悪ノリする老人
老人は困ったいう表情で少女、棺桶、俺を順番に見てシワだらけの顔に更にシワをつくり話し始める。
「なんじゃ、騒がしいのぉ。また死体でも拾ってきたのかのぉ」
「司祭様!拾ってきたなんて、死霊使いみたいに言わないでください!」
「頭が堅いのぉ。いつもやっておるではないか……」
老人の口から聞き捨てならないセリフが飛び出す。
「死体を拾ってきている?何それ……変わった趣味だな」
「拾ってきてません!この死体は今朝、村人が届けてくれたんです」
届けるって……宅配便かよ。
「ほほぅ。死体の宅配便みたいじゃな。この村には黒猫はおらんかったがのぉ」
見事に老人とシンクロした。
「それにしても……棺桶を突き破って出てくるとは活きのいい死体じゃのぉ」
「あんたにも俺が死体に見えるのか?あんたらおかしいんじゃないか?死体は歩いたり喋ったりしないだろ?俺は家で寝てたんだよ。起きたら何故か棺桶に入れられてただけなんだ。何かの間違いだと思うんだが、ドッキリか?これ」
「むぅ……一部の死体は歩くし喋る事もあるがのぉ。じゃが、お主は死体には見えないかのぉ。血色も良いしのぉ。今までのは乗っかってみただけなんだが……頭堅いのぉ」
この二人ふざけすぎだろ。早く帰りたい。
「あんたがここの責任者か?わるいけど、手違いで死んだことになったみたいなんだ。家族に迎えに来てもらうから電話を貸してくれないか?」
「あんたじゃなくてなくてザロモン司祭です!」
腰を抜かしていた金髪少女が心外とばかりに抗議する。まだコスプレごっこが続いているのかよ……
「ザロちゃんと呼んでもいいんじゃぞ?」
いや、どうでもいいし。
「では、ザロモン司祭。私は日影光晴て言います。さっきも言いましたが手違いで死んだ事にされちゃったみたいなので、家族に連絡するために電話を貸していただけませんか?」
「ほう……デンワを貸してくれとな?デンワ……デンワとは?アーシェ、そなたはデンワを知っておるか?」
いくら年寄りでもデンワくらいわかるだろぅ。
「いえ、ザロモン司祭。私も存じ上げません」
話を振られた金髪少女のアーシェもこたえる。
「あー。わかりました。もう茶番には付き合っていられないので、歩いて帰ります。出口はどこですか?」
「出口ならそこの扉じゃ」
ザロモン司祭が指差す扉に近づき、無駄に重厚な扉を押し開き……
閉める。