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黄金のファフニール  作者: とっぴんぱらりのぷ〜
第3章 光を追って
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「アイラ」出会い①

「よいしょっ。よいしょっ」


 アタシは今日も井戸から水を汲む。集落に一つしかない井戸を何度も何度も往復しないといけない。


 小さい頃から毎日続けている作業は生活していくのに必要な事だから別にどうってことない。アタシは今日で十三歳になったから、お嫁さんにもなれるし仕事だってできる。


 アタシが暮らしているフォーリアは一年中寒い。雪が融けるのは一年のうちのほんの短い今の期間だけだ。


 もう何度目だろうか?五回は往復したかもしれない。そして、この男の人も同じくらい見ている。


 雪が融けてもまだ寒いのに、この男の人は道端にずーっと寝そべっている。


 アブナイ人だ。訳のわからない言葉をブツブツとつぶやいている。近所の大人は見たんだろうか?


「〜〜〜〜〜〜〜〜」


 何を言っているんだろう?気にしちゃダメだ。でも気になる……。


 その後も往復をする度に少しずつ男の人に近づいて行く。


「〜〜〜〜〜〜〜〜」


 やっぱり何を言っているのかわからない。


 ぐぅぅぅ〜


 男の人のお腹が鳴った。目があってしまう。


 アタシは好奇心に負けて、つい声をかけてしまった。


「お腹すいてるの?」


「〜〜〜〜〜〜〜〜」


 男の人はニコニコしてアタシを見る。何を言っているのかわからないけど、優しい目をしていた。お父さんには会ったことがないけど、きっとお父さんみたいな目だ。


「ちょっと待っててね!次来たとき何か食べ物を持ってきてあげる!」


 アタシは家に戻ると朝食のパンを持って男の人のところへ行った。


「はい!これあげる!」


 男の人は震える手でパンを口に……全部入れた!?


 モグモグモグモグ、ング、ング、ウ!


 やっぱり詰まった!


「ダメだよ。そんなに一気に食べたら。桶のままだけどお水飲む?」


 男の人は桶に顔を突っ込んで水を飲む。飲む。飲む。飲みすぎじゃない?


「ぷはぁ!ふー。ゲフッ!」


 あ、言葉はわからないけど、そういうのは一緒なんだなと少し感動する。


「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


 男の人はアタシの手を握ってブンブン振り回す。お礼でも言っているのかな?


「おじさんはどこから来たの?」


 男の人は何か言いながら身振り手振りをするけど、さっぱりわからない。


「ごめんなさい。わからないや。アタシの家は、ほら、あそこだからアタシ行くね?おじさんも……頑張ってね!じゃぁね!」


 男の人にお別れをして家に戻る。


 おじさんついて来てるし!どうしよう!?伝わらなかったのかな!?


 結局、おじさんを家まで連れてきてしまった……。


「おじさん。ダメだよー」


 おじさんは変わった格好をしている。貴族の人が着てるような服を着て、首には見た事がない柄の布をぶら下げている。ひょっとしたら貴族の人とかお金持ちなのかな?


 おじさんは部屋の中をキョロキョロと見回しているだけなので、そのままにしておく。アタシは汲んできた水を鍋に入れてお湯を沸かす。火の魔石に触るとボッ!と音を立てて暖炉に火が入る。


 おじさんがビックリして興奮し始める。一生懸命魔石に指をさして何かを言っている。魔石を見た事がないのかな?


「これは魔石だよ?ま・せ・き!」


「ませき?」


「こっちはお鍋!な・べ!」


「なべ?」


 手当たり次第に指をさして名前を教える。言葉が理解できるのが面白くて家中の物の名前を教えてみる。


 おじさんがアタシを指差した。アタシの名前?


「アタシの名前はアイラだよ!アイラ!」


「なまえ、アイラ」


「そう。おじさんの名前は?」


 今度は逆におじさんを指差す。おじさんはゆっくり話す。


「なまえ、アレクシス・クシュナー」



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