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黄金のファフニール  作者: とっぴんぱらりのぷ〜
第1章 非日常の日常
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リヒト

 こっちに来てから3回目の朝を迎えた。知らない天井も3回目ともなると妙に落ち着く。ポリクリ時代はネトゲと先輩達の飲み会でぐっすり眠ることもなかったが、ここに来てからは、ぐっすり眠れている。変な夢は毎回だが……


「それにしても、俺が他人の身体を乗っ取っているとは……ヒドイ話だな。乗っ取られたほうにしては」


 誰もいない部屋で独りごちる。


『まったくですね。だから、早く返して欲しいのですが』


「返せる方法があるなら教えて欲しいよ。ついでに俺を元の生活に戻してくれ」


『残念ですが、その方法は僕にもわかりませんね』


「そうか……って、誰だ!?」


 部屋の中を見回しても自分以外の人間はいない。そうすると、また声が聞こえてくる。エコーがかって気持ち悪い感覚だ。


『やっと気付きましたか。僕があなたに身体を乗っ取られた可哀想な一般人ですよ。だから、身体のない僕は、あなたの頭の中で発言しています。今まではもう一人頭の中にいて意識がハッキリしませんでしたが、いなくなったようなので、こうしてあなたに話しかけるころができるようになりました』


「え?なにそれ……きもちわるい」


『それはこちらのセリフですよ!身体は動かせないし頭の中にもう一人入ってるし、大体あなたの態度はなんなんですか!言葉遣いは乱暴で態度も悪すぎですよ!』


「うぐっ!頭の中で叫ばないでくれ……頭いたい」


 頭の中の男が叫ぶとこめかみの辺りに鈍痛が走り、思わずうずくまる。


『僕の身体です。大事にしてください』


「お前が原因だろうが!とにかく、今は身体を返せない。悪いが頭の中で大人しくしておいてくれ」


『仕方ありませんね。今は大人しくしておきましょう。ミツハルは身体を返す方法を探してくださいね』


「いきなり呼び捨てかよ。お前の名前は?」


『僕の名前はリヒト。フォーリアで最強の魔導剣士です』


「自分で最強とか言っちゃったよ……まぁ、よろしくなリヒト。ところで、この身体に俺が入る前に何かなかったのか?それがわかれば身体を戻す方法も見つけやすいと思うんだが?」


『僕はメトの迷宮街へ旅をしていました。夜遅くにムルステ村に到着し、宿を探そうと村を歩いていたら……』


「いたら?」


『そこから先は憶えてません。気づいた時には身体動かしてたのがミツハルでした』


「それだけ?」


『はい。それだけです』


「ちっ。使えねーな」


『なっ!ホント乱暴な物言いですね!友達とか少ないでしょう!?』


「うるせぇ!友達なんかいなくても生きていけるんだよ!無駄話は終わりにして、さっさとメトの迷宮とやらに行くぞ」


『図星でしたか…… なんかすみません』


「謝るな。虚しくなってくるじゃねぇか」


『お願いする。ミツハル、僕をメトに連れて行ってくれ。果たさなければならない使命があるんだ。しばらく身体は自由に使ってくれて構わない』


 最強とか使命とか、中二病か?


『考えていることわかっちゃうんですけど?中二病が何かわかりませんが、馬鹿にしてるでしょう?』


「考えていることまでわかるのかよ!きもっ!ちなみに中二病ってのは俺の国では英雄っていう意味だ」


『そ、そうなんですか?』


「そぅそぅ。だから、英雄が一緒にいてくれるなら俺が帰るのもお前に身体を返すのも余裕だな!」


『そうですね!いくら強いといっても一人だとちょっと大変かなぁと思っていたんです。一緒に頑張りましょう!』


「チョロいな……」


『何か言いました!?』


「いやw何も?」


 リヒトに鎧や武器の装備を教えてもらい、俺達はアーシェが待っているであろう礼拝堂へと向かった。








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