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黄金のファフニール  作者: とっぴんぱらりのぷ〜
第3章 光を追って
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「アイラ」黄金のファフニール

 アレクシスに会って三回の短い夏が終わって雪が降る。また短い夏が来るまでフォーリアは雪に埋もれっぱなしだ。


 アレックスことアレクシス・クシュナーはアタシの家に居座ってしまった。


 アタシの両親はフォーリアでも有名な魔術士で、アタシを産んだ後は、おばあちゃんに預けて迷宮に行ってしまった。だからアタシは両親の顔を知らない。育ててくれたおばあちゃんは五年前の冬に死んでしまった。


 それからアタシは独りぼっちで生きてきた。幸いにも、アタシには魔法の才能があるらしく、魔石に紋様を刻んだりする事で近所の人達から食べ物や魔石を分けてもらうことができた。


 そんなアタシにアレックスは自分の娘のように接してくれる。ここではない世界から来たことや奥さんと娘さんがいたことも教えてくれた。


「アイラ!すごいぞ!」


 外から帰ってきたアレックスは雪まみれになりながら肩に担いでいた大きな魔物を降ろす。


「デカいシュティーアを仕留めたぞ!凄いだろう!」


 この魔物は牛って呼んでたけど、アレックスがカッコいい名前にしようと名前をつけた。でもシュティーアってアレックスの国の言葉で牛っていう意味らしい。


「こんなに大きいと、しばらく食べ物に困らないね!近所のみんなにもお裾分けしなきゃ!」


 アレックスは言葉と魔法を覚えると、すぐに上達してアタシよりも凄い魔法も使えるようになった。魔法の言葉を使わなくても魔法を使うことができたことにはビックリした。毎日出掛けては獲物を捕まえてくる。


 最初は村の人達も奇妙悪がって近づかなかったけど、最近は狩りの名人として、みんなに優しく接してもらえるようになってきた。


 ドンドンドンと家の扉を叩かれる。


「はーい!今開けまーす」


 扉を開けると近所のベルおばさんが立っていた。


「ベルおばさん。どうしたんですか?あ、そうだ!アレックスが大きなシュティーアをとってきたんですよ!お裾分けに行こうと思ってたんです。ちょっと待っててもらえますか?」


 血相を変えたベルおばさんは家の中には入らずに扉の前で大声で叫ぶ。


「アイラちゃん!大変だよ!戦争だよ!戦争が始まるんだ!」


 おばさんの言う言葉にピンとこない。戦争は知っているけど、見た事がないし縁のないものだと思っていた。


「戦争ですか?」


「そうだよ!村おさの家にみんな集まってる!あんた達も早くおいで!」


 それだけ話すとおばさんはまた違う家に走っていった。


「アレックスは戦争した事ある?」


 少し困った顔でアレックスは答える。


「私は戦争をした事はない。でも私の祖国は昔に大きな戦争を起こした。沢山の人達が死んだんだ」


 聞いちゃいけない事だったかな。すごく哀しそうだ。


「そっか……」


 外は凄い吹雪だけどアタシ達は村おさの家へと向かった。


 小さな村だけど、村おさの家には三十人を超える人達が集まっていた。


「これで全員か?」


 村おさが大人達に聞く。


「小さな子供や、動けない老人を除けば全員集まりました」


 ベルおばさんの旦那さんが村おさに報告する。確かダンさんという名前だ。


「皆の者!よく集まってくれた。すでに聞いておると思うが、間もなくこのフォーリアの地が戦場になる!最近起こったクーデターで国王が代わった東の隣国ザルフィカールとアルステン王国がフォーリアの迷宮を奪い合い戦争を始める!」


 村おさの言葉にみんながザワザワとし始める。


「みんな!静かに!とにかく聞いてくれ!」


 ダンさんが集まったみんなに声をかける。


「みなフォーリアに迷宮があるのを知っておろうな?ワシらフォーリアの民がそれを隠してきたことも……。これは知らぬ者も多いとは思うが、フォーリアの迷宮にはファフニールが眠っておる」


 またみんながざわめく。ダンさんが静かにするように言うとまた鎮まる。


「ワシら人間はファフニールに恩がある。フォーリア以外の人間はルグに操られておるのじゃ。ルグはファフニールを殺して、その強大な魔力を奪おうとしている!今度はワシらフォーリアの民がファフニールを護るのじゃ!」


 みんなが村おさの話に同調して雄叫びをあげたり拍手をしている。アタシもよくわからないけど拍手をする。


「ダメです」


 アレックスの一言でその場の空気が凍りついた。


「戦争はしちゃいけない」


 続いて起こったのは罵声の嵐だった。


「新入りのくせに何言ってやがんだ!」


「よそ者は黙ってろ!」


 みんながアレックスに掴みかかりそうな勢いで詰め寄る。アタシはそんな状況を見ている事しかできなかった。


「私はファフニールに選ばれた。私がファフニールとフォーリアのみんなを護る」


 みんなが唖然としていた。見ていて少し可笑しくおもえるくらいに。


「はぁ!?何言ってんだおめぇ!」


「一人で何ができんだよ!」


 少しするとまたみんなが騒ぎ始める。


「まぁ、待て。話を聞こうではないか?話してくれるか?アレックスよ」


「ありがとうございます村おさ。実は、私はウムガルナとは違う世界からやってきました」


 みんなががざわめく。アタシは知っていたけど……。


「静かにせい!続きを……」


「はい。私は向こうの世界でファフニールに出会いました。私と家族を助けてくれたのです。そして、ファフニールは私に力を授けてくれました。その力でこの世界の人々を救って欲しいと頼まれたのです。世界をも越えることができるファフニールの力で私はこのウムガルナにやってきたのです。私は真意を確かめるためにファフニールに会いに行ったのですが……。彼はすでに身体を持たない魔力と記憶の魔石だったのです」


「迷宮の一番奥まで行ったのか?誰も辿り着いた事がないのだぞ?」


「はい。三年かかりましたが、なんとか九十六層で見つけました」


「ファフニールは何と?」


 アレックスはポケットから魔石一つ取り出す。見た事もない金色に光るキレイな魔石だ。




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