悪神ロキ
魔物の大軍を倒し、昼食を食べようとした時。
突然神を名乗る少年が現れた。
その少年は自分が魔物と勇者を創ったと言う。
その言葉を信じるのならば、目の前にいる少年は女神ユリレーズ様が悪神と呼んでいた存在の可能性が高い。
悪神ロキ。
不気味なほど存在感がある少年だけれど、その見た目が非常に、ひじょーーに気になる。
私と顔がそっくりなのだ。私たち兄弟です!って言えばだれもが信じるくらい!
悪神と顔が似てるとか…どゆこと?
私たちがその存在を前にどうしていいか困っていると、ルコアさんが話し役を買って出てくれた。
「ロキ様はなぜこのようなところにいらしたのでしょうか?」
『うーん。一番の目的は朝日さんの顔を直接見るためかな』
「私を?」
『そうそう。あと、二度も勇者と魔王の戦いを邪魔してくれたからねー。今後は僕も積極的に動こうかなって意思表示をしにね。ユリレーズさんもこの状況を視ているだろうし』
勇者と魔王の戦いね。確かにルコアさんとレインの戦いも、スイナさんとミユちゃんの戦いも、私たちが間に入って結局戦わずじまいで終わっている。
まあスイナさんとミユちゃんは私たちがいなくても戦わなかったと思うけど。
『その考えは間違っているよ。朝日さん。もし朝日さんたちが介入していなければ、勇者スイナと魔王ミユは戦う未来にあったよ。でも、君たちがいたことによって未来は変わったのさ』
「あんなに仲がいいのに?」
『君たちがいないと、ろくに意思疎通が出来ずすれ違いのまま戦闘に入っていたさ。それに、勇者スイナは街1つと友人1人なら街を優先する』
「…否定はしないがの」
そうだったのか。もし2人が戦っていたらどうなっていたか…あまり考えたくない状況だね。
『それで、このままだと今後も君たちに邪魔されると思うんだよねー。だから、次からは僕の使徒もこの世界で暴れてもらおうと思ってね。そうしたら今より面白い状況になると思うんだ』
「あなたは面白いかもしれないですけどこちらは迷惑ですわ」
『だって、平和な世界を眺めていても退屈でしょ?ドミノを並べていたら途中で蹴り飛ばしたくならない?バトル物で急に日常パートが長くなったら早く戦えよって思わない?綺麗な世界があったら、滅茶苦茶に壊したくならない?朝日さんならわかるよね?』
「私は逆ですよ!逆!ドミノを並べるならせっかくだからギネスに挑戦します!綺麗な世界があったら、この際だからどの世界よりもきれいな最高の舞台を作り上げます!…バトル物の話は同意ですけどね!」
熱い戦いを期待しているのにいつまでもダラダラしていたら見る気無くなるけどね。
『…まぁ、結局は気分だよね気分!壊したくなる時もあれば、創りたくなる時もある。ずっと平和な日常も、まあ見ていて面白ければ不満はないよねー』
どっちつかずな神様!
『そう言わないでよ。僕は気まぐれで嘘つきなんだ。変化系能力者だね』
何を言っているんだろうこの神…
『ああ、もう一つ伝えたいことがあったんだ。ええと、小黒夕陽と天木芽衣。おめでとう!君たちは妊娠しているよ!僕から祝福の言葉を送ろう!』
「「「「妊娠!?」」」」
夕陽と芽衣が!?私と夕陽、葵と芽衣に子供が産まれちゃうの!?
そりゃあ、結婚してからはラブラブな日々を送っていたけど!
どうしよう。お母さんになるんだ私…いやお父さんなのか?
『この世界では女性同士で子供が産まれた場合、両方お母さん呼びしているみたいだね』
じゃあ朝日お母さんになるのか!
『南の街にある、白百合学園に子供を入れることをお勧めするよ。あそこの入学条件は【両親が女性であること】だからねー』
そんなんだ。学校には入れさせてあげたい!なんだかんだで将来の役に立つと思う。人との関わり方とか学ぶことは多いし。
『じゃあ、言いたいことも言ったし、そろそろ僕は帰ろうかな』
「ちょっと待って!使徒についての説明をもう少し!」
これからロキの使徒がこの世界にやってくるんだよね?
今後の不安を少しでも解消しておかないと!
『え?うーん。これから召喚しようと思うんだよね。あ、出会ったらすぐにわかるようにしておこうか。そうだなぁ…使徒にはステータス鑑定が出来ないようにしておくよ。使徒には君たち4人か、魔王を標的にしてもらう予定だから、頑張って防衛してね』
ステータス鑑定が出来ない人はロキの使徒。
つまり強さもスキルもわからないまま最悪戦わないといけないのか。それは怖い。今までは情報戦で圧倒的にこちらが優位だったからやってこれていた面があるからね…
「他に聞きたいことはあるかな?」
「どうして世界を壊したいのですか?」
『楽しいことをしている相手にちょっかいを掛けるのが僕の趣味だからだね。今はユリレーズさんが悔しそうにする顔を見るのが楽しみなんだ』
ちょっと!それで多くの人を巻き込まないでよ!
『別にいいじゃん』
いやいや!てか心を読むの止めて!
『もういい?じゃあまたね』
一方的に言いたいことだけを言って悪神ロキは去っていった。
はぁ。私は夕陽とイチャイチャして楽しく生きていたいだけなのに…
こうして初めての神との会合はなんだかよくわからないまま終わってしまった。
『ふう』
『お帰りなさい』
『ただいま。ヘル』
『それで、あの女はどうだったの?』
『そうだねぇ。よくわからなかったよ』
『え?』
『直接見てもよくわからなかった。面白いね。流石ユリレーズさんのジョーカーだ。それに比べて僕のジョーカーは行動が慎重で面白くない。このままだと僕の負けになっちゃうよ』
『私が行ってパパっと終わらせようか?』
『ヘルが行ったらお遊びじゃなくなるよ。もうちょっと待って』
『相変わらず面倒くさい性格ね。それで、久しぶりに召喚するんだっけ?』
『そうそう。どんなのにしようかなぁ。とりあえず面白そうなのを考えておくよー』
『選ばれる存在がかわいそう…』




