イベントクエスト開始!
翌日、今まで街でお世話になった人たちに挨拶して、食べ物をできるだけ買ってアイテムボックスに詰めてから街を出る。
女将のサーシャさんは泣いてお別れを言ってくれた。帰ったらまたあの宿に泊まろう。フェル君とリルちゃんはついて行きたそうだったけどまだ小さいからね。今回は見送った。
「さて、街の外に出たのはいいけれど。どうやって魔王城を目指すの?もう勇者たちは出て行ったみたいだから普通に行っても追いつけないわよ」
「それについては考えがあるよ」
「またお馬さんとか?」
「ユニコーンは呼ばれたがってる」
「ノンノン、今回はこうだ!」
どろんっと変身する。
「これは…ヘリコプター?」
「そんなのにも変身できたのね」
『今回は山を越えなきゃいけないからね!これで豪快に超えよう!』
「どこから声が出ているのかしら…」
「とりあえず乗ってみる?」
ヘリコプターの中は4人乗りで一応運転席はあるけど、私が操作するつもりだ。
『一応運転席には葵が座って。一番冷静だから』
「こっちでも操作できる?」
『そうそう。オートとマニュアルに切り替えられるからさ』
「わかった」
「葵大丈夫なの?運転したことなんてないでしょう」
「あるよ(エース〇ンバット)」
「あるの!?」
3人が乗り込んだので徐々にプロペラを回してゆっくり上昇していく。
『うおぉぉ!飛んだ――!』
「な、なかなか怖いわね…」
「すごーーーい!」
「テンションまっくす」
街が小さく見えるくらいまで上昇してから西に向かって進む。
しばらくして大きい山に近づいていくが、私たちには関係ない。
「おっきい山だね」
「この山を登るのはかなり大変そうね。かといって迂回するのも時間がかかりそうだし」
『勇者たちはかなり時間掛かるね』
「そうね、もしかしたら勇者が来るまで1ヵ月以上かかるんじゃない?」
「歩いてくるなら確実にそれ以上かかりそう」
実際街からここまでは遠すぎる。これが魔王を討伐できない一つの理由なのかもしれない。大軍で攻めようとすればするほど大変そうだ。
そう考えながらも無事に山を通過する。さらにしばらく進むと城が見えてきた。
「もしかしてあれが魔王城じゃない?」
「大きいね。何だっけ…外国の有名なお城。しゅば…しゅばいん?」
「ノイシュバンシュタイン城」
「そうそれ!」
「確かに似ているわね…すごい技術だわ」
どこか幻想的なお城に感嘆の声が4人から自然と出る。しばらく速度を落として城を眺めていると城から何かが出てきた。
「あれ…城から何か飛んできてない?」
「来てるわね…すごく速いわ」
「どらごん」
『「「ドラゴン!?」」』
真っ黒な竜がすごいスピードでこちらに向かってくる!
「どうしよう!?攻撃してくる?」
「されたら終わりね」
「お話…できるかな?」
「ぴんち」
ついに目の前までやってきた黒龍。しばらく向かい合う形になり、プロペラの音だけが聞こえるが黒龍が痺れを切らしたのか話しかけてきた。
『何者だ』
…さて、なんて答えよう。女神様は魔王のことを知っているようだったから、そこら辺から切り出すのがいいかな?
『私たちは女神様の依頼で魔王ルコア様にお話があって来ました』
『……その空を飛んでいるものは何だ?』
『私は変身魔法を使えるので、空を飛べる乗り物に変身しました』
『ほう、珍しい魔法だ。面白い奴だな。女神の依頼と言ったか。証明できるものは持っているのか?』
『あります』
『…よし、いいだろう。ついてこい』
ふぅ、うまくいったようだ。心臓バクバクだよ。だってこの竜強すぎだよ…
後ろからもう一度竜のステータスを確認する。
アジ―ルダハク 漆黒竜 LV186
HP835000
MP512000
攻撃力52890
防御力60140
魔法攻撃力44280
魔法防御力52900
敏捷6620
運15
スキル
闇魔法 LV5
毒魔法 LV5
ブレス LV5
竜鱗 LV5
命中 LV5
回避 LV5
索敵 LV5
スキルポイント
15800
勝ち目ゼロだ。手の打ちようがない。どんな小細工をしようが力の差が圧倒的過ぎて何も意味を為さないだろう。
3人もステータスを見てしまったためか誰も一言も発さない。
漆黒竜について行き城の入り口で降りることになった。
『ここからは歩いてもらう。変身は解除してくれ』
『わかりました』
皆を降ろしてから朝日ちゃん(人型)に戻る。
「よし。ではついてこい」
漆黒竜も人型になれるようで2Mくらいのマッチョ武将みたいな人になった。そりゃあの大きさの竜は城に入れないよね。
しばらく無言で城の中を歩いていく。シャンデリアとかインテリアとか見れば見るほど写真で見たことがあるノイシュバンシュタイン城そっくりなんだけど…
「そろそろ王座の間だ。姫はお優しいからと言って礼儀を欠くなよ」
「「「「はい」」」」
「よし。姫!面白い人間を連れてきたぞ!」
王座から立ち上がる女性を見る。
透き通るような長い銀髪。とても整った真っ白な顔立ち。身長は170㎝くらいだろうか。長身で出るところはしっかり出ていてエロい。かなりの美人なのに太ももがむちむちだ。むちむち系魔王。
「初めまして。西の魔王を担当しているルコアです。よろしくお願いしますね。星宮朝日さん、小黒夕陽さん、楠葵さん、天木芽衣さん」
「初めまして。魔王ルコア様。星宮朝日と言います」
「小黒夕陽ですわ」
「楠葵…です」
「天木芽衣です。あの、どうして私たちの名前を?」
「ふふっ。それは私があなたたちと同じスキルを持っているからですよ」
私たちが持っているスキルで名前がわかる…?ああ!鑑定か!持っている人初めて見た。人じゃなくて魔王だけど。せっかくだからステータスを見てみる。
ルコア 白銀竜 LV212
HP1147000
MP1236000
攻撃力75390
防御力68250
魔法攻撃力91590
魔法防御力74200
敏捷5850
運26
称号 魔王、真理の探究者
スキル
鑑定
闇魔法 LV5
光魔法 LV5
ブレス LV5
竜鱗 LV5
命中 LV5
回避 LV5
索敵 LV5
HP回復力アップ LV5
MP回復力アップ LV5
魔具生成 LV5
生活魔法 LV5
料理 LV5
裁縫 LV5
スキルポイント
17200
うん、世界征服できそう。
「凄いステータスですね」
「ふふっ。ありがとう。それで、どうしてこんなところまで来たのかしら?」
「女神様からの依頼らしいぞ、姫」
「まぁ、ユリレーズ様からの?」
「はい。勇者が魔王様討伐の為に今日西の街キールを出ました。私たちはルコア様と合流した後、勇者を撤退させよという依頼を受けました」
「そう…勇者が…」
「それでですね。女神様に勇者を説得してはどうか尋ねたら、止めておいたほうがいいと言われまして。詳しくはルコア様に聞くようにと」
「そうね…悲劇を生みたくないのなら説得はしないほうがいいわね」
「理由を聞かせてもらってもいいですか?」
「ええ、もちろん」
そうしてルコア様は昔起きた悲劇について教えてくれた。
今から500年ほど前、今回と同じように勇者がルコア様を討伐するためにこの城にやってきたようだ。その時ルコア様は、当時の勇者に自分が倒されると魔物が制御不能になってしまい、多くの魔物が今以上に人間たちを襲うようになってしまうことを伝えたようだ。
初め勇者はそのことを信じず、戦闘になったようだ。だがお互い強さが拮抗していたため、なかなか勝負はつかず、その分接する時間も増えたため徐々にお互いについて理解していったらしい。そして勇者と魔王が出合ってから数日後、ようやく勇者はルコアを信じることにした。
勇者はその後数日間城で生活し、街に戻って魔王と敵対する必要はないことを大々的に公表することを約束してくれた。
そうして勇者は帰っていったのだが、その数か月後、人間の軍隊がやってきた。
勇者は約束を守らなかったのだろうか…いや、彼はそのような人間ではない。だがそれだと現状が説明できない。ルコアは軍隊の中にいた一人の人間を捕まえ問いただした。なぜ攻めてきたのかと。その兵士は怒りを滲ませながら答えた。
「お前が勇者様を洗脳したからだ。これは報復だ」と。
ルコアはその兵士が何を言っているのか理解が出来なかった。他の兵士に聞いても同じようなことしか言わない。それどころか耳を疑うような情報が出てきた。
街の領主が、魔王を倒してはならないと語る勇者を人族の反逆者と断定し、処刑したという情報。
私を討伐に来た軍隊はみな勇者を慕っていた者たちで構成されていた…
ルコアはこの時人生で初めて怒りの感情を覚えた。愚かな人間に。初めて出来た友と呼べる人間を謂れのない理由で殺した街の領主を。
ルコアは攻めてきた人間たちをダハクに任せ、自分は街へと飛び立った。その後街を全力のブレスで壊滅させ、城へと戻った。攻めてきていた人間はダハクがうまく追い返していた。
それから500年、壊滅した町はキールの街という新しい街になり、今また新しい勇者が私を倒しに来るという。
「私は同じ過ちは繰り返したくないわ。だから勇者にはかわいそうだけど説得よりも敗北して帰ってもらったほうがいいわね」
…確かに、そんな歴史が過去にあるのなら仮にレインを説得できたとしても街に戻って処刑されてしまうかもしれない。
「そう…ですね。それなら勇者と戦ってしまったほうがいいでしょう。私は勇者とルコア様、二人のステータスを確認しましたがルコア様が負ける要素はないですし」
「そのことですけどね。私は負けるかもしれません」
「え!?なんででしょうか?」
全てにおいてこの魔王は圧倒的だ。レインが100人いても負けないと思うけど…
「確かにステータスでは私が勝っているのでしょう。ですがこの世界にはステータスでは測れない力があります。これを私は特攻ダメージと呼んでいます」
「特攻ダメージ…ですか?」
「やはりご存じなかったようですね。ではなぜ私に負ける要素があるのか、順を追って説明しましょうか?」
「お願いします!」
「ふふっ。例えばですね…あなたたち人族は魔物に対して攻撃を行った場合、ダメージが2倍入るようになっています。これが特攻ダメージです。種族や称号によって特攻ダメージが入る相手は変わっていきます。ここまでは理解できますか?」
なるほど。私の攻撃力が10だとすると、魔物に攻撃するときは20ダメージ与えることが出来るわけだ。でもこれはステータス上では表示されない…ということか。
「なるほど」
「(葵ちゃん、後でもう一回教えてね)」
「(わかった)」
芽衣…
「ふふっ。では続けますね。問題の私と勇者の相性ですが、特攻ダメージのせいでかなり悪いです。まず勇者の称号を持つ者は3種、特攻ダメージを与える相手がいます。それが、魔王・竜・闇属性の相手に対してです。しかも特攻ダメージは3倍。お気づきでしょうか。驚くべきことに私は勇者の特攻三種族に全てぶっ刺さりやがります!これだけで通常ダメージが3×3×3倍で27倍(笑)入ります。さらに、もし光魔法を使ってこようものなら更に倍率ドン!54倍ダメージです」
54倍って…レインの魔法攻撃力が確か3500くらいだったから…189000ダメージ!?確かにルコア様の魔法防御力を突っ切って大ダメージだ。
「それにユリレーズ様はあなたたちに【私と合流した後、勇者を撤退させよ】という依頼をしたと言っていましたね。この言から、ユリレーズ様もあなたたちに戦闘を期待していると思います」
「そう…なんですかね」
「ダハクも先ほどの特攻ダメージの観点から言って、ぶつけると最悪負けてしまい勇者を大幅に強化させてしまう結果になりかねません。ここはあなたたちを頼りたいところですが…4人とも弱すぎです!よわよわです!勇者がここに来るまでどれくらいですか?」
よわよわ…確かにそうだけどさあ、魔王様ストレートすぎますよ!
「そうですね…1か月はまだ掛かると思いますけど」
「ふふふ、では勇者が来るまで修業しますよ!」
「「「「ええええええ」」」」
「魔王様の手下的な人はいないんですか?」
「私の手下の主力は竜たちですが、負けて勇者たちをどんどん強くしてしまうと思います。なので竜は戦闘を避けて、出来るだけ弱い魔物をけしかけて時間稼ぎをする作戦でいきます。他に何かありますか?」
「いえ、今のところは…」
「そうですか。しばらく城で寝泊まりしてもらいますよ。ふふっ。今まで竜の中でも人化できるのは私とダハクだけでしたから。ここ数百年寂しかったので楽しみですね。ダハク!今日はパーティーよ!」
「姫!最高の食材を今から俺が狩ってくるとしよう!」
「お願いね!」
お二人のテンションが高い…でも数百年この大きな城で二人きりか。私なら耐えられないな。とりあえず今日はアイテムボックスに作り溜めしていたかき氷を2人に振舞ってあげよう!
こうして私たちの魔王城での生活が始まった。




