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結界

 俺はアイラが横たわっている台座に近づく。探索を始めてからすでに二十分は経っているはずだ。そろそろ戻らなければ騒ぎになるだろう。


「おい、アイラさん!起きろ!」


 バシッ!


 身体に触れようとするが、見えない何かに弾かれる。


「つぅ!なんだよこれ……結界みたいなものか?」


 ここまで来たのに……。どうすればいい?こんな時に限ってリヒトもいない。部屋の中も台座の周りにも装置のようなものはない。何か特殊な道具でも必要なのか?


「今日は帰るよ。お前に逢いたがってたヤツがいるんだ……。必ず助けてやるからな。もう少し待っていてくれ」


 俺は眠っているアイラに話すと、魔石を一つ取り出して台座の陰に置く。これで、次からはいつでも来れるはずだ。


 目を瞑り繋がりを確認する。何度か試してみたが、魔石を置いた場所が見えるようになっている。俺はその中の一つミーニャのいる部屋に飛ぶように集中する。


 身体の魔力が高まり、俺の身体を繋ぐ魔石へと移動させる。目を開けるとミーニャと待っていた部屋に移動していた。


「ふぅ。ただいま」


「お帰りなさい!どうだった!?」


 ミーニャが眼をキラキラと輝かせている。年頃なのだろう、お姫様を救うというシチュエーションが好きなようだ。


「龍の神子はこの神殿にいた。部屋は見つけたけど、結界みたいなのがあって連れては来れなかった。転移の魔石を置いてきたから次からは自由に入れる」


「そうですかぁ。会いたかったなぁ」


「留守の間、誰も来なかったか?」


「あ、おじいちゃんが来てこれをくれました!」


 ミーニャの手にはクッキーのようなお菓子が入った小さな籠が握られていた。


「ん?手紙が入ってるぞ?」


「はい!お兄ちゃんに渡すように言われました!何か書いてありますがミーニャには読めませんでした」


 籠の中に蝋で封じられた手紙を見つける。俺は宛名を見て驚愕する。


「日本語だ……。どうして……。どんなヤツが持ってきたんだ?」


「んー。神官さん達と同じ格好でヒゲがたくさん生えてるザロちゃんっていう人だったー」


 ザロモン司祭!そうだ!俺の前に階段を降りたはずなのにどこにもいなかった。ザロモン司祭は階段に降りた後にここに来た事になる。


 宛名には「親愛なるミツハルへ(ハートマーク)」と書かれている。どこまでもふざけたじいさんだ。


 その場で開けようとも思ったが、丁度、アーシェとオズマ司祭が戻ってくる。


「お待たせしました。それでは戻りましょうか」


「アシェル様。またいらしてくださいね。もうすぐルグ祭もありますので……。その時は……」


「はい。オズマ司祭が親切にしてくださった事は忘れません。その事は、お父様にもお話しておきましょう」


「ありがとうございます!」


 オズマ司祭に見送られ俺達三人は神殿を後にする。


「どうでしたか?龍の神子は神殿に?」


「あぁ。神殿にいた。やはり、封印か何かされているんだろう。結界みたいなものがあって連れ出す事はできなかった」


「そうですか。やはりルグ教は何かを隠しているのですね……」


 アーシェは落胆した様子で話す。


「それと、ザロモン司祭を見かけた。ミーニャがこれを受け取ったんだ」


 俺は手紙を取り出しアーシェに見せる。


「その手紙は!?」


「読めるのか?」


「いえ、文字は読めませんが、その蝋印は知っています」


 ここではちょっと、と付け足し俺達は一旦宿へと戻る事にした。

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