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JK4人の異世界暮らし!  作者: 綿あめ真
北の魔眼の王と温泉勇者
52/100

死線と秘剣

遅れてしまい申し訳ないです。

今回は16歳くらいの和風美少女2人が会話をしていることを念頭に置いて読むことを推奨いたします。

 俺たちは白い部屋からいつの間にか山の中へ移動していた。

 どうやらここは既に異世界のようだ。


 全く知らない土地でいきなり野宿だなこれは。何も道具が無いが…


 しかも問題はそれだけじゃない。隣にいる少女が本当に佐々木小次郎なら…ちょっとばかし具合がわりい。


「さて、どうすっか…っておい。どこ行く?」

「決まっているだろう。これからは別行動だ」

「はあ?とりあえず落ち着…」

「勘違いするなよ」


 剣をこちらに向けられる。

 殺気はないが…憎悪を感じる。


「お前に切り掛かっていないのはお前の顔が俺の女房の顔と瓜二つだからだ。そうでなければ今頃はお前を100度切り殺している」


 …そうだったな。今の俺たちは死んだときの姿じゃあない。

 ロキの野郎が俺たちをお互いの理想の女性(・・・・・・・・・)に生まれ変わらせたらしい。


 ロキとは少ししか話さなかったが、それでもすぐにわかったことがある。

 あいつは根っからの性悪だ。間違いねえ。


 自分の体を今一度確認する。鍛え抜いた体はもはや見る影もない。てかおっぱいでけえな俺。

 もっとも筋力や脚力は全盛期のままのようだから支障は無いのだが…


 そうか。俺の顔はこいつの嫁の顔になっているのか。

 自分を殺した相手が嫁の顔をして目の前に居たら…心中穏やかじゃあねえな。


 それはわかる。だが…だ。


「それでもしばらく俺と一緒に居ろ」

「…俺の話を聞いていなかったのか?」

「俺のことが憎いって話だろ?その感情と、確実に生き残ること。どっちが大事だ?」

「……」

「この山には俺たちの知らない魔物なる存在がいるって話だ。そんでここには隠れる場所が山ほどある。奇襲し放題だ。何が起こるかわからねえなら少しでも生存確率を上げておくべきだ?違うか?」

「…理屈は理解した。それでも俺はお前と一緒には居たくない。理屈じゃないんだよ。この感情は。じゃあな」


 まあ、そうだろうな。

 さて、俺も俺のやりたいように動くか。


 佐々木小次郎の後ろを何食わぬ顔で歩く。


「……」

「……」

「おい」

「……」

「ついてくるな!」

「俺も偶然道が同じなだけだ。気にすんな」

「相も変わらず人の話を聞かない奴だ。武士の風上にも置けない」

「俺は武士じゃねえ。兵法家だ。生き残るために最善を尽くすことが俺の流儀だ。どんなに嫌がっても勝手についていくぜ」

「…勝手にしろ」


 さて、暗くなる前に何か食料を手に入れておきたいが…

 水もないし、とりあえず下山しねえとな。それはあいつも弁えているようで、さっきから下り道を選んでいる。


 ん?左側に生き物の気配が…


「おい」

「わかっている。行くぞ」


 気配がある方向に向かうと、一匹のイノシシがいた。

 見たことないくらいでかいが。


「ついてるな」

「イノシシ狩りは得意だから任せろ」

「いいだろう。しくじったら殴ってやる」


 昔、山に篭った時期があったからな。イノシシくらいお手の物だ。

 気配を消して一息に近づく。こちらに気づいて振り向いたところを眉間に一撃入れる。


「ぐもぉぉ…」

「へっ。楽勝だな」


 動きの確認も兼ねてゆっくり木刀を振ってみたが、しっかり体が反応してくれる。いい感じだ。


 さて、血抜きをするか…と思ったが俺の装備は木刀しかないんだった!

 しまったな。ロキの野郎に獲物を捌く用のナイフもいただいておくべきだったか。


「おい、血抜きしてくれ」

「…あまりこういうことに俺の刀を使いたくはないんだが…仕方ない」


 血抜きとついでに捌いてもらったが、コイツ手慣れてんな。経験あったか。

 木で火を起こし、焼いて食う。


「うん。日本のよりうまいな」

「そうだな」

「やっぱでかいからか?」

「そうだな」

「…おい、もっとちゃんと会話に参加しやがれ」

「黙って食べろ」


 コイツ俺と仲良くする気ねえな?…そりゃそうか。


 ふぅ。一頭丸々食って腹も膨れたし、暗くなる前に下山したいところだな。

 日の高さから考えて今はちょうど昼頃か。


「さて、行くか」

「…ああ」


 再び俺たちは歩きだす。

 俺たちの移動速度はかなり速い。

 いや速すぎる!あいつ俺のこと振り切る気満々じゃねえか!!


 まあその甲斐あってか、すぐに山を下りることが出来た。


「ッチ。まさかここまでついてこれるとはな」

「は!俺を舐めんじゃねえ」


 2,3回撒かれそうになったけどな!


「それで、このまままっすぐ進むのか?」

「そうだな。歩いていれば村か町にいずれ着くだろう」

「おう…ん?今度は魔物とやらのお出ましか」

「GAAAAAAOOOOO!!!」


 空からでかい生物がこちらに向かって降りてくる。

 なんだありゃ?空飛ぶトカゲか?それにしてもでけえな。この世界はなんでも大きいのか。

 

 眼前に降り立ったそれは異様な存在感と威圧を放っている。


 俺の軽く3倍はある身長。赤い翼に赤い目。硬そうな鱗。鋭利に尖った爪。どこをとっても危険な匂いがプンプンするぜ。


 そいつと目が合う。頭で警報が鳴る。こいつはやべえ。


「おい、滅茶苦茶強そうなのが来たぞ」

「これは…難敵だな」


 日本じゃここまで強そうな動物は居ねえ。こんなのが出たら普通はどうしようもねえだろうな。


「共闘すっぞ。流石に文句ねえな?」

「こんな状況まで意地を張るつもりはない。死ぬ程嫌だが背中を預けてやる」

「GAAAA!!!」


 怒声に体が痺れる。

 そのままこちらに突進してくるトカゲ。


 俺たちは左右に飛んで回避する。

 回避したはずだが…俺の真横から赤い線(・・・)が視える。

 これは…若い時一度だけ視えた死線。

 何十人かと切り合いをした時に絶えず全方向から視えた線だ。


 その赤い太線が横からまっすぐ俺の横腹に向かって伸びている。

 この線上にいるのはマズい!!


 とっさに屈む。

 すると数瞬後、何かが頭上を掠める。


 あぶねえ!あいつの尻尾か!

 突進した後尻尾を振り抜いたようだな。


 速さも中々。殺意も十分。歯ごたえのある相手じゃねえか。


 それから仕切り直して、また突進してきたが今度は余裕を持って躱す。小次郎もさっきの尻尾攻撃を見ていたからか何てことなく捌いている。


 こちらはまだ相手の強さを測りかねているので中々近づくことが出来ず、長期戦の様相を呈してきた。

 

 小次郎は回避が上手く、トカゲの攻撃を躱し続けている。

 まぁ、一撃でも貰おうものならよくて重傷、恐らく即死だけどな。


 俺も赤い線が視えるからその射線上を外れれば攻撃は当たらない。

 だが、こちらも決め手に欠けている。

 回避に慣れてきたから何度か懐に入り殴ってみたが、予想通り鱗が固くあまり効果が無い。

 俺の木刀はこの相手には攻撃力で劣っているようだ。全力でやれば別かもしれんが。

 トカゲも大した脅威には感じていないようで、防御らしい防御をしてこない。ムカつくぜ。


 だが、小次郎のあの長い剣には警戒しているようでしっかり避けようとしている節がある。

 悔しいがここは俺がおとり役を買って出て、トドメは小次郎に決めてもらうのがよさそうだな。


 とは言っても攻めることは忘れない。隙があれば懐に入って殴りつける。

 さっきより力を込めて。


「オラ!」

「ガアアア!」

「小次郎!」

「ハッ!」

「ギャ…!」


 小次郎の一撃で尻尾が切れる。

 おっし。これで厄介な攻撃手段が一つ減った!


 トカゲは怒りの表情でこちらを見ている。

 なんだ?ちょっと餌を食べに来たら思いのほか強くてイラついてるってか?


「まだ準備運動だぜ?もっと本気で来いよ」

「挑発をするな」

「グウ…」


 ん?何かを溜めている…?奴の気配が上がった。

 何かする気かもしれない。奴が口を開く。

 すると赤い円が視える。その円は小次郎に当たる軌道を描いている。


「小次郎!避けろ!」

「!!」


 トカゲが口から赤い火の玉を吐き出す!

 小次郎は火の玉が発射される直前に右へ回避していたので無傷だが、あんな飛び道具まで持ってやがるのか。


 小次郎が先ほどまでいた場所は燃え盛っている。結構な威力だなおい。


「あんなのポンポン吐き出されたら堪ったもんじゃないな」

「だが、使う前に気を漲るのが分かった。わかりやすいからくらうことは無いだろう」


 ま、確かにな。むしろあれは隙が多いから攻撃の好機だ。

 それからは簡単に俺たちに避けられたからか、攻めが激しいから撃つ機会が無いのかわからないが火の玉を吐き出すことはなくなった。


 そして数十度目の木刀による打撃。

 塵も積もれば山となるってやつか、ついにトカゲが悲鳴を上げ後退する。


「お?」

「油断するなよ」

「わあってるよ」


 トカゲはこちらを憎々しげに見た後、フッと笑ったような気がした。

 …いやな予感がする。


「GAAA!」


 トカゲが飛び上がる。

 なんだ?逃げんのか?


「逃がさない」


 小次郎が剣を上段に構える。既に飛び立ってしまい剣の間合いからは離れてしまっているが…


「秘剣【燕返し】」


 …振り下ろしが見えなかった。気づいた時には3つの斬撃が飛び(・・)、トカゲに迫っていた。


 対象を真っ二つにせんと迫る斬撃と、その左右から逃げ道を塞ぐように弧を描いて迫る2つの斬撃がトカゲに襲い掛かる。


「GA!?」


 上空へと向かっていたトカゲが異様に気づき、こちらに振り返った時、斬撃は奴の目前に迫っていた。回避は不可能。


 左右からの斬撃は両手両足を切り落とし、正面の斬撃は真っ二つとはいかなかったが致命傷を与えている。


「終わったな」

「すげえ業だなおい。今度教えてくれ」

「誰がお前なんぞに教えるものか」

「ま、あれ喰らって生きてるトカゲも相当な化物だが…」


 トカゲはあれだけの傷を負いながらもまだ飛んでいた。死ぬのは時間の問題だと思うんだけどな。すげえ生命力だ。


 トカゲはこの時まだ俺たちを殺すことを諦めてはいなかった。

 一瞬背筋が凍り、トカゲの方を凝視した瞬間。


 死の赤い線が降り注ぐ。


 それは例えるなら爆撃。逃げ場はなく、広範囲に死の赤い線が分布しているのがわかる。

 あいつが飛び立つ前に笑ったのはこれをするからだったか!!!


「走れ!!小次郎!!」

「は?」

「いいから!俺についてこい!!」


 時間が無え!

 死の赤い線が途切れる外側に向かって全力疾走する!


 不幸中の幸いだが、ここには木が多い。だから上空にいるあいつは俺たちを恐らく捕捉できていないはずだ。


 飛ぶ前に見ていた俺たちの位置を中心に広範囲の攻撃をするだろう。


 ヤバい。マジで死がすぐそこまで迫っているのがわかる。

 心臓の鼓動がうるせえ!

 小次郎は…ついて来ている。


「あいつは諦めていないのか?」

「喋ってる暇あったらもっと全力で走れ!あいつここら一帯燃やし尽くすつもりだ!」

「往生際の悪い」

「どんな奴でも死ぬ間際の一撃は恐ろしいぜ」


 走り始めてから数秒後、空から炎の範囲攻撃が始まった。

 周りの温度が一気に上がる。後ろを振り向いている余裕はない。


「うおおおおおお!間に合えええええええええ!!!!」

「…おい、前方に岩がある!」

「よし、飛び込むぞ!」


 岩陰に飛び込む。そのすぐ後に炎が岩の左右から絨毯のように走った。


 しばらく俺たち二人は無意識に抱き合っていたが、炎が次第に消えていき、命の危険は無くなったことを確認するとなぜか殴り飛ばされた。


「いてえな!」

「ふん」

「あいつは?」

「死んだだろうな」

「そうか。強かったな」

「ああ。久しぶりの難敵だった」


 間違いなく今まで戦ったどんな獣よりも強かった。

 あんなのがこの世界ではうじゃうじゃいるのかね?だとしたらとんでもないとこに転生させられたわけだが…


「とりあえず、先に進むか」

「ああ」


 まだまだ旅は始まったばかりだ。次はどんなのに出会うのかね。


この二人仲良くなるんだろうか…

ふと思ったんですが、ロケット団のムサシとコジロウの名前の元ネタってもしかして……今気づきました!

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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚
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