ドライブなう
私たち4人とミユちゃん・スイナさんの6人は北の魔王城を目指すべく、北門を出た。
さて、魔王城へはどうやって行こう?
今までは馬→ヘリコプター→ドラゴンと乗り物に変身して移動したので、今回は車にしようと思う。
早速どろんと車に変身する。5人乗りで、色は青!
夕陽たちは私の変身を何度か見たことがあるので何とも思っていないようだけど、スイナさんとミユちゃんはびっくりした表情を見せてくれる。
そのリアクションが見たかった!
「な、なんじゃ!?朝日が鉄の塊に変わったぞ!?」
「アサヒは人じゃなかったの?」
「これは車ね。今回はこれで移動したいのかしら」
「あのですね。朝日ちゃんは変身魔法のスキルを持っていて、毎回移動するときに乗り物に変身してくれるんです」
「今回は車」
「クルマとはなんじゃ?」
『説明するより体験したほうが早いよ!乗った乗った!』
「…朝日がこう言っているのでとりあえず乗りましょう」
「う、うむ…」
5人が私に乗り込んでくる。運転席に夕陽。助手席にミユちゃん。後ろには芽衣、葵、スイナさん。
さて、ここで変身魔法ならではのギミックをご紹介しよう!
なんとカーナビに私が映るようにしているのだ!近未来っぽくて素敵な仕様じゃない?
みんなが乗り込んだのを見計らい、カーナビの画面に私が映る。
「うわ!ビックリするわね」
「アサヒがちっちゃくなったの」
画面をミユちゃんがペタペタ触っているけど、そこに私がいるわけじゃないんだよねー。
『寒いとか暑いとか要望があれば言ってね!』
「未来にこんなカーナビありそうだね~」
「ボイスロイドカーナビとか」
あったらいいねえ。絶対買うよ。
『じゃあ、出発するよ!』
ゆっくり発進する。
「動いたの!」
「これは楽ちんじゃのう」
『私が動かすけど、一応ハンドルでも動かせるからね。ミユちゃんに方向聞きながら、夕陽操作してよ』
「わかったわ」
見渡す限り何もなく、たまにモンスターが居て私たちを見つけはするけど、時速60キロで走っている私たちには全く追いつけない。
たまに魔物を見つけてはスマホで写真撮ったりしてドライブを満喫する一行。
『ミユちゃん。魔王城までこのまま何もないの?』
「途中で氷の湖があるの。そこまで着いたらあと半分なの」
『りょうかーい!とりあえず氷の湖目指して進むねー』
氷の湖!でっかいスケートリンクみたいなものかな?
車だと滑りそうだから速度を落として安全運転だね。
「はあ~。景色がビュンビュン変わっていくのう。これは歩くのが馬鹿らしくなるのう」
「私が走るより速いの!次は私が運転したいの」
「なら次の休憩の時に席を交換しましょうか」
「ありがとうなの!」
それから数時間後。お腹が空いてきた。
『そろそろ休憩しようか』
「そうね。お腹も空いてきたし」
「賛成」
車を止めてみんなが外に出る。私も変身を解除。
「ん~!肩凝ったあ!」
「変身魔法って肩が凝るのね…」
「お昼の準備は私と葵ちゃんに任せて~」
「お願いね」
葵がレジャーシートや既に出来ている料理、コップや皿などをどんどん出し、芽衣がテキパキと並べる。
ものの数分でご飯が食べられる状態になった。
「はあ…お主らは思っていたよりも規格外じゃのう」
「空間魔法なの?」
「ミユちゃん正解!葵のアイテムボックスは時間が止まっているからほかほかの料理が食べられるよ!」
「見たことがある料理じゃの」
「温泉旅館の料理を持ってきた」
刺身やみそ汁などの和食だ。
「干し肉や乾パンを持ってきたが、どうやら出番は無さそうじゃの」
「荷物は葵に預ければ楽ですよー」
「…お願いしようかの」
「ん」
食事タイム突入!
「どれくらい来たかな?」
「結構走ったわね」
「もう少しで氷の湖に着くの」
「それでだんだん寒くなっているのね」
「確かに寒いのう」
「氷の湖って完全に水が凍ってるの?」
「そうなの」
「へえー。じゃあスケートとか出来そうだね!」
「遊びに来たんじゃないのよ。そんな余裕はないわ」
「そうじゃそうじゃ」
「言ってみただけだよー!」
一度来た場所は葵の転移で行けるから、ひと段落着いたら遊びに行こう。
スケートとかやったことないし!
「それにしても便利な乗り物じゃのうクルマは」
「びゅんびゅんなの」
「私たちの世界では普通にあったんだけどね」
「ほう。お主ら異世界人か」
「あれ?あんまり驚かないんですね」
「異世界人の知人がいるからの」
私たち以外の異世界人!?
そんな話初めて聞いたよ!
「どんな人ですか?もう少し詳しく聞きたいんですけど…」
「あたしと同じ勇者でな。勇者が5人この世界にいるのは知っておるか?」
「そうなんですか?てっきり4人だと思っていました」
東西南北の魔王に対抗するために、東西南北に4人勇者がいるものだと思ってた。
「朝日が言っておる4人とは東西南北のそれぞれの街におる勇者のことじゃのう。そのほかにもう1人、最強の勇者がおるのじゃ。そやつが異世界人じゃの。中央の王都にいるぞ」
「へえ~どんな人なんですか?」
「…それがよくわからん奴でのう。容姿がたまに変わるのじゃ。全くの別人にの。ただ、温泉が好きらしくての。年に1回はあたしの宿に泊まりに来るぞ」
容姿が変わる?私と同じ変身魔法?
温泉好きなのは、異世界人なら気持ちは凄くわかる。
「ちなみに、どこの世界から来た…とかわかりますか?」
「ニッポンと言う世界から来たと言っていたぞ」
「「「「!!」」」」
「おや、知っているのかの?」
「知っているも何も、私たちも日本から来たんですよ!」
「ほお!じゃったら、あやつはお主らの先輩じゃの」
「そうですね。王都に行く機会があったらぜひお会いしたいです!」
「王城に住んでいるらしいからの。あたしの紹介状を後で書いてやろう」
「ありがとうございます!」
「今回の旅ではとても助かっておるからの。これくらいお安い御用じゃ」
名前を聞いてみたけど、今はスイシャと名乗っているようだ。
容姿が変わるなら誰かわからないんじゃ?思ったけど、瞳に六芒星の印がついているから、顔が変わっていても見ればすぐ分かるらしく、どんなに容姿が変わってもそこだけは毎回同じなんだって。
中二病なのかな?
「私たち以外にも転生者って居たんだね~」
「意外」
「でも勇者なのね…もしかしたら厄介かもしれないわ」
夕陽の言う通りだね。
勇者なら、私たちの敵なのかもしれない。
少なくとも女神ユリレーズ様が転生させたわけではないだろう。
なぜなら勇者は世界を破滅に導く役割を担っているのだから。
つまり、ユリレーズ様が「悪神」と呼んでいる神様が転生させた人の可能性が高い。
もちろん、スイナさんのように優しい勇者もいるから、決めつけは良くないけども。
「夕陽の言うように、会うなら慎重にね」
「ん」
「え?なんで?日本人なんでしょ?会ってみたくないの?」
「…芽衣にはあとで葵が説明しておいてね」
「わかった」
「今教えてよお!!」
「あたしにもぜひ教えて欲しいのう。どうして勇者じゃと厄介なのじゃ?」
スイナさんが目を鋭くして質問してくる。まあスイナさんも勇者だしね。厄介なんて言われかたをされたらいい気分ではないだろう。フォローしないと。
「だってですよ?勇者って街の皆さんに大人気じゃないですか!スイナさんだってそうだし、私たちが初めて来た街の勇者だってパレードできゃあきゃあ騒がれている中、たまたま宿から見ることが出来たんですよ!ましてや王都だったらもっと人気があるんじゃないですか?」
「…そういうことかの。確かに会うのは難しいかもしれんの。あやつは人気がある上に王城におるからの。あたしの旅館にもこっそり来ておるらしい。じゃが、さっきも言ったがあたしが紹介状を書くからの。一応あたしも勇者の一人じゃ。そこそこ顔が利くんじゃぞ?」
「…そうね。厄介なんて言ってごめんなさい。スイナさん」
「いいんじゃ。あたしも少し敏感すぎたのじゃ」
話しがひと段落着き、昼食も食べ終わったので再びドライブ。
「今度は私が運転するの!!」
「わかったわ。私が今度は助手席ね」
「それはいいけど、あんまりハンドルは動かさなくていいからね?ミユちゃん?座っているだけでいいんだからね?」
「メイうるさいの」
「不安しかない」
「もし凄い運転でも朝日ちゃんが制御してくれるよね?大丈夫だよね?」
「…芽衣はわかってないわね。こういう時の朝日は悪ふざけするわよ絶対」
「えーと…つまり?」
「多分ミユちゃんに運転は任せるわね」
よくわかってんじゃん夕陽!
~数分後~
*ミユちゃんは見た目子供ですが30歳を超えてます。だから運転してもセーフ*
「きゃあああ!酔う!酔う!」
「ミユちゃん!アクセル踏まないで!速度緩めて!!」
「びゅうううん♪なの♪」
「ちょっと!朝日!車止めなさい!これ事故るやつだから!」
『大丈夫大丈夫!制御してるから!』
「これで!?何キロ出てるのよ!」
「…吐く」
「誰か袋!袋用意して!葵が顔青い!」
『葵が顔葵…ぷふっ』
「はっはっは!楽しいのう!次はあたしに運転させてくれ!」
車中がちょっと阿鼻叫喚してるけどこれはこれで楽しいんじゃなかろうか。
ちょこっと蛇行運転してるけどね。
他に車はないし、いざとなれば私が操作するから、ちょっとしたアトラクションだと思ってもらえれば。
それから葵にとっては地獄の時間が過ぎ、氷の湖に着いた。
車が止まった瞬間、葵が車から飛び出す。
「うっ…」
「葵ちゃーーーん!!」
葵と芽衣が遠くに旅立ち、他の面々も車から出てくる。
「はぁーーー!楽しかったの!」
「ミユちゃんは今後運転禁止ね」
「なんでなの!?もっとしたいの!」
「だめじゃだめじゃ!次はあたしの番だからの!」
私も変身を解除して話に参加する。
「流石に葵が持たないからミユちゃんはしばらく運転お休みかな」
「やなのーーー!」
「今度2人でドライブしよう!その時はもっと激しくしても大丈夫だから!」
「いいの!?」
「本当本当」
「じゃあ、今日は我慢するの!」
「偉い偉い」
なでなで。
ミユちゃんの頭をなでながら氷の湖を見る。
かなり横幅が広く、大回りしていくには時間が掛かりそうだね。
車の重さで氷が割れないか心配だけど…
私たち女の子だし!軽いから!割れない!
ちらほら氷の上にクマっぽい魔物がいるし、氷はかなり厚そう。
「あの熊強そうね」
「手足と、それに尻尾も氷に覆われているのう。殴られたら痛そうじゃ」
「鍋にしたら美味しいの」
「「「ほほう」」」
熊鍋は食べたことないなあ。美味しいのかな?癖が強いイメージだけど。
復活した葵と芽衣も戻ってきた。
「ひどい目に遭った」
「今まで乗ったどの人よりも運転荒かったよお」
「えっへん!なの!」
「「「「褒めてない褒めてない」」」」
「今日はここまでにしておきましょうか。あと半分くらいで着くのでしょう?」
「そうだね。明日には着くのかな?」
「ふむ。ここで泊まるのか。ちと寒いのう」
「いえ、宿に戻りますよ?」
「え?」
「え?」
え?帰って温泉入りたいよね?現代っ子の私たちとしては毎日お風呂に入りたいんだけど…
「せっかくここまで来て戻るのかの?」
「葵の転移で一瞬ですよ。また明日ここに転移で戻ってきて再スタートです」
「あ、なるほどの。でもあたし、スタッフの皆にしばらく帰らないから宿は任せた!って熱く語ったから今日帰りづらいんじゃが…」
「えーでもあったかい部屋のお布団で寝たいですよね?」
「それはそうなんじゃが…一人一人を抱きしめてから来たから…アイとか泣きながら見送ってくれたし…」
「「「「…」」」」
それでひょっこりその日の夜に帰ってきたら確かに気まずいかも?
「じゃあスイナさんだけここで野宿と言うことで…」
「それはいやじゃ!!」
「じゃあ帰りましょう」
「うう…そうするのじゃ」
「葵お願い」
「ん」
葵の部屋に転移する。
「では、また明日の朝ここに集合と言うことで!今日はお疲れさまでした!」
「「「「お疲れ様でした(なの)!」」」」
「うう…便利なんじゃが初めからこうなると言っておくれ…」
一日目終了!
明日はいよいよ魔王城到着予定!
スイナ「(そろーりそろーり…)」
アイ「スイナ様!?魔王城に行ったんじゃ!?」
スイナ「早速見つかったのじゃ!」
アイ「戻って来てくれて嬉しいです!(ひしっ)」
スイナ「めっちゃいい子なのじゃあ!」




