さよなら魔王城。今行くよ温泉!
夕陽のアイテムはまたしても武器シリーズだった。
ただ今回は一種類ではなく、全てが違う武器のようだ。
「鉄扇、三節根、手甲鉤、デスサイズ、ショーテル、フランベルジュ、十手、警棒、ハルバード、仕込み杖…あまり聞いたことのないものばかりね」
「変わった武器シリーズかな?」
「デスサイズって何?名前が怖いんだけど…」
「あれだよ。死神が持ってるような鎌」
「ああ!あれかぁ」
「見せてもらってもいいですか?」
「ん」
葵にアイテムボックスへ送られていた武器を全て出してもらう。
初めて見る武器がズラリ。一つずつ確認していく。
鉄扇はその名の通り鉄の扇子。これを武器にするって難しくない?
三節根は三本の棒を鎖で連結させている武器。ヌンチャクの3つバージョンだけど、一つ一つの棒が長い。50㎝くらいかな。これも使うの難しそう。
手甲鉤はかぎ爪のついた武器。忍者が使っていたって聞いたことがある。
ショーテルは両刃でくねっと曲がっている。盾の上から切るとかかな?
フランベルジュは刀身が波のように揺らめいている。何でかはわからない。
十手は江戸時代の犯人を捕まえる時に使われた武器かな。
警棒は唯一日本いるときに見たことがある。警察が腰につけている武器だ。
ハルバードは斧で先端が尖っている。
仕込み杖は一見普通の杖だけど、どうやら杖の中に刀が隠されているみたいだ。怖い。
「このフランベルジュって剣はどうして刀身がゆらゆらしてるの?」
「相手の肉をえぐって、止血をさせにくくするため」
「うわぁ…なんじゃそりゃ」
「えげつないわね」
「中々愉快な武器ばかりですね。この鉄扇とか面白いです」
「これはルコアさんに似合うかもね」
うふふ調の人に使ってほしい一品だね。
「我は、このハルバードが気に入ったぞ。豪快に戦えそうだ」
ダハクさんは一番大きい武器のハルバードがお気に入りか。大きい人がこれ使っちゃったら近づけないしかなり強力っぽい。
「せっかくですから、お二人に差し上げますわ」
「いいのですか?嬉しいですけど」
「そうだな。せっかく神様から貰ったものを簡単に渡してもよいのか」
「ええ。今後も使わなそうなものですし。それに、一度見たので【武器生成】でいつでも作れますわ」
確かに、使い勝手は悪そうだよね。使う人を選ぶ武器というか。
それにしても【武器生成】便利だなー。
「そういうことでしたら、ありがたく頂戴いたします」
「ありがとうな。夕陽よ」
「いえいえ。せっかくだからみんなも選ぶ?」
「私はいいかなー。もうモーニングスターがあるし」
「私も武器はちょっと」
「十手欲しい」
「はい」
「ありがとう」
夕陽は武器ばっかり当たっているけど神様は何を期待しているのやら。
次は葵の番だ。葵の後ろから覗く。
「葵は…カップ麺か。チリトマトヌードルにシーフードヌードル、カレーヌードル、きつねうどん、焼きそばゆーふぉー、でかでか焼きそば、チキンラーメン、オメガサイズカップヌードル、担々麺、チキンパクチーラーメン、ミルクシーフードヌードル……ってなんかマニアックだね」
食べたことないのがちらほらと。
とりあえず葵に全部出してもらう。全部箱に入っていて、1箱12個入りだ。
「これは食べ物なのですか?絵が表面に書いてありますけど」
「この容器にお湯を入れると食べ物に早変わりする優れものです」
「創った人、天才だよね」
「安藤百福という人。台湾人」
「え!日本人が作ったんじゃないんだ!知らなかった!」
「開発した場所は日本」
「へぇー」
「お前たちの世界は発明家が多いな」
「そうですね。日々何か新しいものが出来ていたと思いますよ。みんな新しいことに飢えているんです」
「いつか行ってみたいですね」
「その時は案内しますよ!日本しか案内できませんが」
「せっかくだからどれか食べてみないかしら?」
「いいね!どう?葵」
「いいよ」
「食べたことないのを食べたいな」
「ミルクシーフードヌードルが気になるよ」
「食べたことないわね…でもどうなのかしら?ミルクって合うの?」
「斬新」
「クラムチャウダーみたいになるのかな?」
「じゃあこれでいい?」
「「「賛成!」」」
ミルクシーフード味を6個出して、お湯を入れる。
お湯は魔法のウォーター+ファイアで強引に作った。
3分待って…実食!
汁が白いのが新鮮だね。
んー?クラムチャウダーよりかはカルボナーラに近いかな?塩っ気が結構ある。
「美味しいね!」
「黒胡椒が効いていて良いわね」
「アリ」
「ちょっと匂いが…でも美味しいかな?」
ああ、芽衣は牛乳とか苦手って言ってたか。
忘れてたー!
「芽衣のは私が食べる」
「ありがと~」
「どうしてあの固そうだったものがこんなに柔らかいものに変わったのでしょう?不思議な食べ物ですね。美味しいです」
「うーむ。上手いとは思うがちと少ないな」
ダハクさんには小さいだろうね。持つ手が大きすぎてより小さく見える。
ずるずる食べながら皆を眺める。芽衣以外は満足そうだ。次はチリトマトに挑戦したいな。
「ふぅ。ごちそうさまでした」
「美味しかったわ」
「最後は芽衣だね」
「うん。回すね~」
芽衣は運高いから期待できるね。
あれ?私も高かったような…
「ベビーカー二個、授乳ケープ二個、おしゃぶり、鼻水取るやーつ、おむつ、おむつポット、おしりふき、防臭袋、ソフトスタイ…赤ちゃんグッズ?」
「これは私と同じでハズレだね!使い道ないし」
「そ、そうだね~」
「でも、この商品を売ったりしたら儲かるんじゃない?」
「確かに、辞書よりかは役に立ちそうかな?」
今回は夕陽と葵は当たりだったけど、私と芽衣はハズレだったね。
まぁ、地球の商品って星の数ほどあるし、役に立つアイテムのほうが少ないかな。
そう考えると私たちは結構運がいいほうなんじゃないかと思う。
それで芽衣のアイテムだけれど、授乳ケープってなんだろう?あとソフトスタイもわからない。おむつポットはおむつ専用のごみ箱だね。
「授乳ケープって何に使うの?」
「外で赤ちゃんがおっぱい飲みたくなった時に、これで体を覆い隠して飲んでもらうの」
「なるほど!ソフトスタイは?」
「えーと、赤ちゃんにご飯の時に付ける前掛けで、食べこぼしを取ってくれるんだって」
前掛けの下が窪みになっているから、食べこぼしがそこに入っていくってことだね。便利だなぁ。
「人間の子育ては大変だと聞きますね」
「竜の子育てはどうなんですか?」
「基本放置ですね。ある程度幼生体でも強いので」
「へぇ~」
「それに、滅多に子供は生まれないですし。よっぽど物好きでもなければ子供は生まないですね」
子孫を残そうって考えが無いのかな。かなり長寿らしいし。
まぁ、竜が人間みたいに子供たくさん産んじゃったら世界がヤバい。
「さて、そろそろ遅くなってしまいましたね。この辺りでお開きにしましょうか」
「そうですね。戦闘で疲れましたし。ぐっすり眠れそうです」
今日はイベント盛りだくさんでとっても満足な一日だった。
ただ、さすがに疲れたよ。
部屋に戻った後の記憶がないくらい、すぐにその日は眠ることが出来た。
そして次の日の朝。いつものように全員で朝食を取っているとルコアさんが緊張した面持ちで私たちに問いかける。
「皆さん、これからどうしますか?もしよろしければ、このままここにいて欲しいのですが」
そっか。クエストは達成したから、魔王城に残るか、街に戻るか決めなきゃいけないのか。
私としては残ってもいいんだけどね。特に不便があるわけでもないし。
「どうしよっか」
「残ってもいいんじゃないかしら」
「そうだねぇ」
「新しいクエスト来てる」
ん?クエスト?確認すると【北の街の温泉に入ろう 結晶石5個 YES/NO】となっていた。
「新しいクエストが来ているのでしたら、そちらを優先してください。でも、時間があれば葵の転移でいつでも遊びに来てくださいね」
「そうですね。わかりました!北の街に行ってみます!」
「ふふ。頑張ってください」
次は北の街か。温泉楽しみだな。
「ルコアさん、これ」
「ん?葵、なんですかこれは」
「将棋と囲碁。2人用の競技で、とっても面白い」
「あらあら。ここには娯楽が少ないので、暇を潰せるものは大歓迎です。ルールを教えてもらってもいいですか?」
「ん。先ずは将棋。ダハクさんも」
「む。我も覚えなくてはならんのか」
「2人用だから」
葵がルコアさんとダハクさんに将棋と囲碁をレクチャーしている。
ちなみに私は一応どちらもネット対戦で段位持ちだ。
「なるほど。取った駒を使うことが出来ると。奥が深いですね」
「結構複雑だな。慣れるまで時間が掛かりそうだ」
「ふふ。時間ならたくさんあるから安心なさいダハク」
「それもそうか」
その後囲碁のルールも教えて、お別れの時間になる。
城の外に出て、移動のために私は竜に変身する。
「では、また。いつでも遊びに来てくださいね」
「待っておるぞ」
「今までありがとうございました!楽しかったです!」
「「「ありがとうございました」」」
3人が私の背中に乗って魔王城を後にする。
たくさんお世話になったなー。いつかまた絶対に来よう。
さぁ、次は温泉だ!




