私たち結婚します!
話しをつい盛っちゃうかわいい小学生だと思っていたら明らかに年上で魔王だった件。
いや、うん。ツッコミどころしかないステータスをありがとう。
えー?どうしようこれ?勇者が経営している宿に魔王が遊びに来ちゃってもいいのん?知っているの?お互い知っているのかい?
「えーと、ミユ…さんは、魔王様だったりします?」
「そうなの」
「へー。ふーん。あはーん。ちょっとタイムで」
葵と作戦タイム。
「(ステータス見た?)」
「!!(今見た)」
「(どうする?)」
「(どうしよう)」
「(どうしよう)」
ヤバい。2人とも突然過ぎて脳内処理が追い付いていない。思考停止している。ヤバいヤバい。
「(と、とにかく、事情を聴いてみようか)」
「(大丈夫?)」
「(私に任せて!何かあったらフォローよろしく)」
「(ん)」
作戦タイムを終えて再びミユ魔王様のところに戻る。ミユさんは空を見てまたぼーっとしていた。
「ミユ様」
「ミユでいいの」
「えーと、ミユさん…ミユちゃんでもいい?」
「いいよ」
だって見た目がミユさんじゃなくてミユちゃんなんだもの!
「ミユちゃんは魔王城に居なくていいの?」
「だってヒマなの。なんにもないの」
「うーんそっか。ここまでどうやって来ているの?」
「行きはお姉ちゃんの転移の魔眼で送ってもらうの。でも帰りは歩いて帰らなきゃいけないの」
「お姉ちゃんがいるんだ?」
「ミラねえとユラねえ」
「3姉妹なんだね」
「そうなの」
「3人とも魔王様だったり?」
「違うの。私だけなの」
「そっかぁ。お姉さんは魔王城に居るんだね」
「そうなの」
「ふんふん。ここからどれくらいの距離に魔王城はあるのかな?」
「5日くらいかかるの」
「結構遠いね。じゃあここに来るのは1か月に1回くらいかな?」
「週1なの」
「週1なの!?」
「そうなの」
魔王城にほとんどいないじゃん!魔王なのにそれでいいのかい!?
「だって温泉きもちいの」
「それならしょうがない」
温泉の魔力には抗えないのだ。
「お湯加減はどうかの?お客人」
「ス、スイナさん!?」
「そうじゃよ。おや、ミユちゃんもさっきぶり。気持ちいいかい?」
「きもちいの。ずっとここにいたいの」
「はっはっは。それじゃあお姉さんたちが心配してしまうでな。程々にしとき」
「わかったの」
おやおや?これは…どっちだ?お互い素性知っているのか?
「えーとスイナさんとミユちゃんは仲良かったり?」
「ん?仲良しじゃの。たくさんこの宿を利用してくれるからのう。自然とよくお話しするようになってな」
「ミユちゃんのお家の事情も知っていたり?」
「家でやることがないというお話しかの。子供のうちはもっと色んな遊びをするものじゃと思っておったが…ミユちゃんはいつもぼーっとしておるし、温泉好きの変わった子じゃのう。もっと外で友達と遊び」
「ここがいいの」
「はっはっは」
あ、知らんなこれ。
「スイナさんはどうしてここへ?」
「いやなに。可愛らしい新規のお客人が入っておるからの。裸の付き合いをしてみたくなったのじゃ」
スイナさんはお肌が透き通るようにきれいで健康的なエロさを感じる。
胸は私と同じCくらいかな?
「やっぱり温泉は気持ちいいのう」
「きもちいの」
「たくさんの種類の温泉があるんですね。ビックリしました」
「この街で一番種類は多いんじゃないかの。もう全部入ったかえ?」
「まだ半分くらいですね。人気の温泉とかありますか?」
「そうじゃの。おっぱいが大きくなる効能かの」
ざばぁ!!葵が立ち上がる。
「ちょっと行ってくる」
「いってらっしゃい」
早歩きで葵が露天風呂を後にする。
「あとは子宝の湯とかの」
「子宝の湯ですか。その予定はないかなー」
「そうなのかえ。てっきりあの朝日をじっと見ておる女の子とそういう仲かと思っておったぞ」
「夕陽のことですか?確かにお互い好き合ってはいますけど。子供とかは考えてないですね」
「残念だの。絶対にめんこい子が生まれるぞ」
「め、めんこい?」
「可愛い言う意味じゃ」
「可愛いでしょうねー。でもまだこの世界に慣れていないのに子供が出来ちゃうのはどうなんですかね」
「世界に慣れていないという考え方はよくわからんが、大事なのは子供が欲しいかどうかじゃ。しかし身勝手な親になるよりはいいの。お金はあるのじゃろ?」
「使い切れないくらいありますね」
「レベル100を超えておるから時間も限りなくある。他に心配事があるのかえ」
「そう言われると無いような…」
でも女子高生で子供産むってどうなの?世間体とかさ。あ、もう関係ないのか。
あと学校とかあるのかな。
それに、私たち結構あっちこっち行くけど、赤ちゃんって長旅大丈夫なのかな?
「学校ってあるんですか?」
「残念ながらこの街には無いのう。ただ、南の街にはあるらしいぞ。女子しか入れないらしいがの」
学校に関しては問題ないかな。絶対女の子生まれるらしいし。
南の街に学校あるんだ。しかも女子校。学生生活が懐かしいなー。
「赤ちゃんって長旅に耐えられるんですかね」
「そりゃあ生まれてすぐは厳しいだろうがの。少し経てば大丈夫じゃろ。結構子連れの商人もおるぞ」
そりゃそうか。
学校もあって、お金もあって、時間もある。16歳だから法律もオッケー(この世界には法律ないけど)……あれ、何も怖くない。
「何だか大丈夫な気がしてきました」
「そうなのかい?」
「はい。相談に乗ってくれてありがとうございます。ちょっと夕陽と話してきます」
「じっくり話してきな」
露天風呂から上がり、夕陽の下に向かう。
夕陽は…いた。芽衣とおしゃべりしながら湯船に浸かっている。
「夕陽。ちょっと話が」
「あら、朝日。露天風呂はどうだったの?」
「気持ちよかったんだけど、それどころじゃないことになったんだよ」
「どうしたの?そういえば葵ちゃんは?」
「葵はちょっと成長の旅に」
「??」
「それで何があったのよ」
そういえば2人は魔王のこと知らなかったのか。子供云々よりはまずはそっちかな。2人きりの時に話したほうがいい気がするし。
「魔王がいたんだよ」
「「!?」」
「あ、でも可愛かった」
「…詳しく教えなさい」
露天風呂で何が起こったのかを説明する。
「…なるほどね。魔王城に居るのがヒマで街の温泉に遊びに来ていると」
「それで、偶然ここは勇者の経営している宿だけど、お互い知らないんだね」
「教えないほうがいいのかしら」
「そうだね。最悪戦闘になっちゃうかもしれないし」
「じゃあ基本は見守る?」
「うん」
ところで、今2人が入っているお湯はどんな効能なのかな?ピンク色だけど。
「このお湯はどんな効能の温泉なの?」
「そろそろ上がりましょうか!のぼせてきたし!」
「え、大丈夫?早く上がろう!」
「ええ」
「うふふ。私は葵ちゃんを探してから上がるね」
「オッケー」
「わかったわ」
葵がのぼせて倒れないように腕をつかんで歩く。
「朝日、いろいろ当たっているから。そんなにくっつかないで」
「でも心配だし」
「あ、ありがとう…」
「うん」
脱衣室で体を拭いて浴衣を着る。
ブラなしだとらく~。
ドライヤーで髪を乾かす。ちなみにこのドライヤーは風魔法で動いている魔具だ。
身だしなみを整えてから脱衣室を出て、受付のお姉さんに部屋の鍵を貰う。
505号室だから、結構遠い。エレベーターはないので階段を上っていく。
「結構時間掛かるね」
「そうね。次からは葵に転移を頼みましょうか」
「それいいね!」
部屋に着いたので中に入る。
ザ・和室でとてもいい。これぞ温泉旅館!
さて、時間は夕方の5時。夕食までもう少し時間がある。今こそ話しをするタイミングでしょう。
「と言うわけで、夕陽に大事なお話があります」
「何がと言うわけなのかわからないけど、どうしたの?」
「実は、子供が欲しくなりました」
「!!??」
「私たちの愛の形を」
「はい!?」
「結婚してください!」
「ちょ、ちょっっと待って!脳内処理が追い付かないわ!!」
「3秒待ってやる」
「短い!それになんで上から口調なのよ!待って!!ステイ!!」
「わんわん」
手を前に出して犬の真似をする。正直、言ってからかなり恥ずかしくなったので照れ隠し。
夕陽は手を額に当て、私困ってますよアピールをしている。
「はぁ…一体どんな神経をしているのかしらこの子。プロポーズってもっとこう…順序があるでしょ?恋人期間を経てから、お互いそろそろ結婚する雰囲気だなぁってなって、結婚指輪をしっかり準備して然るべきタイミングにじっくり考えたプロポーズセリフを言うのが普通なんじゃないかしら。少なくとも私はそんな普通のプロポーズに憧れを持っていたわ。しかも子供が欲しいから結婚してくれって告白はどうなの?世間一般から見たらかなり酷いんじゃないの?そりゃ、私も朝日との子供が出来るのならこんなに嬉しいことはないわよ?日本にいた時は朝日のことずっと好きだったけど結婚は出来ないと考えていたし。男の人と無難に結婚しちゃうのかしら。それは嫌だなって考えていたわ。だから朝日と結婚できて子供も産める夢のような世界に転生させてくれた女神ユリレーズ様にはとっても感謝しているわ…それに」
「つまり?」
「朝日との子供が欲しいわ!」
夕陽に抱き着いてキスを交わす。3~4回繰り返してから見つめ合う。
…今夜は眠れないね。
それから二人でイチャイチャしていると芽衣と葵から夕食のお誘いがあったので食事処に向かう。
「2人とも何だか元気だね。どうしたの?」
「いやあ、良いことがあって。ね!」
「そうね」
「なになに?」
「気になる」
「私たち、結婚することになりました!!」
「ええ~!!おめでとう!!」
「おめでとう」
「あ、ありがとう…」
「ありがとう!」
「でも、実は私たちも考えていたんだよね~」
「ん」
「そうなんだ!」
「そうそう。調べたりもしたり。この世界は結婚式とか無いらしいよ~」
「マジで!?」
「ん」
そっか。結婚式の風習はないかー。
でも別に習慣が無くても、やっちゃいけないわけじゃないよね。
サプライズで結婚式やりたいな。
それから食堂を探しているとスイナさんに会った。
「おや、どうしたのかえ?」
「そろそろ夕ご飯を食べようと思って。食堂はありますか?」
「ああ!食事の説明をすっかり忘れておった!あたしの宿では食事を部屋に持っていくサービスをしているんじゃ。じゃから、スマンが部屋で待っとってくれると助かるのう」
「そうだったんですか!わかりました!」
「せっかく降りてきたのにすまんのう。すぐに持っていくけえ。それぞれの部屋に持っていくかい?それともどちらかの部屋で4人一緒に食べるかい?」
「4人で。いいよね?」
「「「うん」」」
「わかったよ。準備出来次第持っていくからね」
「はーい」
今までの宿は食堂で食べていたから部屋で食べる発想がなかったよ。
階段で誰もいないことを確認して葵の転移で部屋に戻る。
「部屋に持って来てもらって食べるなんて珍しいね」
「そうかしら?割と普通だと思うけど」
「え?そうなの?」
「温泉の宿でそういうとこあるよ」
「そうなんだ。温泉って日帰りしかしたことないからわからなかったよ」
「朝日ちゃんは温泉宿に泊まったと無いんだ」
「日本人なのに」
え、みんな経験済み?
「いろいろ教えてよ!」
「そうだね~じゃあ温泉宿あるある言い合う?」
「いいわよ」
「ん」
そんなにあるあるなんてあるのかい?
「私から言うね~。“夜中も朝も温泉に入っちゃう”」
「あるあるね」
「3回は最低でも入る」
「え、なぜ?意味あるの?」
「なんとなく?」
「意味とか考えたらだめよ」
「疲れが取れる気がする」
逆に疲れるような…
いきなり微妙なあるある…
葵、納得出来るあるあるお願い!
「“やたら古いゲームコーナーがある”」
「わかる~!!」
「9割はしょぼい」
「あーなんかそんなイメージはあるね!」
「エアホッケーよく見るわね」
温泉上がりにエアホッケーとか卓球したら盛り上がりそう!!
「次は私ね“履いて行ったスリッパが無くなってる”」
「私もそれある~」
「しまった場所覚えてない人多い」
「それ帰りどうするの?」
「私は別の人の履いて戻ったわ」
「負の連鎖が…」
全員違うの履いちゃう。気になる人は嫌そう。
「どんどんいくよ~“浴衣を着て寝ていたはずなのに、起きたら全裸になってる~”」
「それ芽衣の寝相が悪いだけなんじゃ…」
「芽衣のあるあるネタっていつも半分くらいしか共感できないのよね」
「感性がちょっと違う」
「ええ…」
こんこんと扉をノックする音が聞こえる。
あ、ご飯来た。




