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第6話:居酒屋

1話完結の話は分量が多くなりますね。

「お疲れさん。」

「お疲れさま。」

「「「お疲れ様でーす!」」」


カチン‼


ゴクッゴクッゴクッ!


「ふー。」

「けっこう混んでますね。」

「金曜だし、オープン割引きやってますからね。」

「予約しといて良かったですね。」

「そうね。」



今日は金曜日。死語で言うところの【花金】だ。


職場のメンバーで新規オープンの居酒屋に来た。オープン記念で全品20%引きらしい。


店内はメッチャ混雑している。


場所は会社の近くで、駅はすぐそこだ。


何人かに声をかけたらしいが、集まったのは5人。

居酒屋に行くならこれぐらいの人数でいい。6人以上になると席の確保が大変になる。


メンバーは俺の他に北野・今井・今井が面倒を見ている【竹永】・事務の【尾野】さん。


竹永と尾野さんは今年入社の同期で、北野の1年下になる。


発起人は尾野さんらしく、北野と共に誘われた。


課長には俺から声をかけたが、


「行けるかわからんな。誘ってくれてありがとう、行けたら行く。」


と、言って5000円渡された。


俺は知っている。課長は来ない。

あの人は会社の飲み会には参加するが、個人的な集まり等には参加を控える。


理由は簡単。上司がいたら楽しめないだろうと、気を使って参加しないのだ。

参加しない代わりに、カンパしてくれる。その5000円だ。


良くできた上司だよ。まったく。


「課長は来れたら来るって。一応、金は預かってる。」

「やったー!」

「ありがたいですね。」

「ウチの課長はイイ人ですね♪」

「課長はいつも通りね。」


今井は課長の事をわかっているな。


「取り敢えず何か注文してくれ、腹が減った。」

「そうですね、何にしますか?」

「唐揚げは外せませんね。」

「私はサラダとかをお願いします!」

「適当にお願い。」


仕事終わりで腹が減ったのは本当だが、ここは若手3人に注文を任せようと思う。今井も同じ考えの様だ。


1人で呑むのならば、好きなモノを頼んで自分のペースで楽しめばいいが、職場のメンバーとはいえ飲み会だ。

5人が満足してスタート出来る注文が出来るのか、俺と今井はこの3人を試そうとしているのだ。


1発目の注文は大切だ。


今日は店内が混んでいて、オーダーも殺到しているだろう。

さっきメニューを見たが、スタンダードな居酒屋メニューから、お洒落な今時の料理まで豊富な内容だった。


ここで変に凝った料理や、手間のかかる料理を注文する様では社会人としては頂けない。

まずは無難でいいから、確実なメニューのチョイスをして欲しい。


そこをクリアして、ベターな品を注文出来るかを俺と今井は見たいのだ。


俺達は食品関係の会社に勤め、他の部署では飲食店も運営している。

店の裏側を知る者として、この混雑の中でスムーズに料理が出てくる様な注文が出来るか、3人には悪いが試させてもらう。



結果は

・枝豆×2

・唐揚げ

・チーズフライ

・焼鳥盛合せ×2(塩・タレ)

・温玉シーザーサラダ

・刺身5種盛合せ

・だし巻き玉子



だった。上出来だよ!


完璧な居酒屋メニューだ。だからこそ良い。

若手に任せたから、突拍子もないモノを頼むかと心配したが大丈夫だった。


焼き鳥は多少なりとも時間はかかるが、スピードメニューの枝豆に、店の力量を計る刺身盛りを注文したのは誉めてやりたい。


オープン直後とはいえ20%引きのセール中だ。これが吉とでるか凶と出るかだ。


普通ならば、オープン直後の金曜日なら気合を入れて良い魚を仕入れるが、20%引きで仕入れの質を落としているかもしれない。刺し盛りで判断しよう。


2杯目の生ビールを飲み始めた頃、枝豆とサラダがきた。


女性はどうしてこんなにもシーザーサラダが好きなんだろうか?

俺はあまりシーザードレッシングが得意ではない。嫌いではないが得意ではない。味が濃いのだ、野菜の味がしないよ。


枝豆をかじりながらビールを飲んでいると、


「藤原さん、どうぞ。」


尾野さんがサラダを取り分けてくれた。


「ありがとう。」

「いえ。」


は~、枝豆が美味い。


よく見ると、サラダは竹永が取り分けていた。

尾野さんは皿を俺に渡しただけだった。


「どうぞ!刺身の5種盛りです!」


店員さんは元気でいいね。店に活気があるよ。


5種盛りの内容はマグロ・ハマチ・タイ・サーモン・イカだった。

オーソドックスな内容だが、個人的にはタイとイカに注目だ。この5種類で店の質を確かめるならタイとイカだろう。


「私、サーモンが大好きなんです。」

「僕も回転寿司ならサーモンが1番ですね。」

「自分もサーモンかマグロが1番かなぁ。」


今の回転寿司ではサーモンが1番人気らしいな、一昔前はマグロだったのに。


「じゃあ、タイとイカを貰うから後は好きに食べてくれ。」

「私はハマチとタイとイカを貰うわ。」


刺身は3切れずつだったので、俺と今井が先に取った。


タイは新鮮で身がシッカリとしていて美味かった。(関西の寿司や刺身は身がコリコリとシッカリしたモノが好まれるのだ)

イカも歯触りが良く、甘くて美味かった。


どうやらこの店はオープンキャンペーン中でも、仕入れに手は抜いていない様で好感が持てた。


「20%引きのわりに美味しいわね。」

「そうみたいだな。期待できそうだ。」

「ええ。」


そうこうしていると、唐揚げとチーズフライにだし巻きがきた。


唐揚げは珍しい事にカレー塩が別皿で付いてきたが、今日はあまり出番が無いだろうな。


アチッ!


熱々の唐揚げは確かに美味かったし、ビールにもあったが、カレー塩を付けて食べたくなった。後で追加しようかな。


チーズフライは中がトロトロで女性陣には好評だったが、個人的には白ワインが欲しいところだ。


3杯目の生ビールがそろそろ終わる。飲み物を変えようか。

酎ハイにするか、日本酒にするか。


熱燗だな。


「北野、料理の追加と熱燗を頼んでくれ。」

「わかりました。」

「私は白ワインをお願い。」

「スミマセーン!」

「はい!」


若手男子2人は生ビール、尾野さんは生搾りクレープフルーツサワーの注文。

料理の追加は唐揚げ・サイコロステーキ・生春巻・山芋のふわふわ焼きの4品だった。


2回目の注文としても良い感じだ。


唐揚げを追加した竹永は、なかなか見所があるのかもしれない。1人あたり唐揚げ1個は寂しかった。

北野が山芋の料理を頼んだ時は「女子か!」と、突っ込みそうになったのは、俺だけではないと思いたいな。


追加の飲み物が来たので、冷めない内にだし巻きを食べよう。


ホフホフ、は~。


たっぷりの出汁を含んだこの美味さ。たまらない。


すかさず熱燗。


ふ~。幸せだ。


昔、母が弁当に入れてくれた甘い卵焼きは大好きだったが、居酒屋のだし巻き玉子は別格だ。プロの味だからな。

家でだし巻き玉子に挑戦したことも何度かあるが、上手く巻けないのだ。出汁の量を少しにしてやっと巻ける程度。それ以来、素直に外で食べるようにした。


「藤原さん、どうぞ。」

「ああ、ありがとう。そんなに気を使わなくてもいいよ。」

「これくらい全然ですよ~。」


飲み会の席で、尾野さんには何度か絡まれている。


尾野さんは噂によると、イイトコのお嬢様という説がある。

確かにちょっと天然な気はあるが、噂の真偽は定かではない。未だに門限が22時という事が、噂を否定出来ない所以でもあるそうだ。


「焼き鳥です、お待たせしました!」


「串から外しますね。」

「あ、私も。」


竹永と尾野さんがそれぞれ焼き鳥の串を外しにかかる。


竹永は気を使って、色々と動いてくれるが、北野は何にもしないよ。先輩面してるのか?


この辺はたぶん、今井が教え込んだのだと思う。

今井はけっこうその辺りにうるさいのだ。


(俺もちゃんと教えようかなぁ)


下手に北野が目上の人と食事でもした時に、何も出来なかったらコイツが可哀想だ。俺の今後の課題にしよう。


おっ!


つくねが美味い。手作りだな、凄く柔らかい。


おーー!


肝がレアだ‼素材に自信があるんだろう。


美味くて嬉しいね。酒が進む。


焼き鳥の盛合せを塩とタレの両方で味わえるのは、何人かで飲みに来たときの利点だな。

1人ではこんなに種類を頼めない。


「お待たせしました!唐揚げとサイコロステーキです!鉄板が熱くなってますのでお気をつけください!」


確かに鉄板がジュージュー言ってる。


パクッ、熱!


赤身か。筋もなくて旨いよ。


「焼き鳥も美味かったし、サイコロステーキも安いのにイケるな。」

「肉が美味いですね。後で追加しますか?」

「任せる。」


サイコロステーキが旨いよ。ワインでもよかったな。


カレー塩で唐揚げだ!


あっち!


ハフハフッ!


いいね!カレー塩で唐揚げもいいね。


「藤原さん、生春巻もどうぞ!」

「ありがとう。尾野さんも食べてる?」

「はい!食べてます!お酒お代わりしますか?」

「じゃあ頼むよ。」

「わかりました、スミマセーン!」


悪い子じゃないんだがなぁ。もうちょっとほっといてくれるとありがたい。


「尾野さんって、甲斐甲斐しいわね。」

「そうだな…。」


トゲのある言い方だな…。



そろそろ腹も膨れたな。時間は…、もうすぐ21時か。


「尾野さん、時間は大丈夫?」

「ホントだ!デザート頼んでいいですか?」

「好きなの頼みな。」

「じゃあ、自分はご飯もので…」

「あ、僕も。」



尾野さんはフレンチトースト、追加でイカの一夜干し・サイコロステーキ・高菜チャーハン・明太シーフードピザ・焼き鳥丼を頼んだ。

ちなみに、焼き鳥丼は今井が1人で食べるそうだ。





イカの一夜干しにマヨネーズ、それに熱燗で俺は充分に幸せだ。


相変わらず今井は食欲旺盛で、気持ちがいいくらいに食べる。


時々、北野と竹永がアニメやゲームの話をしていたが、耳をダンボにしつつ、スルーした。


俺のオタク趣味は秘密だ。


「藤原さんって、休みの日は何をしてるんですか?」

「昼まで寝て、録画したテレビを見るだけだよ。」


これは本当だ。テレビの内容がアニメ中心なだけさ。


「観たい映画があるんですけど、一緒に行きませんか?」

「皆で行くか?」

「何で皆で休日に集まって映画なのよ?」


今井、助けてくれ!わかるだろ?


「ごめんなさい、私そろそろ…。」

「いいよ。お疲れさん。」

「いくらですか?」

「ちょっと待って…。」


今井と2人で伝票を確認した。今のところ16000円ちょいか。


「2000円でいいよ。」


課長の援助もある。尾野さんは2000円でいいだろう。


「安くないですか?」

「課長の援助があるからね。」

「わかりました。課長にお礼言っておきますね。」


うん、そうしてくれ。






その後、飲み放題の時間も終わり、デザートを食べて店を出た。


ほろ酔いで気持ちいい。


高菜チャーハン、美味かったな。




駅のホームで解散したが、今井とは方向が同じなので、同じ電車に乗ったが……



「ねえ。」

「どーした?」


「尾野さんの事、どうするの?」






………酔いが覚めた。

皆さんの好きな居酒屋メニューは何ですか?


居酒屋のだし巻き玉子って美味しいですよね。



ちなみに、第1話のLINEの送り主は尾野さんです。

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