ろりまほうつかいが しょうぶを しかけてきた!
中ボスが居た広い部屋の中央にて、ロリ魔法使いのサシャちゃん&従魔の狼・ゴーレム(希)と向かい合う。
「さあ!血沸き肉躍る戦いを始めるです!」
「ウォン!」
「マスターのご命令とアラバ」
この幼女ノリノリだよ!
戦ってもいいんだけど、魔法妨害を持っている葵がいる限りこっちが負けることはないと思うんだけど。
「ルールはどうするの?」
「負けを認めたほうが負けです!」
「わかったよ。2対1でいいの?」
「構いません!私がその程度で負けるはずありませんから!」
「目にもの見せてやる」
作戦はこうだ。
従魔は私が抑えて、その間に葵がサシャちゃんを倒す。以上。
「始めますですよ!」
「「はーい」」
狼の正面に立ちモーニングスターを構える。
サシャちゃんはストーンゴーレムを盾にして詠唱を始める。
葵がすかさず【魔法妨害】を発動。サシャちゃんが練っていた魔力が霧散する。
「な!?」
「ふっ。現実を知るがいい」
「ズルですか!?ズルですね!!」
「ズルじゃない」
「ズルしてるです~!!」
「してない」
「してる!!」
「ウザい」
葵とサシャの壮絶な舌戦を尻目に狼をモーニングスターでしばく。
動きはかなり早かったけど、正直あの勇者と比べるとゆったりに見えるんだよね。
冷静に前足から繰り出される狼パンチを回避し、横薙ぎにモーニングスターを振りぬく。
「キャイン!」
「まだまだいくよー」
「キャイン!?」
重力球を作り、それを狼に向かって放る。
見事狼にヒットした瞬間。地面に円形のクレーターが出来、その中心でオオカミは身動きが取れずにいる。
さて、こっちはほとんど戦闘終了したけれども。
あっちはどうなっているかな?
未だに魔力を練ろうとするサシャちゃんと、それを妨害する葵。
一見勝負は葵が圧倒的に優位だが、変化が起きようとしていた。
「あーっ!またですか!!何ですかそのムカつくスキルは!」
「教えない」
「お前の態度もムカつくです!でも、だんだんわかってきましたよ。この魔力が乱される感覚は以前にも経験があるです。複合魔法を何度も失敗した時と似ています。だからこうやって無理やり魔力の流れを制御して…!!」
「!!??」
「ぶっ放すです!ファイア!」
初級魔法のファイアとは思えないくらいの大きさの火の玉が葵を襲う。
ギリギリで結界魔法を発動させて防いだようだが葵は信じられないものを見る目でサシャを見る。
「ふふん!どうですか!お前のズル魔法は私が破ってやったです!」
「いい気になるな」
葵の右手付近とサシャの後頭部に空間魔法で【穴】を作り、その場で葵はこぶしを振りぬく。
葵のこぶしは穴を通してサシャちゃんの後頭部に出現し思いっきり拳骨をする。
「いったぁ!です!」
「ぷくく」
「またズルですか!ズル子ですか!?」
「誰がズル子だ」
常に穴をサシャの真後ろに設置してぽこすか殴っている。
「痛い痛い痛いです!!ヤメロです!」
「負け?」
「負けるわけないでしょお!ストーンゴーレム!」
「イエスマスター」
「チッ」
ゴーレムがサシャちゃんの後ろに移動する。これで後ろから叩けなくなってしまった。
「今度は私の番です。【氷の世界】!!」
「「な!?」」
部屋全体が氷の部屋に早変わりする。
天井にはつららが、地面はスケートリンクのように氷が張られている。
「どうです!?私以外はみんな寒い地獄のステージは!?泣いて謝るなら許してやってもいいです!」
「誰がお子様に謝るか。朝日」
「はいよー」
変身魔法で葵にポンチョとモコモコの帽子を装備してあげる。ついでに靴も滑り防止のものに。
もちろん自分にもだ。
「どや」
「あー!ズルいです!可愛いです!私にも寄こせです!」
「はいよー。こっち来てー」
「今行くです」
サシャちゃんに触れ、葵と同じ装備に変身させてあげる。
葵は蒼色、サシャちゃんは黄色の色違いだけど。
「えへへ。どうですか!?似合ってますか?」
「かわいい!葵もサシャちゃんも可愛い!写真取っていい?」
「ヤダ」
「写真とは何です?」
「こうしてパシャッと取ると…ほら見て。サシャちゃんの姿を保存できるんだよー」
「ん?おお!私がいるです!私可愛い!」
葵には断られてしまったがサシャちゃんの可愛い姿は取れたので良しとする。
「これあったかいですね。私の魔法の威力半減です」
気温は多分氷点下を下回っているけど、別にそこまで寒くない。
顔が痛いくらいだ。
この魔法の良い所は、地面が滑るためお互い安易に動くことが出来ない。だけど魔法使いのサシャちゃんは動く必要があまり無い為、この魔法を使えば必然的にサシャちゃんが有利になるところだ。
ただそれは戦士などの接近戦タイプの相手に対しての話だ。
葵はガチガチの魔法使い。私はオールレンジなので相手が悪かったね。この氷の世界はあまり効力を発揮できないのだ。
でも、葵の魔力妨害を受けているにも関わらずここまでの大魔法を使用できるとは。やはり天才か。
「それで、次は?」
「ふん。では次で終わりにしてやるです。さっきのモンスターを倒したあの技で!」
使うのか!あの技を!
でも葵にその攻撃はマズい…
「すべての敵を破壊に導く最強の切り札!【邪王滅殺獄炎破】!」
「はい勝ち」
サシャちゃんがかなりの魔力を込めた邪王滅殺獄炎破を放つ。その火の玉の大きさはさっき見たものよりも1.5倍は大きい。殺す気か!
炎が通り過ぎた場所の氷は全て溶け、水蒸気が発生している。このままだと葵は影も形も残らないだろう。
だが…葵の目の前に穴が出現する。ご存知いつもの入り口用の穴だ。その大きさはちょうど火の玉を包み込めるくらいの大きさ。
では出口はどこに設置しているのか?
巨大火の玉は全て穴に吸い込まれ…サシャちゃんの目の前に出口の穴が出現する。
サシャちゃんをぎりぎり避ける角度で。
「ギャーーーーーーー!!」
サシャちゃんの真横を火の玉が通過する。
同時につうう…とサシャちゃんの太ももに光り輝く何かが滴る。
「漏らした」
「そりゃ漏らすです!あんな危険なものに当たったら死んでしまうのですから!!」
そんな危険なものを人に当てようとするな!!
「今のがもし当たるようにしていたら…わかるよね?」
「うぅ…私の負けです?」
「え?何?聞こえなかった」
「負けましたああああっ!うわああああん!!!」
「サシャちゃん泣いちゃったよ。どうするの?」
「…まさか泣くなんて」
葵もおろおろしている。全くこのロリコンビはしょうがないなー。
サシャちゃんに近づいて声を掛ける。
「サシャちゃん。一緒にご飯を食べない?戦ったからお腹空いたでしょ?」
「うう…空いたです。腹ペコです」
「うんうん。素直でよろしい。葵、鍋が丸ごとアイテムボックスに入っているよね。それ食べよう」
「わかった」
せっかく寒い世界にいるのだから、この状況を楽しまないと!
「サシャちゃん。疲れているところ悪いけど、かまくら作ってくれないかな?」
「ぐすっ。かまくらですか?」
「そう。雪で家を作るんだ。丸い大きな雪を作って、中をくり抜くの。サシャちゃんの魔法でなら作れると思うんだけど…」
「雪で家を?…こうですか?」
「そうそう。あとはもうちょっと雪の層を厚くして簡単に崩れないように…」
それからちょっと試行錯誤し、想像通りのかまくらができた!
「おお!これこれ!一回中に入ってみたかったんだよねー」
3人で中に入る。
「「「あったかい(です)!」」」
その中は意外にも暖かかった。雪で作ったのだからてっきり寒いものだと思い込んでいたけど。うーむ不思議!
私が感動している間に葵は中央に鍋を置いて、サシャちゃんは鍋を囲むように3つの椅子を氷魔法で作る。その氷の椅子に葵がタオルを取り出し被せる。連携ばっちりか!
葵が配った皿とフォークを持ち、サシャちゃんが待ちきれない様子でうずうずしている。
「もう食べていいです?いいですか?」
「熱いから、フーフーして食べるんだよ」
「わかってるです!もう食べます!」
「「いただきます」」
「ふーっ、ふーっ。はふはふっ。美味しいです!」
「出来立ての熱々だからね。美味しいよね」
「美味い」
やっぱり寒いところで食べる鍋は最高だー!!
「そういえば、勇者くんたちはどうしたの?別行動?」
「あいつらは街の偉い人に魔王討伐の失敗報告をするとか何とか言ってたです。もぐもぐ」
「え…サシャちゃんは行かなくてもいいの?」
「なんで私がそんな面倒なことをしなきゃいけないのですか。そんなことをしている暇があるならダンジョンに篭ったり竜を倒したりしていたほうがいいです」
「自由すぎるよ…」
普通パーティー組んだら報告まで一緒にするのが普通だよね?私の考え方間違ってないよね?
これが噂に聞く地雷プレイヤーか!
まだ可愛いから許せるけどサシャちゃんじゃなかったらひどいことになりそう。
「ところで、お前たち見どころがあるです!どうです?私が仲間になってあげてもいいですけど!」
「「お断りします」」
「なんでですか!!」
いや、だってねえ?キャラが濃すぎるよ。たまに出てきてくれるだけでいいよ。
「そこは置いておいて、サシャちゃんはこれからどうするの?」
「私はこの先もいけるところまで行ったら、魔王城に戻って魔王と再戦するです」
「おー頑張ってね!」
「モチのロンです!勝ったら教えてやるです」
「うん。今度会ったら結果を教えてね」
「わかったです」
それから鍋を完食して、サシャちゃんの機嫌も治ったのでお別れすることにした。
また会えるかな。
ルコアさんに宝石を見つけたことを報告するためダンジョンを後にする。




