサインね。ぎゅっぎゅ。さらさら~。
「朝日ちゃん手慣れているね~」
「芸能人みたい」
「朝日は昔無駄にサインの練習してたからね。役に立ってよかったわね」
「人生に無駄なことなんてないのだよ。夕陽くん」
「はいはい」
宿に着くまでずっとこんな調子で、普通に歩くより10倍くらい時間が掛かった。
人混みをかき分け、やっとの思いでスイナさんの宿に着く。
ロビーに入ると、獣人の女の子が泣きながら駆け寄ってきた。
宿を任されていた一人、アイちゃんだ。
「スイナ様~!!お待ちしておりました~!」
「アイ!宿は大丈夫じゃったか?」
「はい!頑張りました!」
「そうか!ようやってくれた」
「勿体ないお言葉です!」
どうやら宿は大きな問題もなく経営できていたようだ。
ひとしきりスイナさんの胸に顔をうずめた後、アイちゃんがこちらに気づく。
猫耳がピコピコ動いていてかわいい。
「み、皆さんもお久しぶりです!ご無事で何よりです!」
「アイちゃん久しぶり」
「アイちゃんを見ると異世界に来たって実感が湧くわね」
「アイちゃ~ん」
「猫耳触りたい」
本物の猫耳っ子を見れるなんて、異世界さまさまだよね。
「ここまで送ってくれてありがとうのう。それで、お主らはこれからどうするのじゃ?」
「またしばらくここに泊まろうかと」
「そうか!あたしとしては嬉しいのう」
「ゆっくりしていってくださいね!」
夕陽と芽衣はお腹の中に赤ちゃんがいるから、しばらく温泉を満喫しつつ、安静に過ごすのがいいと思うのだ。
妊娠中はあまり激しい運動をしないほうがいいと聞いたことがあるから、出産するまでは温泉旅館でのんびりしようと話し合いで決めていた。
「夕陽と芽衣が赤ちゃんを産むまでは泊まるつもりです」
「ほう!そうじゃったか!出産の際はあたしが立ち会おう。何度も経験があるからな。役に立つじゃろう」
「え!?スイナさんお子さん居たんですか!」
「違うわい!他の人の子じゃ!長生きしているとそういう場面に出くわすこともあるのじゃ」
ビックリしたぁ。
アイちゃんもホッとしている。
ん?獣人と人間が結婚したらどうなるんだろう?
「例えばですけど、アイちゃんとスイナさんが結婚して赤ちゃんが出来たら、その子は人間になるんですか?それとも獣人?」
「ひゃい!?」
「ふむ。その場合はハーフになるのう。どちらか血が濃いほうに外見はよる。あと、ハーフはこの世界では祝福されておるぞ」
「祝福ですか?」
「うむ。基本獣人は魔法が苦手で人間は基礎体力が少ないのじゃが、ハーフは両方のいいとこ取りのステータスになるらしいのう」
「へえー。意外ですね」
「そうかの?」
私が見たことある漫画とかだとハーフの人はあまりいいイメージじゃないものがほとんどな気がする。
「その話が本当ならハーフがもっと増えそうなものだけれど」
「理由の一つとして、子を為すことが大層難しいらしいのう。どれだけ頑張っても中々子を授かれないのじゃとか」
やっぱり種族が違うと妊娠するのは難しいのかな?
「それに、もしハーフの子が生まれたのならば王都で暮らさなければならなくなるしの」
「なぜですか?」
「強すぎるからじゃな。よっぽどの人格者ならともかく、大抵の場合は何らかの問題が起こるらしい。じゃから、中央で徹底的に管理されるらしいのう」
なるほど。周りよりも高ステータスだから、悪さしちゃう人もいると。
それで王都で管理かー。あんまり気持ちのいい話じゃないね。
さて、今の話を聞いてアイちゃんが目に見えて落ち込んでいる。
スイナさんはこの街を離れるとは思えないから、もしアイちゃんとそういう関係になっても子作りはしないだろう。
アイちゃんには申し訳ないことをしてしまった。
どうフォローしようか考えていると、夕陽がとんでもないことを聞く。
「もしスイナさんにハーフの子が出来たら、おとなしく王都に移住するんですの?」
ちょおい!
答えによってはアイちゃんが立ち直れなくなるからそんな危ない質問はヤメテ!
「ふむ…この街は離れられん。じゃから隠す!」
「か、隠すですか?」
アイちゃんが堪らず質問する。
「そうじゃ。要は問題を起こさなければいいのじゃ。あたしがきちんと教育して立派な子にして見せる。じゃから王都に行く必要はない!」
「「「「「おお!」」」」」
スイナさんかっこいい!
アイちゃんも今の言葉で元気を取り戻した。
「しかしなんでそんなことを聞くんじゃ」
「人生何があるかわからないじゃないですか!」
「??そうじゃの」
ミユちゃんもスイナさんのこと好きだし、どうなることやら。
それからとりあえず1か月分の宿代を支払って、部屋に戻る。
やっと静かになったよ。
「この部屋に入るのもずいぶん久しぶりね」
「そうだね。でも今度はしばらくここにいるよ。夕陽には安静に過ごしてもらわないと」
「…そうね。大切な子がいるから、万が一のことがあったらいけないものね」
「うん。元気な子が生まれるといいなぁ」
「ふふ。気が早いわね」
「そんなことないよ!今から名前も決めておかないと!」
一生涯ついてまわる名前だ。
その子が自分の名前を気に入ってくれるような素敵なものを考えなければ!
一時期キラキラネームをよく聞いたけど、個人的にあれは好きじゃない。あまり変な名前は付けたくないなー。
「円自江流とか」
「絶対にやめて」
うん。やめよう。
まだまだ時間はあるからじっくり考えなければ!




