勇者サイド④マリィ視点
マリィ視点です。
一部、マリィの妄想で不快になる方もいるかもしれない表現があるのでご注意くださいませ
私の名前はマリィ。現在魔王討伐の旅に出ています。旅の仲間にはなんと勇者と呼ばれるレインがいます。そしてそれを陰から支えるライド。そして魔法使いの小さな女の子サシャちゃん。この4人で旅を続けています。
レインとライドはキールの街でかなりの有名人でした。街で5組しかいない最高ランクの1組。イケメン2人組で片方は勇者。人気が出ないわけがありません。
私も教会で働いていた時から二人の情報は常にチェックしていました。
初めて会ったときは5年程前です。私は幼いころから聖女として扱われ、教会で働き始めてからは毎日回復魔法で街の人々の治療をし、自分の時間はほとんど取れないほど多忙な日々を送っていました。
ある日、業務を終え、疲れを隠しながら家に帰る途中、広場で歓声が聞こえてきました。何事かと思い街の人に尋ねると、どうやら勇者がダンジョンを制覇して帰ってきたようです。
私と同じくらいの年齢と言うことは聞いていました。つまり18歳前後でダンジョンを制覇…一体どれくらい凄い人たちなのでしょうか。興味が湧き、一目見ようと思いました。
ちなみに、ダンジョンとは自然発生し、魔物を生み出す巨大な迷宮のことです。世界に複数存在し、このダンジョンを放置してしまうと魔物が増殖し、ダンジョンの外まで出てきてしまう為、冒険者と呼ばれる職業の者が中に入り魔物の数を減らしてくれています。
この魔物の増殖を減らすただ一つの方法がダンジョンを制覇することです。具体的には最奥のダンジョンコアを破壊すること。コアを破壊されたダンジョンは魔物を増やす機能を失うからです。
ただ、ダンジョンと言っても難易度が様々あり、初級、中級、上級、エクストラと4段階あります。
この難易度は何層まであるかによって決められていて、基本的に深いダンジョンほど難易度が高いです。
しかし、初級と言われているダンジョンでさえ並の冒険者では制覇することは困難だと言われています。
それをたった2人で攻略するなんて…ダンジョン最奥まで行くということはそれだけダンジョン内で過ごす時間も長くなるということ。ダンジョン内で仮眠を取らなければいけないこともあるでしょう。
休憩時は交代で見張りをするのでしょう。相手をよっぽど信頼していないと魔物が蔓延っているダンジョン内で休憩なんてできないでしょうね。どれほどお互いを理解しているのでしょうか…たくさんの困難を2人で解決してきたのでしょう。2人で…ぐへへ…
そんな考え事に耽っていると2人の姿が確認できるところまでいつの間にか移動していました。
2人とも噂に違わぬ美形です。勇者のレインは髪が黒く、真面目な感じでしょうか。ライドは茶髪でホストみたいです。2人とも長身で絵になります。
そんな2人がダンジョンに何日も2人っきりで篭り続ける…これは漫画にしなくては…顔も確認できたし。
それからも2人の活躍は何度も耳にし、その度にその活躍を想像し漫画にして教会で配布することで爆発的に同士が増えていきました。
そして現在。私は2人と一緒に旅をする機会に恵まれました!
これは…捗りますね。今描けば間違いなく最高傑作が生まれることでしょう。早く協会に戻りたい。
私の他にもサシャと言うかわいい女の子も同行しています。年齢はまだ10歳くらいでしょう。だんだん2人の娘のように思えてきました。
「お花を摘みに行ってくるです!」
「またかよサシャ!ちょっとは我慢しろ!」
「ライド。これはしょうがないことだ。ゆっくり解決していこう」
まるで家族のような会話ですね。妄想が膨らみます。
ハッ…2人がダンジョン内で食料も尽き、飲み水も当然ない。限界を迎えた2人は遂にお互いのおしっこを…
これは…流行る!!
このような話のネタを考えながら歩くこと数日、ついに草原を越え森の入り口にたどり着きました。
街から魔王城までの道のりは、草原を通り、森を抜け、山を越えた先にあります。現在森の入り口まで来たので距離にしてようやく半分弱まできたといったところでしょうか。
ただ、ここから魔物はかなり強くなり、歩きにくい地形となってくるのでここからが本番と言ったところでしょうか。
「ようやくここまで来たな」
「ああ、ここからはドラゴンの森だ。魔物も強くなるし運が悪ければ竜にもエンカウントする危険な領域だ。気を引き締めよう」
「竜ですか。来たら丸焼きにして食ってやるです」
「竜はステータスが桁違いだ。もしおしっこ中に見つけても、俺たちと合流するまで絶対に手を出すなよサシャ」
「しょうがねーです」
「戦闘が多くなるのでしたら、私も攻撃に参加したほうがいいですか?」
「ん?マリィは攻撃もできるのか」
「はい、弓での遠距離ですが。毒魔法を持っているので矢に毒を付与して攻撃可能です」
「毒の矢か。俺たちに当たらないと確信できている時なら積極的に射ってくれ」
「わかりました」
弓の練習は毎日していましたが、実践は初めてです。レインの言うように味方に当たらないような状況な時だけ攻撃し、それ以外は後方支援に徹しましょう。
そしていざ森に入ったわけですが…思ったよりも魔物と遭遇しません。たまに襲ってきたとしても攻撃的ではなく、防御に専念しているような節があり倒すのに時間が掛かります。
まるで足止め目的のような戦い方に違和感を覚えます…
「以前レインと二人で来たときはもっと攻撃的で、引っ切り無しに襲ってくるような雰囲気だったんだけどな。まるで違う森に来たみたいだ」
「そうだな。雰囲気が違う…」
「私たちの強さを感じ取って魔物が弱気になっているだけではないです?」
「それは…ありえるのか?確かに俺たち2人は前来た時よりかなり強くなっているし、マリィとサシャもいるが」
「きっとそうです!」
「こういう普段と違う雰囲気の時は突然強敵が出てきたり、思わぬトラップがあったりすることが多い。念入りに進もう」
「そうですね。この森は何か違和感を覚えます。慎重に進みましょう」
それからはいつも以上に敵を警戒しながら進みましたが、特に何事もなく一日が過ぎました。
「結局何もなしか…案外サシャの言ってたことが正解か?」
「きっとそうなのです!」
「このまま何もなければいいんだが…今日の見張りは最初がライドとマリィだったか」
「だな。よろしく頼むぜマリィ」
「はい。よろしくお願いします」
「じゃあ…テント行くかサシャ…」
「おしっこしてから行くから先行ってろです」
「…ああ」
それからレイドと二人で夜の見張りをする。
さっきの会話もそうなのですが…レインはサシャに話しかけるときいつも警戒しているような感じですよね。ライドに少し聞いてみましょう。
「レインはサシャのことが苦手なのでしょうか?」
「…まぁ、レインの数少ない弱点の一つだな。その件に関してはあまり触れてやるな」
子供が苦手とかそういうことなのでしょうか?確かに勇者が子供嫌いだと知られれば外聞が良くないでしょう。思い返してみればレインはいつもサシャに対して一歩引いた対応をしていたような気がします。
「わかりました。このことにはもう触れません」
「まぁ、あいつも完璧に見えて色々あるのさ」
「ライドはレインのころを何でも知っているんですね」
「ああ、俺はあいつについて知らないことはないぞ」
ほほう…もっと詳しく!
「お二人の面白い話などがあればぜひ教えて欲しいのですけれど…」
「面白い話か?そういう振りが一番困るが。そうだな…せっかくドラゴンの森にいるんだ。俺たちがここで以前竜を狩った時の話をするか」
それから2人の竜狩りの話を見張りの時間一杯聞いた。
長時間の戦闘 ギリギリの死闘 回復ポーションの枯渇 そして土壇場でレインが信じられない威力の攻撃を竜に叩き込み何とか勝利。と言う話をまるで映画のように語ってくれました。
死線を乗り越えた先でお互いはより相手を深く理解しそして…ぐへへへ




