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黄金のファフニール  作者: とっぴんぱらりのぷ〜
第3章 光を追って
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チャラ男

「おかえり!今日もヒドイ格好だねぇ。夕飯の前に風呂に入ってきな!」


 宿に戻ると女将のマリーさんが出迎えてくれた。毎日の探索で自分達の家を借りるくらいの金はあるのだが、ここの料理といつでも風呂に入れるのが気に入ってるのでそのまま泊まっている。


「マリーさん。これお土産です」


 俺はカバンから肉の塊を取り出しマリーさんに渡す。


「いつもわるいねぇ。今日は何の肉だい?」


「今日はクロコディールの肉を持って来ました。シチューやサラダに使うと美味しいらしいですよ」


 クロコディールは四十層の湿地帯に住むワニのような魔物だ。俊敏で力も強く皮も硬いため他の冒険者は狩らないのだが、美味しいとラウマウから聞いたので採ってきてみたのだ。


「クロコディールかい!?なかなか売ってないんだよ。値段もそこそこするしねぇ。じゃぁ、今日はこれを使って美味いものつくってあげるよ!まずは風呂に行っといで!」


 いつもの様に風呂に入る。二人入るのがやっとの浴室だが、今日は珍しく先客がいた。ここ数日宿で見かける青年だ。歳は俺と同じくらいだろうか?と言ってもこの身体は十七歳なのでリヒトよりは年上かもしれないが……。


「わりぃ。そこの石鹸とってくんね?」


 青年に声をかけられる。手を伸ばせば届くと思うのだが断る理由もないため近くにあった石鹸を渡す。


「ちょっと背中洗ってくんね?」


「……」


「おい。聞こえてる?背中洗えって言ってんの」


 五月蝿い奴だな。俺の他にも誰か入ってるのか?などと思っていると青年が石鹸を俺に向けて投げつけてくる。投げつけてきた方向に向いてなかったが、俺は飛んできた石鹸を裏拳で粉々にする。


「俺に言ってたのか?」


「お、お前以外に誰がいんだよ!」


「あーあ。石鹸粉々にしやがって……。マリーさんに怒られるぞ?」


「それはお前がやったんだろうが!」


「五月蝿い。少し黙ってろ」


 いよいよウザくなってきたので睨みをきかせる。


「お、お、お」


 少し威圧しただけでこの有様だ。チャラい勘違い冒険者の類だろう。

 俺はさっさと身体を洗い風呂からあがる。青年は湯船でガクガクと震えたままだった。まぁ、俺の睨みよりマリーさんの説教の方がヤバイだろ。


 食堂に行くとすでにアーシェとミーニャが待っていた。わざわざ待っていてくれるなんて、なんていい子達なんだ。


「待たせたな。風呂場で変な奴に絡まれてさ」


「いえ、私達も今来たところです」


「えー?結構待ったよね!ミーニャはお腹空いちゃったよ!」


 アーシェが恋人の待ち合わせの様に答えるがミーニャは正直だ。アーシェがバツがわるそうだぞ。


「今日も疲れたし、いっぱい食べて明日に備えるとするか!」


「はい」


「おー!」


 俺はクロコディール尽くしの夕飯を食べながら二人に聞く。


「四十五層の事なんだけどさ。どうしたらいいと思う?ガルドも言ってたけど、やっぱり三人だと難しいのかな」


「私は……」


 アーシェが言いづらそうに俯いてしまう。


「なんでもいい。言ってくれ」


「私は二人のように強力な魔法を使えませんし、未だに詠唱が無ければ発動させることもできません。正直、足を引っ張っているのではないかと……」


 確かにアーシェは詠唱しなければ魔法を発動させることができない。リヒトも言っていたが一度詠唱での魔法に頼ると修正するのは難しいようだ。


「でもアーシェがいなければ俺達はとっくに全滅してるぞ?詠唱ありだろうがなしだろうがアーシェはヒーラーとして優秀だよ」


「そうだよー。ミーニャはお姉ちゃんみたいにバコーンってやっつけれないし」


「バコーンですか……」


「そうだな。アーシェのメイスは四十五層では有効だし、反対にミーニャの短剣と弓だと相性がわるい。もっとレベルを上げて挑むか人数を増やすかしかないかな」


 また行き詰まりだ。四十五層については何度か作戦を練ってみたが、最終的には人数不足という結果になってしまう。


「とりあえず明日はレベル上げでもしようか。ゼルテの店

 にも行きたいしな」


 初めて四十五層に挑戦した時に全魔力を注いだ一撃でリヒトのロングソードは半ばから折れてしまったのだ。他の片手剣でも試してみたがリヒトの剣より丈夫な物はなかった。


「おい」


 考えた末に生まれたのが二刀で魔力を分散する事だ。ゼルテに頼みミスリルを加工した小太刀を二本用意してもらった。しかし、その小太刀も刃こぼれしてきており、そろそろ折れてしまうだろう。これより硬い金属はオリハルコン、アダマンタイト、龍の鱗などだそうだ。その他だと未知の魔物が落とす素材しかない。さて、どうしたものか……。


「おい!」


「じゃぁ、明日も早いから今日は休むか」


「無視するんじゃねぇよ!」


 俺達のテーブルの側に風呂場であった青年が立っていた。赤みがかった髪はチャラ男のようにあちこちに遊ばせている。風呂に入ったのに何かつけたのだろうか?無駄な事をするものだ。


「何か用?」


「お前、新人冒険者だろ?ちっとは先輩に挨拶とかしたらどうよ?態度もでかくて気に入らねぇしよ」


 アーシェがゴミを見るような目でゴミを見ている。あ、すでにゴミだったのか。

 ミーニャは食べながら男の方を向いたためソースが男に飛ぶ。あー、あとでマナーを教えないと……。


「お前ら……。俺は“もう半年も”冒険者してるんだぜ?しかも中央ギルドで!お前らはいつ冒険者になったんだよ?」


「はぁ……。俺達は北区に登録して一ヶ月ちょっとだ」



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