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影と光

 体育館ほどもある空間で戦闘は行われていた。無数とも思えるケーファーを相手に二十人を超える冒険者が戦闘している。一層で俺たちを追い越していった冒険者達だ。


 ケーファーの死骸に混じり、やられたのか数人の冒険者も倒れている。


「ダメだ!数が多すぎる!」


「こっちは二人やられてんだ!このまま逃げれるかってんだ!誰か何とかしろよ!」


 数は多くとも違うグループ同士でまとまりがない。


『リヒト。どうするんだ?』


「とりあえず、助けてみますか。アーシェさんは怪我人の治療を。ミーニャさんは弓で攻撃してください」


「わかりました」


「うん!わかった!」


 リヒトは剣を抜くとケーファーの密集している場所へと移動する。


「おい。危ねぇぞ!死にてぇのか!?」


「新顔がしゃしゃり出てきてんじゃねーよ!」


「引っ込んでろ!」


 助けに入った事への礼ではなく、罵声を浴びせてくる。


「はぁ……。助けてあげたくない人達ですねぇ」


『全く同感だな』


「少しだけ本気を出します。ミツハルはよく見ていてくださいね」


 他の冒険者達の罵声を無視してケーファーの密集地帯にに入る。ケーファーはたちまちリヒトに群がり嚙みつこうとする。カブトムシには歯がないと聞いたことがあるが、ケーファーはサイズが違う。というか、腹を見せて身体をよじ登るのがキモい。早く倒しちゃって……。


 リヒトが剣を持つ右手に魔力を集めているようだが、昨日俺が使ったものとは違う。火雷風と三種類の魔力を込める。


「そうです。それぞれ対極にならない属性は掛け合わせて使う事ができます。では行きますよ!」


 言うと、リヒトはその場で腰を落として下段に構えた剣をを腰のひねりで身体ごと一回転させる。それだけで群がっていたケーファーは吹き飛び、切り裂かれ、あるいは焼け焦げて地面に落ちる。


 その一撃で数十匹のケーファーが動かなくなった。残った数匹に向けて矢が放たれる。矢を受けたケーファーは大穴を空けて絶命する。ミーニャの矢だろう。


「すごい上達ぶりですね!獣人は狩人の適正があるんでしょうか」


 あらかた片付いたためリヒトはアーシェとミーニャの元に戻る。


「どうですか?怪我人の手当ては」


 アーシェに声をかける。


「怪我をしている方は治療しましたが、残念ながら三名の方が助かりませんでした」


「そうですか……。残念ですが仕方ないですね。彼らも冒険者なのですから、怪我をしたり命を落とす事は覚悟していないと」


 おい。素に戻ってるぞ。


「はい……。そうですね」


「ミーニャちゃんもお疲れ様でした。上達しましたね!」


「うん!お兄ちゃんのお陰だよ!」


 なんだか……。俺の時より上手くいっている?


「では、次に行きましょうか」


 リヒト達三人はそのまま六層目へと降りようとする。


「おい!黒髪!てめぇ高レベルのくせして俺達を先に行かせただろう!?美味しいとこだけ持っていくんじゃねぇよ!」


 誰かがそんな事をいう。一斉に「そうだそうだ」と賛同する声もあがる。


 三人は一瞬だけ足を止めるが、そのまま六層目に続く階段へと消えていく。

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