勇者サイド①
ちょっと勇者視点の話を挟みます。
物心ついたときに、自分のステータスを初めてチェックしたら名前の横に勇者と表示されていた。スキル欄にも【光魔法 LV1】が初めからあった。両親にそのことを話すととても驚いて、祝福してくれた。
それからは多くの人に期待され、その期待に応えるために身体を鍛え続けた。
勇者とは、人々の希望の象徴なのだそうだ。高い戦闘能力で魔を滅することに長けた存在。
冒険者に登録してからはギルドでも一目置かれ、ギルドマスターから直接依頼を受けたことも何度かある。
ただ、自分は一人じゃない。幼馴染のライドがいつも隣で戦ってくれていたから自分はここまで頑張ってこられたのだと思う。
ライドは見た目がチャラチャラしていて誤解されやすいがいつも俺のことを考えてくれている掛け替えのない相棒だ。俺が戦いやすいように盾役の技術を学び、俺以上の訓練をしている。彼以上の努力家を俺は知らない。
俺たち2人は勇者パーティーとしてギルドに登録してから魔物を狩って狩って狩りまくっていたらいつの間にかAランクになっていた。先日もオークの集落が出来たということで俺たちに依頼が来て、何とか壊滅させてきたところだ。若い女性が何人も捕らわれており、既に事切れている人もいた。
もっと強くならなければ…と考えていたところに、この町の大臣であるジェファールがやってきた。
「勇者レイン。この度のオーク集落の迅速な解決。見事であった」
「ジェファールさん。お久しぶりです。これからも精進します」
「うむ、その件もあって、キール様がお会いになりたいそうだ。明日に登城してもらいたいのだが大丈夫か?」
キール様というのは、この街で一番偉い領主様のことだ。
「はい、大丈夫です。ライドもですか?」
「そうだ。二人で10時に来てくれ。よろしく頼む」
そう言ってジェファールは去っていく。褒美とかをくれるのだろうか…今まで一度のこんなことはなかったけど…とりあえずライドにこのことを伝えないとな。
「何?キール様が俺たちに会いたがってる?」
「ああ、明日の10時に城まで来て欲しいだってさ」
「やったじゃないかレイン!きっと褒美がたくさんもらえるんじゃないか?」
「守れなかった人もいるのだからあまり貰いたくはないけどな」
「あのなぁ、何度も言わせてもらうが、全部が全部俺たちの手で救えると思うな。自惚れんじゃねえ。しょうがないことだってこの世界にはたくさんあるんだよ。その中でお前は十分やってる。もっと自分に自信もて」
「…わかっているさ」
「まぁいいさ、そういうところも含めてお前のことを気に入ってるんだ。これからも頑張ろうぜ相棒」
「あぁ、よろしくな!」
その後はいつも通りギルドに併設している酒場で食事をして家に戻った。
キール様に会うのは俺が勇者だと発覚してから一度会っただけなので10数年ぶりだ。礼儀とか気にする人だっけ?だとすると不味いかも…若干不安になりながら眠りにつく。
翌日、ライドと城門まで歩く。わざわざ警備隊長が出迎えてくれる。
「これはレイン様、ライド様。お話は伺っております。どうぞこちらへ」
客間に通され、しばらく寛いでいてくださいとのこと。
「緊張してきたな。今更だがこんな格好でいいのか不安になってきた」
「そうだな。こういう時のための服を買っておけばよかった…」
俺たちはいつもの冒険用の服を着ていた。これくらいなら問題にならない…よな?礼の仕方はどうだとか二人で話し合っていると大臣のジェファールが部屋に入ってくる。
「待たせてすまなかったな。キール様の準備が出来たからついて来てくれ」
「「はい」」
大臣の後をついていく。そのまま3人で謁見の間に入る。キール様に視線を向けると、領主にしてはかなり若く見える。40くらいだろうか。しかし鍛えているのか武人としてもやっていけそうなくらい強そうだ。
「待っていたぞ。勇者レイン。そしてライド。先日のオーク集落の件、見事だ」
「ありがとうございます。キール様」
「ああ、それで今回わざわざここまで来てもらったのは、お前たちの実力を信じてある依頼をするためだ」
「依頼…ですか?」
褒賞のために呼んだのではなかったか。それにしてもキール様直々の依頼とはいったい…
「そうだ。この依頼が成功すればSランクに昇格することを私が認める。さらに報酬も期待にそうものを必ずや用意しよう」
「それは…聞くのが怖いですがどんな依頼なのでしょうか」
ライドの言う通り破格の報酬ということはその分難易度は高いはずだ。
「勿体ぶってもしょうがないから端的に伝えよう。ずばり、西の魔王を討伐してもらいたい」
「…キール様、いくらなんでもそれは」
「もちろんタダでやってくれというわけではない。ジェファール、あれを勇者レインに」
「は」
ジェファールさんがどこから出したのか一本の剣を俺に渡す。持っただけでかなりの名剣だということが分かった。
「それは先日偶然手に入れたものでな。剣を振ると火魔法が発動するとんでもない剣だ。属性剣と言うらしい。その剣を先払いで渡しておこう」
剣から火魔法だって?そんな常識はずれの剣は聞いたことがない。もし今の話が本当ならかなり強力な武器だ。
「そしてもう一つ。マリィ!出てこい」
呼ばれてマリィと呼ばれた少女が出てくる。
俺はこの人を知っている。街で聖女と呼ばれている人だ。回復魔法の使い手でその腕は歴代の聖女と呼ばれる者の中でもトップの実力があると言われている人だ。
年は自分より年上だと思う。だが美人というよりかは可愛らしいタイプの人だ。
キール様にどことなく似ているがもしや…
「気づいたかもしれんがな、マリィは俺の娘だ。マリィ、挨拶を」
「キール・マリィと言います。回復魔法が得意です。よろしくお願いいたします。レイン様、ライド様」
「マリィを呼んだのは魔王討伐のパーティーに加えて貰いたいからだ。魔王討伐の道のりは長い。必ずやマリィの力が必要な場面も出てくるだろう」
確かに、魔王討伐を俺たち二人で行うのは流石に荷が重い。ヒーラーがいてくれればかなり楽になることは間違いない。
「回復魔法を使えるマリィ様が仲間になってくれるのであればかなり心強いですが、マリィ様はよろしいのですか?」
「はい。是非パーティーに加えていただきたいです。ただ、私はお二人の熱い友情に割って入る気は毛頭ございません。どうか私のことは空気のように扱っていただければ。今まで通りお二人のことを陰ながら見守らせていただく所存ですので、ケガをしたときに自動で回復する機能が付いたという感じで思っていただければと思いますはい」
あれ?思っていたような反応じゃないぞ…と言うか何を言っているんだこの人は?
「パーティーに入っていただくからには仲間として接するつもりです。ですから自分のことを空気などとおっしゃらないでくださいマリィ様」
「そうですよ。これからよろしくお願いしますよ。マリィ様」
「わかりました。よろしくお願いしますね。仲間として接してくれるなら、様ではなく呼び捨てで結構ですよ。レイン、ライド。………ふふ、これからはいつでも近くでお二人の掛け合いを見ていられるのですね…幸せです。この旅の中でレイ×ライなのかそれともライ×レイなのか、真実はどちらなのかを見定めましょう」
えーと後半は何を言っているのかちょっと聞き取れなかったが、これからしばらく一緒に旅をする仲間だ。徐々にマリィのことを知っていければいいか。
そんなことを考えているとキール様が再び話し出す。
「最後に、アイテムポーチだ。これはいくらでも物資を収納できるこの城の宝物庫にある宝の中でも一番の品物だ。これも先払いで渡そう。…だが、無理やりこの依頼を受けろということではないことを先に明言しておこう。さすがに危険すぎる依頼だからな。どうする?勇者レイン」
アイテムポーチは迷宮の宝箱でしか手に入らない。しかも最深部でしか手に入らない超レアアイテムだ。
これで属性剣、アイテムポーチ、そして娘のマリィ様の同行。すでに十分すぎる報酬だ。その分今までで一番危険な依頼であることは間違いないが。
しかし、俺は勇者だ。この依頼は受けるべきだろう。だが、ライドは勇者ではない。命の危険を冒してまで俺にこれ以上ついてくる必要はない…そう思いライドを見る。
「レイン、俺はお前が行くって言うなら迷わずついていくぜ。お前だけに任せるのは心配だからな」
ハハッ、相変わらず人のいいやつだ。
「キール様、一つ聞きたいことが。よろしいですか?」
「言ってみろ」
「魔王を倒せば、世界は平和になるのでしょうか」
「魔王は東西南北に居ると言われている。西の魔王を倒しても完全な平和は訪れないだろう。だが、確実に世界平和の第一歩になることは間違いないだろうな」
「……依頼、お受けいたします」
「そうか…よろしく頼む。いつ出発する?」
「そうですね…物資や装備の準備があるので早ければ2週間後には発とうかと」
「わかった。出発するときは街を挙げて盛大に見送ろう」
こうして俺たちは準備を万全に整えてから魔王討伐の旅に出ることになった。
出発する前日はお祭り騒ぎで、この依頼がどれほど重大なものかを改めて認識した。
そうして翌日、街を出る直前に一人の幼女が絡んできた。
「話は聞かせてもらったです!その魔王討伐に私もつれていけです」
「…きみ、親御さんは?一人でこんなところに居たら危ないぞ?」
「私はこれでもAランク冒険者です!サシャという名前に聞き覚えはないです?」
「お前があの 全属性幼女 サシャか。最速最年少でAランクまで上り詰めた天才魔法使い。しかもソロで。実力は本物だろう。どうする?レイン」
……実は俺はサシャのことは以前から知っていた。だがここは知らないフリをする。
「その顔…さては信じていないです?なら、刮目してみるがいいです!【絶炎収束】!」
サシャがいきなり空に向かって大魔法をぶっぱなしやがった!
炎のレーザーは雲を突っ切ってそのまま空へ空へと向かっていく。
「どうです?仲間にしたくなったです?」
「お前がヤバい奴だということはわかった。あとな、俺は今回の戦いに君みたいな幼い子を連れて行くわけにはいかないと思う」
「確かにヤバい奴だがな、レイン。実力は今見た通り本物だ。少しでも成功確率を上げるためにはついて来てもらったほうがいいんじゃないか?マリィの意見は?」
「…私も一緒に戦っていただいたほうがいいかと。レインの言うようにサシャさんはまだ幼いように見えますが、この街を代表するAランク実力者。強い者に年齢は関係ありません。それに今回の戦いは敗北が許されない戦いです。戦力は多いほうがいいでしょう」
反対1、賛成2か……断る理由も弱い。
「そうだな…一緒に来るか?サシャ」
「モチのロンです!魔王は私がブッコロしてやるですよ!」
こうして俺たち4人の長い旅が始まった。
だが、この展開は予想していなかった。非常にまずいぞ……
なぜなら俺はロリコンなのだから……




