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イェーガー

 草木を掻き分けながら進むのは意外と体力がいる。足下も木の幹などがあり、油断すると躓きそうになる。リヒトの身体は疲れないが、アーシェとミーニャにも気を遣わないといけない。見通しが悪く、魔物が何処にいるのかもわからないのも精神的によくない。


「魔石の文字のかすれ具合だと、もうすぐ昼になる。二人共大丈夫か?」


 二人共大丈夫だと言うように頷いて答える。次の階段に着いたら昼食と休憩をとろうと決める。


『何かいます!かなりの数です!』


 リヒトが言うが、全く敵が見えない。


「どこだ!?」


 辺りを見回すが、敵の影がみえない。その時だった。


「痛っ!」


 ミーニャが右腕を抑えてしゃがみ込んだ。


「どうした!?」


 腕から血が流れており、地面には矢が突き刺さっている。ミーニャが弓矢で攻撃された。続けざまにあちこちから矢が飛んでくるが、当てるつもりがないのか地面や木に刺さる。


「誰だ!さっさと出てこい!殺してやる」


『イェーガーです!ゴブリンに似た魔物ですよ!やつらは狡猾です。木の上や草むらに潜んで獲物を狙い、弱るまでいたぶります』


「アーシェ!ミーニャを頼む!リヒト!何が有効だ!?教えてくれ!」


 すでにアーシェはミーニャの傷の治療を行っていた。


『木です!風の刃で木を切り倒してください!』


 俺は両手に魔力を溜める。それぞれに魔力が溜まるのがわかる。イメージはカマイタチだ。


 魔力のこもった両手を上方に向け、狙いも定めず無造作に振り回す。


 両方の手から無数の風の刃が飛び周りの木を細切れにする。


 木や葉と一緒に切り刻まれたゴブリンのような物体が血を噴き出しながら落下してくる。ガサガサと音が聞こえ、草木の陰から数体のゴブリンのような生き物が飛び出してくる。


 手には短剣を持っており、俺に斬りかかるが、躱さずに懐に入れる。


「効かねーよ」


 手や足を斬りつけられるが気にせず、片手にそれぞれの頭を掴み、握り潰しては握り潰す。イェーガーの頭はまるでトマトのようにグシャリと潰れる。


 飛び出したイェーガーは残り一体となるが、逃げずに標的を変えアーシェ達に飛びかかる。


 完全に頭に血が昇っていた俺は、致命的に判断が遅れる。治療中のアーシェも気付いたが間に合いそうにない。


「あ……。ダメだ!逃げてくれ!」


 絞り出すように……懇願するように言葉が出るが、伸ばした左手は届かない。嘘だろ。バカか俺は!



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