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黄金のファフニール  作者: とっぴんぱらりのぷ〜
第3章 光を追って
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アンデットゾーン

 メトの迷宮、四十五層。この層は地獄だ。マップも必要ない。だだっ広い空間に無数のアンデットがいるだけだ。


 一度進んだら戻る事はできない。転移で離脱するしかない。俺達はすでに三回挑戦しているが、三回とも半分を過ぎた辺りで転移している。


 自分達もだが、他のグループが挑戦しているところもみた。途中で転移で逃げるグループもいれば、全滅したグループもいた。


 俺達も無傷ではない。二回の時は危うく全滅しかけた。


 神殿でアイラを見つけてから一ヶ月。俺達は昼夜を問わず迷宮に潜り攻略を進めた。未だにユリウスが何かを仕掛けてくる様子はない。


「赤いキツネはこんなところも攻略していったのかよ!」


 赤いキツネはこの一ヶ月で攻略回数を五十層まで延ばしたらしい。赤いキツネ以外の冒険者は四十五層で足踏み状態だ。


 一ヶ月で四十五層まで攻略した俺達も注目されるようになってきた。驕りではなく俺達三人は成長した。


 赤いキツネも二十人から成るクランだし、他のグループも十人以上で挑んでいる。実際、すでにレベルは赤いキツネを超えている。俺達に足りないのは仲間だ。


 ほとんどの魔力を注ぎ込み最初の一撃を放つ。二刀の“刀”から放たれた斬撃は数十体の敵を蹴散らし、モーゼの十戒のように道をつくる。


「行くぞ!」


 俺は叫び、三人で走り出す。百メートルも走ると道はなくなりそうになる。まもなく後ろにも敵が沸き始めて退路が塞がれる。


「次!ミーニャ!準備しておけ!」


「準備はできてます!いつでもいけます!」


 横から飛び出してくるスケルトンを俺とアーシェで粉砕する。


「いまだ!ミーニャ頼む!」


「はい!いきます!」


 レベルが上がったミーニャは腕力も上がったため以前のショートボウではなく、より威力が高いロングボウを使用している。


「必殺!花鳥風月!」


 ミーニャは同時に四本の矢を放つ。それぞれに風の魔力を纏わせている。なんとなく教えた花鳥風月という言葉が気に入ったのか技の名前として使っている。そういう年頃なんだろう。


 放たれた四本の矢はドリルのように前方の敵を貫いていく。数十メートル進んだところで勢いが落ちる。


「散!」


 ミーニャが編み出したオリジナルだ。放った魔力の矢は完全に止まる前に爆散して周りの敵を吹き飛ばす。


 前方の突貫力だけなら俺でもかなわない。


 俺達はミーニャがつくった道を走る。ここからは魔力を溜めている暇はない。ひたすら前方の敵をなぎ倒して進んでいくだけだ。


 数十、数百という敵を倒すが徐々にペースは落ちてくる。今回は三分の二程は進んでいるだろうが、最後の決め手がない。このまま疲弊して魔物の群れに飲まれる前に転移を判断する。全滅しているグループはここの判断を間違う。もう少し、もう少しと思っていると取り返しがつかない状況になるのだ。


「アーシェ、ミーニャ!手を!」


 俺は二人の手を握り、目を閉じる。


 次に目を開けると、俺達は北区ギルドに立っていた。


「「おかえりなさい!」」


 戦闘姿勢のまま、腐敗臭のするアンデットの返り血まみれで現れた俺達を見ても、ラウとマウはシンクロ率を下げることなく声をかける。


「「「はぁーー」」」


 俺達は一気に気が抜けて、その場に座り込む。こんな事を後何回繰り返せば攻略できるんだ……。


「よぉ!」


 そんな俺達にガルドが声をかけてくる。


「転移か何かで戻ったのか?ひでぇ有様だな!何層でそんな状態になってんだよ」


 どうやら赤いキツネも戻ってきたようだ。いつもガランとしているギルドがやけに賑やかだ。


「四十五層だ……」


「そうかそうか。あそこはウジャウジャいるからなぁ……。四十五層だと!?」


 ギルド内が一瞬、静まり返る。その後、ざわざわと「おい。冗談だろ?」「この前冒険者登録したばかりだろ?」「俺達でも五年はかかったんだぜ」などの声が聞こえてくる。


「おいおいおい。どうなってんだお前ら……」


「赤いキツネはあそこをどうやって攻略したんだ?」


「そりゃ、おめぇ。ドーン!って行って、バーンってやって、ガーって行って攻略してんだろうが」


 聞いた俺がバカだった……。


「もう四回失敗してるんだ」


 またまたガルドが大声をあげる。


「四回もやったって!?よく生きて帰って来れてるな!お前らレベルはいくつなんだよ!」


 そうだ。さっきので、また上がったはずだ。


 名前:ミツハル・ヒカゲ

 種族:人

 出身地:ニホン

 年齢:24

 所属:北

 適性:魔導剣士・二刀剣士

 属性:光闇土風水火雷

 ランク:8

 Lv:60

 体力:892/892

 魔力:2201/2201

 腕力:755/755

 敏捷:742/742

 知力:566/566



 名前:アシェル・アレクシス・ファルシュ・ロンデリオン

 種族:人

 出身地:ニール

 年齢:16

 所属:北

 適性:神聖術士・メイサー

 属性:光水

 ランク:6

 Lv:48

 体力:320/320

 魔力:562/562

 腕力:233/233

 敏捷:192/192

 知力:720/720



 名前:ミーニャ・トルバ

 種族:獣人ネコ科

 出身地:トーレス

 年齢:12

 所属:北

 適性:狩人・風術士

 属性:風

 ランク:7

 Lv:54

 体力:483/483

 魔力:850/850

 腕力:329/329

 敏捷:620/620

 知力:302/302


 またレベルが少し上がった。先に進めずにレベルばかり上がっていく。


「なんじゃこりゃぁ!レベル60!?ありえねぇ!」


 ガルドが信じられないと喚き散らす。


「レベル60だってよ……。ガルドさん58くらいじゃなかったっけ?」


「俺達より上じゃねぇか。ギルド長より上?」


「てか、ガルドさん負けてね?」


 ひそひそ声の先に見えない拳撃が飛び、数人が吹っ飛ぶ。


「急いでるんだ。なんとか攻略したい」


「攻略っていってもなぁ。俺達はしばらく潜らねぇし、潜っても四十五層まで行くのに一週間以上かかっちまうんだ。それとなぁ、俺らとお前らじゃ全然違うんだよ」


 少し躊躇っているようだ。


「言ってくれ。なんでも参考にしたい」


「まぁ、人数がなぁ。俺らは前が疲れたら後ろと交代しながら進むんだ。お前らはずーっと三人だろ?それじゃぁ、もたねぇよ」


 やはり、人数の事を指摘される。こんな時にリヒトだったらどうするんだろう。あれからリヒトは話しかけてくれない。俺の中にいるのかどうかもわからない。


「ありがとう。参考になったよ」


 俺達は歩いて宿まで戻る。転移する魔力も残ってないのだ。アンデット相手に戦っていると肉体だけでなく精神まで擦り切れてしまう。なんとかしないと……。

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