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JK4人の異世界暮らし!  作者: 綿あめ真
西の白銀竜王とロリコン勇者
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朝日と夕陽

 しばらくすると夕陽の寝息が聞こえてきた。やっぱり夕陽はかなり不安だったんだよね。少しでも不安を取り除けてあげられていたらいいのだけど。

 そりゃ突然交通事故に遭ったと思ったら異世界にいて、これは夢じゃありません現実ですってなったら不安にならないほうがおかしいよね。

 でも私は正直、自分でもどうかと思うけど今の状況にかなり興奮している。だって私の行動理念は『楽しいこと、面白いこと探し』だ。物心ついた時から一貫して楽しいこと、面白いことを探し続けてきた。

 しかし日本にいた時はいろんなしがらみがあって、やりたくてもやれないことっていうことが結構あった。それでも何か見つけてはいつも一緒にいた夕陽に報告して、たくさんのことにチャレンジしたけれど、事故に遭う直前は自分ができる範囲のことはやりつくしたような気がして内心意気消沈していた。 


 この世界はどうだろうか。昨日までの学生としてのしがらみがない。世間体とか気にしなくていい。さらに、『スキル』という超常の力まである。

 今まで以上に楽しいこと、面白いことが待っているに違いないという確信が私を興奮させている。

 おっと、落ち着け私。冷静に行動しないと楽しむことに集中しすぎてとんでもないことやらかすぞ。

 それに今は友達と一緒に行動しているのだ。3人に迷惑を掛けるのは良くない。周りも楽しんでくれないと嫌なのだ私は。


 ふと、隣の部屋にいる葵と芽衣のことを考えてみる。

 葵についてはそんなに心配していない。葵は絶対こっち側の人間だから。この世界に来たことに喜びを感じているはずだ。葵は日本では無表情で有名だった。どこかぼーっとしていて、時々本当につまらなそうに世界を見ていた。芽衣とは馬が合うみたいで唯一楽しそうに遊んでいたけど。たぶん地球滅亡しないかなーとか学校地震で倒壊しないかなーとか考えていたに違いない。でもこの世界に来てからの葵はいつも通りの無表情だけど、目の奥は輝いていた。

 あと葵はなぜかかなりこの世界の知識を持っているし、冷静で頭の回転も速い。今後も葵にはお世話になるだろう。


 芽衣は夕陽と同じタイプだ。不安でしょうがないはず。顔に出まくっていたし。今頃向こうの家族の心配とか友達の心配とか頭がぐるぐる回っているんじゃなかろうか。いつも笑顔で楽しそうだった芽衣が、今日は終始不安げだった。

 まぁ多分だけど、葵が今フォローしているはず。部屋決めしたとき真っ先に葵は芽衣と同じ部屋がいいと明言したのは、芽衣が心配だったからだろう。もし芽衣と夕陽が一緒の部屋だったら暗さマックスだったろうし、私と一緒だったらちょっとフォローできるか自信ない。葵ならその点聞き上手だしそつなくやってくれるでしょう。


 葵と芽衣の関係は私と夕陽の関係に似ている。性格は全然違うのに一緒にいても苦にならないし、楽しい。私は自由気ままに生きていたいけど、夕陽は逆で決められた人生のレールを歩くことを良しとしているし、その為の努力をしている。最初は変な子と思っていたけれど、楽しそうに自分の将来を語る夕陽はどこか眩しかった。こんな生き方もあるんだなと思った。

 夕陽には最近よく将来一緒に働こうと誘われていて、その度にはぐらかしていたけど、そんな未来も悪くないかなと内心ちょっと思っていたのは秘密だ。


 そんなとりとめのないことを考えながらいつの間にか私は眠りについていた。




 *




 ―夕陽視点―


 朝日の寝息が聞こえてくる。さっきはつい愚痴を言ってしまって申し訳ないと思いながらも、不安でどうしようもなかった。でも朝日の話を聞いているうちに不安は少し解消された。やっぱり朝日は凄いわね。たぶん今の状況もナチュラルに受け入れているのでしょうきっと。

 

 最初は朝日のことが嫌いだった。


 初めて朝日に会ったのは中学1年生の時で、何回か話してある日私の家で遊ぶことになった。私の家は老舗のお菓子屋さんでお母さんが社長だ。私も後を継ぐ予定で、小さいころからお菓子作りをよくしていたので、朝日にお菓子作りを教えてあげようと思ったのだ。自慢しようという考えもあったわね。

 しかし何回か作った後、朝日は私よりも見栄えが良くて、美味しいお菓子を作れるようになってしまった。その時、何より悔しかったのが私のお母さんとおばあちゃんが朝日を絶賛したことだ。おばあちゃんは厳しい人で、私はおばあちゃんにお菓子作りで褒めてもらったことがなかった。そのおばあちゃんに朝日は褒められたのだ。たかだか数回お菓子を作っただけで。その日から私は朝日のことばかり考えるようになったし、朝日の嫌なところを見つけてやろうと朝日に付きまとうようになった。


 朝日の後を追うようになってしばらくして分かったことは、彼女が天才だということだった。何にでも手を出して、そのどれもに才能を見せていた。お菓子作りに限った話ではなかったのだ。悔しかったが、同時に素直に凄いなと思ってしまった。こんな人間がいるのかと。


 でも朝日を見続けてわかったことがある。何にでもやり始めのころは本当に楽しそうに朝日は取り組む。でも周りがそれに対して持て囃して、同時に今までその分野で頑張っていた人の嫉妬を受け始めたときに、朝日は熱が冷めたようにピタッとやめてしまうのだ。その光景を見るたびに私もあの嫉妬している中の一人だったのだなとなんだか悲しくなった。


 それでも朝日は自分が楽しむことをやめなかった。何か面白いことを見つけるたびに私に話しかけてくるのだ。そんな健気な朝日を私はいつの間にか応援するようになっていた。

 嫌いだった感情は、いつの間にか好きの感情に反転していた。その後、同じ高校に入った私たちは(朝日と同じ高校に入学するために必死に受験勉強した)より仲良くなって、朝日は相変わらず面白いこと探しで私は本格的に仕事について考えるようになっていた。葵と芽衣とはその時知り合って仲良くなった。そして朝日がなかなか面白いことが見つけられずにいて、私もそんな朝日を見てもやもやしていた時期に、私たちは交通事故に遭った。


 私の家を継ぐという夢は潰えてしまった。


 ……でも最近つまらなそうにしていた朝日が今日は本当に楽しそうだったわ。それだけで私はまだ頑張っていこうと思える。朝日と一緒に楽しいことをして、朝日を支えることが今後の私の生きる指標だ。




とある日常

夕)「朝日、やっぱり将来私と一緒に働きましょう!副社長のポストを用意するわ!」

朝)「わーい、やったー(棒)」

夕)「ちょっと、お願いまじめに考えて!」

朝)「えーうーん明日ね、明日」


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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚
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