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六英雄

 宿に戻り夕食を済ませる。明日も朝から迷宮に潜る予定だが、日中寝ていたせいか、なかなか眠気がやってこない。あれからリヒトは何も言って来ないし、妙に寂しく感じる。リヒトのヤツ、身体が入れ替わったから不貞腐れてるのか?

 などと考えていると部屋の扉がノックされる。


「アーシェです。起きてらっしゃいますか?」


 よ、夜中に部屋に来るとは!?夜這い!?


「ミーニャも来ました!」


 そうですか。


「待ってくれ。今開ける」


 少しだけガッカリして扉を開ける。


「どうしたんだ?二人して」


 俺は二人を中に招き入れ、ベッドに腰をかける。アーシェは椅子にミーニャもベッドに座る。


「先日の神殿の件なのですが……」


 あぁ。あのことか。


「いや、無理ならいいんだ。気にしないでくれ」


「いえ、何か理由があるのではないかと。それをお聞きしたくて」


「理由かぁ……。どっちかって言うと俺じゃなくて、リヒトの目的に関係するんだけどな」


 前置きした上で、事の顛末を話す。


 俺の意識に龍の神子が混ざっていた事、神殿に龍の神子がいるかも知れない事、リヒトが龍の神子を助け出したいと言っていた事。


「龍の神子が神殿に?伝承と違いますね……」


「リヒトさん。お姫様を助ける王子様みたいだね!」


「そうなんだ。あーー。ちょっと言いにくいんだけど、話をまとめると、どうも伝承自体が嘘っぱちで、神殿もグルになってるようなんだ……」


 アイラも六英雄は盗人だとか言っていた。さすがにそこまでは言わないが……。


 怒ると思われたアーシェは黙って聞いて、哀しい表情になる。


「そうですか……。信じたくはありませんが、なんとなくそんな気はしていたので……」


「ま、俺が聞いた話はそんなところだよ。入る手段がなければどうしようもない。偉い人しか入れないんだろ?」


 リヒトの強さなら突貫してもいけそうだが、お尋ね者になって逃亡生活を送る事になりそうだ。


「まぁ、そうなんですけれど……。実は、司祭以外で自由に神殿に出入りできる人達がいます」


「どんな人達だ?」


「六英雄と呼ばれた人達の子孫です」


 そうか、伝承が嘘っぱちだとしたらルグ教と六英雄はグルだ。六英雄が実在していたとすれば、今も秘密隠匿のために関わりは深いはず。


「なるほど。アーシェは六英雄の子孫っていうのに心当たりでもあるのか?」


「その……。私が子孫なんです……」


「そうか……。って、え?」


 アーシェが六英雄の子孫?いいとこのお嬢様だとは思ってたけど……。うわぁ……。悪口っぽいの言っちゃったし。


「私の家、ロンデリオン家は六英雄の一人セシャー・アレクシス・エヒト・ロンデリオンの末裔です。今では、それも本当かどうかわかりませんが……黙っていてすみませんでした」


「お姉ちゃん本物のお姫様なんだ!すごい!」


 ミーニャが目をキラキラと輝かせる。


「その名前を出せば中に入れるのか?」


「はい。神学校というのは作り話でした。以前に入った事があるのは六英雄の末裔としてです。ごめんなさい」


 アーシェが深々と頭を下げる。


「いや、気にしてないよ。俺もリヒトのこと内緒にしてたし。アーシェ、ミーニャ内緒にしててごめんな」


「いえ、なんとなく気づいてましたし……」


 あぁ、そうだっけな。


「うん。変だったからすぐわかったよね。誰かいるなって!」


 えぇ!?どんだけ下手くそなんだ俺!

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