ワイバーン強襲!
ここから2章です。
よろしくお願いします!
西の魔王城から北の街まで竜に変身して移動中。
あまり人に見られたくないので、大外をぐるっと回って向かっている。
それはつまり、魔物がいるエリアを飛んでいるということで…
私たちの進行方向に何かがいた。
『あれ…なんか飛んでない?』
「んー小さくてよく見えないわね」
「でもどんどん大きくなっているような…」
『こっちに向かって来てる?』
まだ黒い点々のようにしか見えないけどあれ結構数がいるんじゃ…
ちょっとコースを変えてみた。
けど私たちに向かって飛んできているようで、どんどんこっちに近づいてくる。そうして次第にその全容が見えてきた。
それは竜より個体は小さいが、代わりに群れで行動する為、危険度は場合によっては竜以上と言われている空の怪物。ワイバーンだった。
『あれワイバーンだよ絶対!』
「ルコアさんが言っていたわね。1体の危険度はBだけど群れによっては危険度Sにまで跳ね上がると」
「こっち来てるよ~」
「でんじゃー」
『でも、レベル100になった初戦の相手としてはちょうどいいんじゃない?それに空中戦って初めてだし!!』
「朝日は空飛べるからいいけどね!私たちはあんたから落ちたら終わりなのよ!」
『あ、そっか。じゃあちょっとみんな私の背中に手を触れて』
「こうかしら」「触れたよ」「ん」
よし、変身魔法で3人に翼を与えよう。これで空を飛べるはずだ。
天使の羽をイメージして…発動!
3人が光り輝き、背中に翼が生えてくる。
「うわぁ!すごーい!」
「芽衣綺麗」
「これは…翼?」
『天使をイメージして変身させてみたよ。これで空を飛べるはず!』
3人がふわっと浮かぶ。どうやら成功のようだ。
「こんなところで空を飛ぶ夢が叶うなんて…」
「これで一先ず安心かな?」
「嬉しい」
くるくる空を回ってキャッキャしている。
3人ともテンションが上がったようだ。良かった良かった。
3人が飛行訓練している間も、ワイバーンは近づいてくる。
そしてついに戦闘圏内ギリギリまで来た。数は…ざっと100はいる。もっとかも。
「出番よ。宗近、つなじい」
夕陽が左右の腰に下げている剣を鞘から引き抜く。
飛びながら剣抜くのかっこいい!!夕陽かっこいいよ夕陽。
同時に2人の男性が夕陽の後ろに現れる。
「待っておったぞ」
「竜退治か。男のロマンだね」
「危なくなったら憑依して頂戴。それまでは私がやるわ」
「相分かった」
「無理はしないように」
「わかってるわよ。みんな!先に行くわね!」
夕陽がさっさと飛び去って行ってしまった。
「私は朝日の上から迎撃する」
「じゃあ私もここで頑張るね」
どうやら2人は私の上で戦うようだ。
葵は短刀を取り出して、芽衣は精霊に語り掛ける。
「空間魔法【ゲート】」
「シルフィさん。力を貸して!」」
葵は魔王城での訓練中に、空間魔法で自分のオリジナル魔法を創っていた。それが【ゲート】。勇者戦では使わなかったけど今回は使うようだ。
【ゲート】はAとBの2つの【穴】を創る。文字にすればこれだけだ。
このAとBの穴は異空間で繋がっていて、例えばAに手を入れると、Bから手が出てくるという単純なものだ。
単純だけどとっても強力だ。
葵は自分の横にAのゲートを創り、Bの穴はワイバーンの喉元に設置されている。
葵が無造作にAの穴に向けて短剣を振るう。短剣は腕ごと【穴】に吸い込まれ、ワイバーンの喉元に出現。そのまま喉笛を切り裂く。
ワイバーンは声にならない叫びをあげて地面に落下した。
「一匹目。喉が弱点」
「葵ちゃん凄い!」
『一般的な生物はほとんどが喉急所だと思う…』
そのまま出口の穴を別のワイバーンに設置し次々と屠っていく。ただ黙々と素振りしているだけなのにバタバタとワイバーンが落ちていく。葵怖!
夕陽を見るとあっちはあっちで無双していた。両手に持っている宗近と安綱で次々とワイバーンを倒していき、後ろで見ている二人が時折アドバイスしたり、不意打ちを察知して夕陽に知らせたりしている。夕陽は心配なさそうだね。
時折来るファイアブレスは芽衣の結界が完全に防いでくれているし、芽衣の精霊魔法で召喚されたシルフィもちょっとずつ敵を倒している。
……あれ。私、今めっちゃ影薄い!何かしないと!!
せっかく竜に変身しているからブレスとか吐けるのかな?
ん!んん!!あーあーあー。喉の調子を整えてちょっと火を吐くイメージでブレスしてみる。
ボゥ!っとちょっと火が出た。お、イケちゃう?やっちゃう?
ちょうど私の前に来てブレスを吐こうとするワイバーンが来た。口開けて如何にもファイアブレス打ちますよ?って態勢に入っている。
よっしゃ、ファイアブレス勝負をしてみようか!
「ギャアアアアス!!」
『負けるかあ!ファイアブレス!!』
ワイバーンがファイアブレスを放つタイミングに合わせて私も放つ。
明らかに私のほうが規模の大きいブレスは一瞬にして相手のファイアブレスを飲み込み、そのまま近くにいたワイバーンごと焼き払う。
『ふぅ』
「朝日ちゃん!火を噴くなら言ってよぉ!結界に当たるところだったよ!」
『あぁ、ごめんごめん!結界のこと忘れてた!』
「焼死一歩手前」
結界を芽衣が解除しなかったら、結界内が私のブレスで火の海になって当然その中にいる私たちは…これ以上考えてはいけない…
ちょっとしたハプニングもあったけど、みるみるワイバーンの数は減っていき、残すところ後僅かとなったところで葵が空に浮かびだした。
『どしたの葵』
「落ちたワイバーンを回収してくる」
「どうして?」
「売ったり食べたり」
『せっかく倒したからね!わかった。行ってきて葵』
「ん」
葵が地上に降りていく。ワイバーン美味しいのかな?結構数がありそうだし、売ったら結構な額になりそう。ただあまり目立つことはしたくないけれど。
さて、最後のワイバーンを夕陽が切り倒して戻ってきた。
「中々様になってきたな。夕陽の剣筋も」
「そうじゃのう。勇者との戦いで壁を越えたのう」
「憑依していた時の宗近の動きを思い出しながら戦ってみたら、予想以上に手ごたえがあったわ」
『空中で飛び回りながら戦う夕陽かっこよかったよ!』
「そう!?あ、ありがと…」
「私たち強くなったねぇ」
「ずっと城でダハクさん相手に戦ってばかりだったからわからなかったけれど、こうしてみると確かに強くなった実感が持てるわね」
『今の戦闘でレベルも2つ上がったよ』
「結果的に美味しい敵だったわね」
「そうだねぇ。あ、葵ちゃん帰ってきた」
転移で葵が戻ってくる。
『どうだった?』
「大漁」
しっかり回収できたようだ。
その後の空旅は順調で、しばらくすると大きな街が見えてきた。湯気がもくもくと上がっている。
『あれかな?』
「きっとそうだね。かなり大きい街だし」
『じゃあちょっと離れたところに降りるね』
「「「はーい」」」
人がいなさそうな高地に降り立って、変身を解除する。
今回は長時間竜に変身していたからか、急に体が小さくなって謎の不安感が。人間の体って脆いからね…
夕陽の腕に抱き着く。
「え!どうしたの朝日!?」
「ちょっと怖くなっちゃって。しばらくこのままがいい!」
「わ、わかったわ」
「いいなぁ…私たちもする?」
「ん」
身長的に葵が芽衣に抱き着くのがデフォなんだけど、いつも思うけど親子感が凄い。
そんなこんなでペアになって散歩しながら街の入り口まで向かう。
門番さんが2人いた。
また身分を証明するものあります?と聞かれたけど、今回はギルドカードを持っていたのでドヤ顔で見せた。でも最低ランクだったのをすっかり忘れていた。
か弱い女の子4人が最低ランクで旅を?とかなり怪しまれたけど、手品魔法でモーニングスターを突然出したり消したりしてアピールしたおかげでどうやら大丈夫だったようだ。
「は、はい。通っていいですよ…よ、ようこそ!北の温泉街スクーナへ!」




