魔王城暮らし!①
夜になり、パーティーが始まった(6人)。
ダハクさんがバッファローザウルスという馬鹿でかい牛?のような魔物を狩ってきた。
「よし。良い獲物を見つけることが出来た」
「大きいですねぇ」
「魔物って食べられるのかしら?」
「あら、あなたたちは魔物を食べたことがないの?ランクが高い魔物程美味しいですよ」
「この魔物は強いんですか?」
「Bランクですね」
「ごくり…美味しそう」
芽衣が食の戦闘態勢に入っている!
「しかも!私の料理スキルはLV5!火で炙るだけでさえ絶品の料理に仕上がります」
「姫の料理は何をしても旨くなるぞ」
料理スキル万歳!
「ねぇねぇ、夕陽も料理スキル取ってー」
「そうね、こちらに来てから料理をしていないし。せっかくだから美味しいものを作りたいものね」
ルコアさんが牛を包丁で解体して、塩を振って生活魔法のファイアで炙っていく。
「何事も出来立てが一番ですよ。熱いうちに召し上がれ。あぁ、ダハク?お酒を持ってきなさい」
「よし。とっておきを持ってこよう」
「いえ、私たちまだ16なんでお酒はちょっと…」
「何を言っているのだ。酒を飲むのに年齢が関係あるのか?」
「私たちが生まれた世界ではお酒は20歳からと決まっていたわ」
「そういえば、人族ではそのような決まりがありましたね。どうします?」
「うーん…」
「お酒はまずいと聞くわ。別に飲まなくてもいいんじゃないかしら」
「あら、美味しいものもありますよ。人族はアルコールがダメなんでしたっけ?」
「そうですね。体に害があるとか依存症があるとかで」
「アルコールがなければあなたたちも飲めますか?」
「ノンアルコールビールとか飲んだことありますし、大丈夫です」
「でしたら問題ないです。私がいつも飲んでいるものもアルコールが入っていませんから。ダハク」
「いつものあれですな。取ってこよう」
ダハクさんがワインを取りに部屋を出ていく。
「あの、ルコア様。このステーキ頂いてもいいですか?」
「ふふっ、様はつけなくてもいいわよ。そうね。ダハクには悪いけどいただきましょうか。おかわりはたくさんありますからね。遠慮しなくていいですよ」
「「「「いただきます!!」」」」
ステーキに齧り付く。
…うま!お肉柔らかい!肉本来の味わいと言うのだろうか。塩のみの味付けだから肉食べてる!!って感じがする。
「美味しいですね!」
「日本の和牛より美味しいんじゃないかしら」
「でりしゃす」
「日本とはどういったところなんですか?」
そういえば、ルコアさんには私たちが異世界人だって言ってなかったか。
別に言ってもいいよね?
「実は私たち、地球と言う別の世界で生まれたんですよー」
「ふふっ。珍しいですね。どんな世界だったんですか?」
「そうですねー。この世界みたいにスキルとか魔法とか無かったですね」
「あら、生活しづらそうですね」
「それがむしろ逆なんですよ!魔法がない分、科学や機械と言うものが発達したのでこの世界よりも生活水準は上です」
「ふむ。例えばどんなものがこの世界より便利なのでしょう?」
「論より証拠です。葵、ガチャでゲットした地球産のアイテムでルコアさんをびっくりさせられるもの何かある?」
何回か女神様クエストを受けていたので、ある程度は結晶石が溜まった。
私はその度にガチャを引いていたのだ(3人は50個溜める気らしいのでまだ2回分しか引いていない)。
「これとか」
「これは…椅子ですか?」
「ただの椅子じゃないですよー。まぁ座ってみてください」
「??この足のところにある窪みに足を入れればいいのですか?」
「そうですそうです。では、動かしますよ?危険はないので驚かないでくださいね?」
そう。取り出したのはマッサージチェアだ。
MPを注入して(電動のものなどは全てMPで動くように女神様が改造してくれているようだ)、スイッチを押す。
「…あっ!?こ…れは…!?ん……ぁんっ……」
「これはマッサージチェアと言う機械です。体をほぐしてくれる優れものですよ」
「ん…確かに…気持ちいですぅ…年のせいか肩が凝るので…あん♪とてもいいですよ…」
エロいな。流石むちむち魔王エロい。
それから5分間じっくり堪能した魔王様は恍惚としていた。
「ん…ふぅ。大変すばらしいものでした。体がとても軽いです。これは一つしか持っていないのですか?」
「そうですね。これ一つしかないです」
「良ければ買い取りたいのですけれど、どうでしょう?」
「うーん、私は使わないからいいんですけど。みんなは?」
「私も必要ないわね」
「私も」
「もぐもぐ…私も大丈夫です!」
「ありがとう。代わりにあとで4人に合わせた魔具を作りますね」
魔具は確か街にも専門のお店があった。中を覗いてみたけど攻撃力が3%上がるとか火属性小耐性とか微妙なものが多かったので結局買わなかったな。
でもルコアさんの魔具生成はLV5だったから期待しちゃう。
「よろしくお願いします!」
「ふふっ。私もこれから毎日あの椅子が使えることを考えると…楽しみです♪」
「あ、ダハクさん戻ってきた」
「待たせたな。姫。む?その椅子は何だ」
せっかくだからダハクさんにも使ってもらう。
「ほう…体をほぐす機能があるのか。珍しい魔具だな」
「あぁそれ魔具じゃないんです」
ダハクさんにも私たちが異世界人であることを伝える。
「面白い奴らだと思っていたが、想像以上に変わったやつらだ。ますます気に入ったぞ!」
「ふふっ。これからも仲良くしていきたいですね。ダハク」
「ああ、姫。今まで正直暇だったからな」
マッサージチェアで打ち解けた私たちはそれからもお肉を食べながら異世界についての話で盛り上がる。
「争いのない世界か。人が争わないなど考えられんな」
「まぁ数十年前までは戦争していたらしいですけどね。私たちが生まれた時代はそういったことはなかったですね」
「中々興味深いお話でした。さて、そろそろ乾杯しましょう」
ダハクさんがワインを注いでくれる。
ノンアルコールワインってあまり聞いたことがないけど。
そういうのもあるんだね。
「ワインって渋くて酸っぱいって聞いたことがあるんですけど…」
「ふふっ。騙されたと思って飲んでみてください」
えぇ…騙されたと思って飲んだり食べたりしたとき、大体やっぱり騙しやがって!美味しくない!って経験しかないんですけど私。
「どれどれ…あれ?美味しい」
「そうでしょう。そうでしょう」
「朝日が大丈夫なら飲んでもよさそうね…あら、本当に美味しいわね」
「ジュースみたい」
「ステーキにも合います!」
ジュースよりも後を引かない甘さ…と言えばいいのだろうか。
芽衣の言うようにステーキによく合う。
それからはどんどんお肉を焼いて、ワインを飲んでいくという楽しい時間を過ごした。
「……それでですね、いけ好かないバスケ部の女に朝日がこう言ったんですわ【私が勝ったら、つまらないことはもうやめなさい!】って!そしてほとんど1対5人の勝負で、ボコボコにしてやったんですの!かっこいいわぁ」
「ふふふ。夕陽は朝日のことが好きですか?」
「大好きですわ」
「そうですかそうですか」
「芽衣、これも食べていいよ」
「ホント!?葵ちゃんありがとう!もぐもぐ…美味しい!」
「これも飲ませてあげる」
「ごくごく…おいしいー!」
…あれ?みんな酔った感じになっていると思うのは私の気のせい?
雰囲気酔いというやつなのかな?
「よし。朝日、もう一杯注いでやろう」
「よしきた!…うーーーん、うまい!」
「よしよし。いい飲みっぷりだな。ワインの飲み方ではないような気もするが」
「このワインってどこで手に入れているのダハクさん」
「これか?東の魔王のところだな」
「東の魔王はどんな人なんですか?」
「サキュバスとインキュバスの王だな。美男美女でエロいことしか考えていない変態どもだ。あまり近寄りたくないのだがな。あいつらの作っているワインが姫のお気に入りだから仕方なく買いに行っておる」
「へー変態なんですね」
「いつも侍っている人族や魔族が違うからな。まぁあの変態どもなんてどうでもよい。まだまだ飲むぞ」
「よっしゃー!」
夜が更けていく…
…いつの間にか朝になっていた。
よく寝たー。どうやらあのまま寝てしまったようだ。周りでみんな寝ている。
昨日は楽しかったなぁ。今日からレベル上げするんだっけ…あの二人は強すぎるから程々にしてくださいって頼まないと。
そんな考え事をしていると起き始めてくる人たちが。
「あら、いつの間にか寝てしまったのね」
「おはようございます~」
「…ふぁぁ」
「皆おはよう。今日も一日楽しんでいこう!」
ルコアさんとダハクさんも起きてきた。
「ふふっ、起きてダハク以外の顔を見るのは何百年ぶりかしら」
「昨日は久しぶりにはしゃいだからすっかり熟睡してしまったな。姫」
「ええ、もうお昼ですね。ご飯の準備をしましょうか」
「ルコアさん、私もお手伝いしてもよろしいですか?」
「あら、夕陽。ふふっ。よろしくお願いしますね」
2人が部屋を出ていく。仲いいなーあの二人。昨日もずっと話し込んでいたみたいだし。
「ルコアさんに料理作ってもらってしまっていいのでしょうか…」
「姫の趣味だからな。構わんよ」
「昨日のお肉は美味しかったねぇ」
「そうだね。でもあの量を全部食べ切った芽衣は凄いよ…」
「あれを食べきれるわけないよ朝日ちゃん!余ったお肉はアイテムボックスに入ってるよ」
「そうなんだ。起きたら無くなってたから食べちゃったのかと思ったよ」
「もっと食べたかったんだけどお腹がいっぱいで。でね、もっと食べられるようになるスキルないかなーって葵ちゃんと探してたらね、いいスキルがあったの!だから取っちゃった」
「へぇ、変わったスキルがあるんだね。どんなの?」
「【メビウスの胃】ってスキルでね。食べ過ぎた分はHPとMPに還元してくれるんだって!」
「なんだその女性の味方スキルは!?」
「私のスキル欄にはなかった」
「ん?葵にはない?」
私のスキル欄も確認してみる。確かにメビウスの胃なんてスキルはない。
「私にもないね」
「ふむ。我も聞いたことがないスキルだ。ユニークスキルだな」
「ユニークスキルですか?」
「うむ。適正を持つ者にしか発現しない珍しい魔法だ。ちなみに、お主の変身魔法も聞いたことがないからユニークスキルだな」
「そうだったんだ!夕陽の【武器生成】もユニークスキルかもね。葵も自分のユニークスキル探した?」
「探した」
「あった?」
「もち」
「ええー何で教えてくれなかったのさ!」
「かっこいい場面で驚かせたかったから」
「で、どんなの?」
「魔法妨害」
「かっこいいじゃん!」
「だからいい場面で使いたかった」
「まぁまぁ、知ってないと戦術の幅も広がらないじゃん?」
「ご飯出来たわよ!!」
どうやら準備が出来たようだ。
夕陽がご飯を並べていく。
「おぉ、美味しそう!」
「ルコアさんの調理技術はすごく勉強になるわ!」
「ふふっ。長生きしてますからね」
「このスープ美味しい!」
「パンに塗るハチミツも甘くておいしいね」
「食べながら聞いてください。今日から修行です。先ずはダハクと4人で模擬戦をしてもらいます」
いやいや…死んでまうよ!?
「安心してください。私が創った魔具【不殺の木剣】でダハクには攻撃してもらいます。この剣で攻撃されても死ぬことはありません」
「痛そうなんですけどルコアさん…」
「朝日、楽に早くレベルが上がる方法があると思ったら大間違いです。いえ、仮に何もせずにレベルが上がったとしても、戦闘経験がなければ勇者にはいくらレベルが上がったとしても勝てないでしょう」
確かに、恐らく勇者は戦闘のプロフェッショナルだと思われる。そんな人に私たちみたいな平和に過ごしてきた女子高生が戦いを挑んだどころで勝ち目はない。相当厳しい訓練をしない限り。
「質問、どれくらいレベルは上がる?」
「ダハクとの戦闘で…と言うことでしょうか?それでしたら大幅なレベルアップが期待できます。この世界のレベルの上がり方は知っていますか?」
「何かを為すことでレベルが上がる…ですよね?」
「その通りです。勘違いしている竜も多いのですが、戦闘においてレベルが上がる瞬間は相手を殺した時ではありません。戦闘に勝利した瞬間、あるいは戦闘で何かを掴んだ時。出来なかったことが出来るようになった時などにレベルは上がります」
よくゲームとかである、モンスターを倒したらレベルが上がる!というわけではないと。
「他にもレベルが上がる要素はたくさんありますが…今回のケースですと【強者との戦闘経験】ですね。実力差があるほど経験値は多く入ります」
私たちとダハクさんの戦闘力はミジンコと恐竜くらい違うからね…
「食べ終わって少し休憩したら始めます」
私たちにとって、想像以上の地獄が始まろうとしていた…
ルコアとダハクにかき氷振舞えなかった…




