第9話:パスタランチ
いつも【日常のグルメ】をお読みくださっている読者様、週に1度の投稿で申し訳ありません。
1話完結の当作品の更新が、自分で考えていたよりも大変でありましたので、このようなペースになりました。
今後とも宜しくお願い致します。
【12時のランチタイム】、それは働く者にとって朝の通勤における満員電車と並ぶの戦いの時。
本来であれば、混み合う店を避けて安くてボリュームのある店に向かいたいが、今日はとある行列に並んでいる。
「今日は少ない方ですね。」
「これでも少ないの?」
「そうですよ、30分待ちなんて当たり前ですもん。」
目の前では北野・竹永・尾野さんの3人がこの列について話をしている。
事の始まりは昼メシを食いに行こうとした俺に北野が付いてきて、それを見た尾野さんが加わり、いつの間にか竹永が【いた】のだ。
若手3人の意見により、近くのイタリアンに行く事に決まったが、その時点で12時10分になっていた。
列に並んでから10分以上が経ち、もうすぐ店内に入れそうだが、俺達の後にはまだ行列が存在している。
(最後尾の人は1時までに職場に戻れるのか?)
他人の心配よりも自分のメシだ。
もうすぐ12時30分になるが、腹が減ったよ…。
普段ならば、そろそろ食べ終える時間だが、今日はまだ店にすら入っていない。
行列に並んでいるのでタバコすら吸えないこの状況。
(何やってるんだろう…)
何だかこの瞬間がとてつもなく虚しく感じる。
3人は飲みに行く計画を立てている様だが、この列に苦痛は感じていない様だ。
この行列には女性が多い。8割は女性客だろう。
限られた1時間という尊い時間を使ってまで、若い女性はどうしてイタリアンだのカフェメシだのと、見た目に拘った料理に集まるのだろうか?
俺には行列の先にあるイタリアンよりも、天ぷらやおにぎりが並ぶセルフのうどん屋の方が性に合っているよ。
やっと店内に入り、メニューを眺める。
パスタセット・ピザセット・リゾットセットの3種類が目立つ。
「ここのピザは美味しいから注文が立て込むと提供に時間がかかりますよ。」
竹永、お前詳しいな。
「そうなんですよ。私のオススメはパスタですもん。時間があったらピザですけどね。」
「なら今日はパスタだな。ピザはまたの機会にしようか。」
パスタセットのパスタは……、トマト系・クリーム系・オイル系・その他か、種類が多いな。
ランチでこんなにメニューが豊富で大丈夫なのか?
子供の頃に食べてたパスタって、せいぜい5~6種類だったが、最近はバリエーションが豊富過ぎて逆に困る。選ぶのが大変だ。
ベースになるソースは同じなのに、具材が違うだけで膨大な数のメニューが並ぶのだ。
俺はそこまで求めてないぞ。
給食のミートソーススパゲッティー美味かったよな。
「パスタの種類が多くて迷うな?」
「そうですよね?私もいつも迷うんですよ。藤原さんはどんなパスタが好きなんですか?」
「基本は何でも食べるけど、久しぶりにクリーム系にしようかな?ペペロンチーノも好きだけど、仕事があるしね。」
「藤原さんは平日にニンニクをたくさん使う料理は控えてますもんね。」
「北野は覚えてたか。」
「勿論ですよ。自分も真似してますからね。」
「藤原さん達は普段、にんにくを控えてるんですか?」
「まあね。急にクライアントに会う事もあるし、口臭がにんにく臭いって喜ばれる事じゃないから。あからさまににんにくの多い料理は控えてるよ。」
「格好いいですね。」
そんなに大層な事じゃないから。
「早く注文してしまおう。」
「そうっすね。」
尾野さんが少し迷ったが、男3人は早く決まった。
10分も待ってはいないが、料理が来る頃には残りの休み時間が気になりだす。
「さっさと食べようか。」
「はい、あんまり時間が無いです。」
「良い匂い。いただきます。」
「いただきます。」
俺は海老とほうれん草のクリームパスタ大盛、北野はきのことベーコンの和風パスタ大盛、竹永はペスカトーレ、尾野さんは白身魚のクリームスープパスタだった。
パスタのセットには、お代り自由のパンとミニサラダが付いていた。
ランチで行列が出来るだけあって、流石に見た目はお洒落だな。問題は味だ。
ふー、ふー、パクッ
うん、ちゃんとクリームパスタだな。
カルボナーラ程の濃度はないが、アッサリとしたやさしい味だ。牛乳の量が多いのかな?重くない。
麺は手作りの生麺だからモチモチとした歯応えと、小麦粉の甘みとソースのやさしい甘みが感じられる。
生麺は乾麺よりも茹で時間が短いから、混雑時にはスムーズに数を捌ける。
業務用の冷凍麺は茹で時間が1分もかからず、とても楽だが元価が高い。
ランチで利益を確保するなら麺は手作りだよな。
ソースの絡んだほうれん草が美味い。そういえば、ほうれん草を食べたのって、いつ以来だ?思い出せん…。
自炊すると言っても、所詮は男の1人暮しだからほうれん草なんて野菜の出番は少ないのだ。
海老が大きくてプリプリで美味い。海老料理にハズレ無しだ。
海老フライ・エビチリ・海老の天ぷら・塩焼き、海老って本当に美味いよな。
セットのパンはオーソドックスなパンとクルミパンだが、パンをソースに浸せば無限にお代りしてしまいそうだ。
パスタを啜るのはあまり良くないが、家ならば豪快に啜って食べていただろう。
そう思ったら、少し可笑しくなった。
クルクル、パクッ
クルクル、パクッ
美味いよ、普通に美味いけど待ち時間がなあ……。
「ランチでもシッカリ作ってるな。」
「本当ですね。バター醤油の味付けが絶妙ですよ。」
「ピザも食べてみたいですね。」
「いっつも並ぶから、時間を気にして食べるのも大変ですよ。」
「尾野さんはよく来るの?」
「週に1回は来てますね。期間限定のパスタも多いんで飽きませんよ。」
確かに尾野さんが注文したのは期間限定のパスタだった。
白身魚は鱈かな?味が気になる。
期間限定メニューは他にも、秋鮭の味噌バターパスタや6種類のきのこのクリームパスタなんてのもあった。(美味そうだな)
落ち着いて食べられないのが残念だが、確かに美味い。
結局、4人で店を出てから早歩きで会社に戻った。
(明日は牛丼にしようかな)
昼休みに行列はツライですね。
皆さんはどんなパスタが好きですか?