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迷宮街メト

 頂上から歩き、日暮れ前に俺達はメトに辿り着いた。


 要塞のように十メートルはありそうな高い防壁がメトを囲んでおり、門を通らなければ中に入れないようになっている。


 門の前には武装した数人の兵士がいる。


「私が対応しますので、ミツハルは余計な事をいわないように」


 アーシェに言われ静観することにする。まるで信用されていないようだ。


「そこの三人、止まれ!」


 俺達は兵士に言われるままに門の手前で立ち止まる。


「お前達、何処から来た」


 兵士は俺達を上から下まで舐めまわすように見て傲岸な態度で問い詰める。


「私達はムルステから来ました。私はルグ教の神官のアーシェと申します。こちらの黒髪の少年は私の護衛を担当していただいた方で、メトで冒険者になるために同行しました。司祭様からの推薦状です」


 アーシェはアーマーの下から紙を取り出すと兵士に渡す。アーマーの下?胸に挟めてたのか!?不二子か!?


「確かに。神官と護衛の二人の推薦状だな。だが、そっちの獣人の子供に関しては記載がないようだが?」


「実は、道中に商団が二十匹程のゴブリンの集団に襲われていまして、唯一の生き残りだったのが、この子供なのです」


「何!?二十ものゴブリンの集団だと!?」


「はい。なんとかゴブリンは撃退しましたが商団を護衛していたゲイルという冒険者も残念ながら……」


「ゲイル・ビネガーか!?本当なのか!?」


 門番はゲイルと知り合いだったのか、驚いている。


「はい。瀕死だった彼を治療しましたが、間に合わずに……。奥さんとお子さんへの言伝を預かりました」


「そうだったのか……。すまない、知り合いだったものでな……」


 傲岸な態度は門番としての役づくりで意外といい人なのかもしれない。


「亡くなった一二名の方々は神聖魔法で神のもとへ送りました」


「それか……。ご苦労だったな……。時間を取らせてわるかったな。街に入って、ギルドへ報告するといい。彼の奥さんにも早く伝えてあげてくれ」


「はい。ありがとうございます」


 俺達は、ゲイルとアーシェのおかげで割とすんなり街に入る事ができた。


 メトの街に入ると、すでに日も暮れるというのに沢山の人々が行き交っている。街並みは子供の頃に旅行で行ったミュンヘンに似ている。


「随分と人が多いな……王都とかではないんだろ?」


「えぇ。王都ではないですが、メトには二十万もの人が暮らしているそうです。東西南北に四つの門があり、門の近くは大抵は市場になっているので、人が多いのだと思いますよ」


「すごい人……。それと、いい匂い……」


 ミーニャは大きなライトグリーンの目を更に大きくし輝かせている。そういえば腹が減ったな。市場だからか、肉が焼けるいい匂いがする。食べ物の露店も多いようだ。


「メトに冒険者ギルドは五つありますが、今日は商団の件の報告もありますし中央区の一番大きなギルドに行きましょう」


 アーシェは細かい話はまた後でと付け足し、俺達はアーシェの後をついて冒険者ギルドへと向かう。





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