スクーナの街並み
外壁の入り口をくぐり、スクーナの街に入る。
この世界に来てから2つ目の街だ。この街の特色なのだろうか、どこを見ても温泉付きの旅館がある!
ヤバい。めっちゃテンション上がる!
ちなみに、まだ行ったことがない大きな街は南と東の大きな街。そして中央の王都かな。
あとは小さな村や町が東西南北の街の内側にぽつぽつあるらしいね。
そして例の如く歩いている人は女性が多い。男女比2対8くらいかな?やっぱり女性同士で子供が産めることが関係しているのかな。絶対女の子が生まれるらしいし。
しばらく街を散策する。
鑑定で歩いている人をチェックすると、住民のレベルは西の街と大体同じで10~50がほとんど。
たまに冒険者っぽい人が50を超えているくらい。
「お嬢さんたち!見ない顔だね!温泉饅頭食べていかないかい?あんこたっぷりで美味しいよ!」
おっと。初めて人に声を掛けられた。屋台で饅頭を売っているお婆ちゃんだ。
「あんこ入り!?この街には甘味あるんだ!」
「当たり前だろ?饅頭と言ったらあんこだろう。お嬢さんたちどこから来たんだい?」
「西のキールの街から来ました」
「まぁ、聞いたところでわかりゃしないんだけどね!」
じゃあ聞かないで!?
「それで、買っていくかい?お嬢さんたちはかわいいからサービスするよ」
「え?やっぱり?じゃあ買おっかな!」
「毎度あり!4つで銅貨一枚でいいよ!」
えーと、お金使わない魔王城暮らしが長すぎて貨幣価値をど忘れしている!
確か…銭貨1枚で10円、銅貨1枚で100円、銀貨1枚で1000円、金貨1枚で10000円くらいの価値だったかな?つまりお饅頭4個で100円。
うん。安いんじゃないかな?お金は葵がアイテムボックスで管理しているので現在の所持金を聞いてみる。
「葵、今手持ちいくら?」
「(約光金貨100枚)」
ん?あー金貨の上にさらに光金貨があるんだったね。確か1枚100万だった、か…ら…
「(え、なんでそんな大金あるの?)」
「(魔王城の近くで魔物狩った後、転移で街に戻って売っていたから)」
「(あとあと、夕陽ちゃんの剣とか朝日ちゃんのブラトップのアイディア料とかもあるよね)」
「(なるほどー)」
JKが持っていちゃいけない額だよ。饅頭とか屋台ごと買えるわ。
「どうしたんだい?買うのかい?買わないのかい?」
「買います買います!葵出してー!」
「ん」
「毎度あり。ほい、饅頭」
「ありがとうございます」
1人ずつ受け取って食べる。
うーん。美味しい!甘すぎないちょうどいい味。
ただ口の中がパサパサして喉が渇くー!
「美味しいね」
「そうね。なかなかやるじゃない」
「でも喉が渇くねぇ」
「口の中水分ゼロ」
「芽衣、水出してよ水」
「いいよ~」
葵がコップを人数分出す。このコップ私が結晶石で当てたやつですよ!熊さんがプリントアウトされたかわいいやつですよ!
水を出せるのは生活魔法を覚えている芽衣だけだ。
生活魔法はかなり便利だから覚えるべきなんだろうけど…でも芽衣に頼めばいいしなー。
ちなみに生活魔法は…
LV1…ライト(部屋とかを明るくできる)
LV2…クリーン(なんでもきれいにできる)
LV3…ファイア、ウォーター、ウィンド、アース(火、水、風、土の初級魔法)
LV4…スリープ、アウェイク(よく眠れる、清々しい目覚め)
LV5…リテンション(保持)
となっている。LV5の魔法は一見効果がわかりづらいけど、どうやら物を保存するときに使うようだ。生ものとかにリテンションを掛けるとそれ以上鮮度が落ちなくなる。
しかし私たちには物を入れると時間の流れが止まるアイテムボックスを持っている為、滅多に使わないしにスキルとなっております。
あと、【ウォーター】は飲料水としても使えるんだけど、美味しさは使用者のMP量に依存するようだ。
つーまーりー!?
「【ウォーター】!」
芽衣が器用に4つのコップに水を入れる。透明度が物凄く、謎のキラキラエフェクトをまき散らしている水が目の前にある。ごくり。いただきまーす!
「ぴゃあああああああ⤴!うまああああああひい↑!!!」
「朝日うっさい!!!道のど真ん中でなんちゅう声出してんのよ!!!」
「ごめんなさい…」
ヤバい…美少女にあるまじき声を発してしまった…世のJKのイメージが崩れる。
歩いていた人がみんなこっち見てる。でもそれぐらい美味しかったんよ。
「今まで飲んだ水で一番美味しい」
「そうね。のど越しがすごくいいわ。何倍でも飲めるわね」
「芽衣おかわりー」
「私も」
「ん」
「まだ私飲んでないんだけど…」
その後も2回お代わりした。
いやー美味しかった。
芽衣は食べすぎた分をMPとHPに変換するチートスキル【メビウスの胃】を持っているからね。もしかしたら世界で一番美味しい水を味わったのかもしれない。
「お腹たっぷたぷ」
「歩くと水の音が聞こえるわ。これ周りの人には聞こえてないわよね?大丈夫よね?」
「大丈夫」
「ふぅ。やっと飲めるよぉ」
「あ、もしかしてあれ足湯じゃない?」
「ホントだわ!無料開放しているみたいね」
「行こう」
「え?みんなちょっと待って~!」
ダッシュで足湯スポットに向かう。
向かった先には長椅子とテーブルがあり、10人くらいが座れるのだけれど…足を置く窪みにお湯が張ってあるのだ!
既に座っていたお客さんはテーブルの上で温泉饅頭を食べている。それいいね!
「せっかくだから利用しよう!」
「賛成」
「いいわね」
「ちょ、みんな置いてかないでよ~」
靴と靴下を脱いでからテーブルに着く。足がお湯に浸かって気持ちいい。
はぁ~。血行が良くなっている気がする~。
向かい側に座っていた20代くらいの若い女性2人が話しかけてくる。
「見ない顔ね。観光?」
「そんなところです。この足湯気持ちいいですね」
「そうでしょ。他にも何か所か足湯出来るところあるよ。あ、饅頭食べる?」
「いただきます!おいくらですか?」
「いいよいいよ。それより、飲み物持ってない?飲みかけとかでもいいからさ、もう喉渇いちゃって渇いちゃって」
「ありますよ!葵出してー」
「ん」
「おーあるんだ!助かる~」
「いただくわね…ってうまぁ!ナニコレ!?」
「ホントおいっしい!もしかして高級なものだった?」
2人とも恐る恐る聞いてくる。
ですよねー。芽衣がわたわたしながら答える。
「だ、大丈夫です!たくさんありますから!」
「そう?でもこの饅頭とは釣り合わないわね」
「そうね。どうしようかしら」
「あ、だったら、お勧めの宿とか教えてもらってもいいですか?今日この町に来たばっかりなのでまだ泊まる場所も決まってないんです」
「そんなことでいいの?予算は?」
「感動できればいくらでもいいです」
「お、かっこいい!だったら、やっぱりあそこよね」
「そうね」
「「スイナの宿!!」」
スイナの宿か。スイナさんの経営している宿かな?
「そこの宿はね。ナント!!この街の勇者が経営しているのよ」
「経営兼看板娘ね」
「一番お客さんの入りもいいし評判もいいし」
「なにより」
「「スイナちゃんかわいいしねー!!」」
おぉう…ここでも勇者の影が…
どうやら私たちは勇者の宿に泊まることになりそうだ。




