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黄金のファフニール  作者: とっぴんぱらりのぷ〜
第3章 光を追って
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星明り

 翌日から四十六層以下を攻略し始め、一週間程で八十層まで到達した。四十六層から下の層は一日に五層は進める程簡単だった。迷宮は逆円錐型になっているようで、下に進むほど一層のエリアは狭くなっていく。上の層があまりにも広かったため気づかなかった。

 レインも未だ健在で、四十六層あたりでサバイバル生活をしているようだ。どうでもいいが……。


 次々と押し寄せるラウトフリーゲという大きなハエの魔物を二刀の小太刀で斬り落とす。それぞれクリスはレイピアで、ミーニャは短剣を使い倒していく。無数の光がアーシェから放たれ多くのラウトフリーゲを撃ち落とす。

 リヒトからのアドバイスでアーシェも無詠唱での魔法の使用ができるようになった。最近では俺に預けることも少なくなってきており、二人で一緒にいる事が多い。


「もう少しで階段だ。そこまで行ったら今日は終わろう」


 三人が返事をする。どの層でも大きな怪我はなく戦闘に余裕がある。ミーニャに至ってはほとんど無傷の事が多い。敏捷が高いため敵の攻撃が当たりにくいのかもしれない。

 いろいろと考えながらの戦闘ではあるが、程なくして八十一層への階段にたどり着く。


「みんな怪我はないか?」


「かすり傷くらいです」


「ボクも自分で治せるので大丈夫です」


「ミーニャは怪我しないから大丈夫ー」


 八十一層への階段に魔石を隠し宿へ転移する。今日はシルト達と食事をする事にしていたので早めの帰還だ。


 宿に転移した俺達はラウトフリーゲの体液塗れの身体を綺麗にし着替えてからギルドに向かう。


「「おかえりなさい!」」


「「いらっしゃいませー!」」


 ラウとマウのシンクロの他にも声がかかる。コックとホール係の新しい職員を二人雇ったのだ。四十五層の攻略後にシルト達が移籍してきたのだが、その他の黄金伝説のメンバーまで一緒に移籍してきた。


「忙しそうだな」


「もう大変ですよぉ。こんなに人がいることなかったですから。それで、ミツハルさん……」


「いいぞ。好きに使ってくれ」


 遠慮がちに尋ねようとするラウに言葉も聞かずに返事をする。


「まだ何も言ってないんですが……」


「ギルドの建て替えにアダマンタイトを売りたいんだろ?元々ここまで人が増えたのは俺のせいでもあるしな。だから好きに使ってくれて構わない」


「ありがとうございます!絶対にお父さんの酒代にはしませんので!」


 ラウとそんなやり取りをしていると奥のテーブルから声をかけられる。


「アニキ!こっちっス!」


「じゃぁ、あっちに行くから。あいつらの事もよろしく頼むな」


「「はい!」」


 俺達三人はシルト達のいるテーブルへと移動する。ミーニャは眠いからと言って宿で休んでいるため三人だ。

 テーブルにつくとシルトはホール係の女性を呼んで注文をする。一度しか呑んだことがないのに全員の飲みものを憶えている。面倒見のいいやつだ。


「それでは!四十五層で俺達を助けてくれたアニキ達に!乾杯!」


 シルトの号令に「乾杯!」とその場にいた全員が乾杯をする。


「ところで、アニキ達はどこまで攻略してるんスか?」


「今は八十層だな。明日からは八十一層に降りる予定だ」


「はちじゅぅ!まじっスか!?あれから一週間しか経ってないんスよ?」


「下の層は大したことないぞ?四十五層が異常だっただけだ」


 四十五層は異常だった。絶対に下には行かせない様に造られていた様に思える。赤いキツネが攻略済みだが、それまでは四百年も攻略されてなかったのも頷けるほどの仕様だった。


「あの……、アニキ……」


 シルトが深刻な顔をして切り出す。他の仲間も同じ様な表情だ。


「北区に移籍する前の話なんスけど、中央ギルドでアニキの事が噂になってまして……。四十五層にいた黄金伝説のメンバーで何人か転移で無事だった人達がアニキが攻略の邪魔をしたって言ってたんスよ。ここにいるメンバーで本当のこと言ったスけど……、ひょっとしたら嫌がらせとかしてくるかも知れないっスから、力不足で申し訳ないっス……」


「いや、気にすることないさ。何人いたってさすがに八十層までは来れないだろ」


「それもそうっスね。でも気をつけてくださいね」


「わかった」


「じゃ!暗い話はやめて呑むっスよ!今日は帰さないっスから!」


 女性に言われたら嬉しい言葉を言われトリハダが立つ。宴会は深夜まで続き酔い潰れるヤツも出てきたところでお開きとなった。


 宿に帰ってそれぞれの部屋に入る。今日はリヒト入りメイスを預かっている。


『楽しかったですね。みんな良い人達でした』


「そうだな。ところで、お前はアーシェの事どう思ってるんだ?」


『い、いきなり何を言い出すんですか!』


「今更隠すことないだろう?お互いに好きなんじゃないのか?」


『それはそうですけど……。でも僕は側にいることしか出来ませんから……』


「そうだよなぁ。俺が身体取っちゃってるしな。ファフニールにあったら聞いてみようぜ。身体を元に戻せるのかさ」


『でも、そうしたらミツハルは……』


 そこまでリヒトが話したところで部屋の扉が勢いよく開けられる。


「ミツハル!ミーニャが何処にもいません!宿の中も捜しましたがいませんでした!」


「なんだって!?」


 ミーニャがいない?部屋で休んでいたんじゃなかったのか?さっきのシルトの忠告を思い出す。誰かに拐われた可能性も否定できない。


「俺は街の中を捜してくる!アーシェはこの近辺を頼む。クリスにも手伝ってもらってくれ!」


「わかりました!」


 アーシェにそう頼むと、窓から飛び降り夜のメトの街を走り出す。外はほとんど灯りが消えているが星明りでそれほど暗くはない。


 捜しまわる必要もなくすぐにミーニャは見つかった。宿からは近い中央区の広場に一人立っていた。両手に短剣を持ったまま……。





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