白い世界
大体、異世界なのになんでドラスレの話になるんだ?アイラさんは俺と同じように異世界に飛ばされたのか?
「わ、私とファフニールは今もこの世界の何処かに封印されているの……」
「封印?じじいから聞いた話と違うくないか?闇の魔術師が誑かして悪さしたのを倒した。ってきいたぞ?悪足搔きに巣に逃げ込んでるって話だったが」
「そんな話はウソよ!私とファフニールは何も悪いことはしてないし、“あの人”は私たちを騙したりしていないわ!」
「おいおい……私とファフニールって……アイラさんが龍の神子ってヤツなのか?」
「龍の神子っていう呼び方はわからないけど、私はファフニールに選ばれて、ファフニールと一緒に過ごしてきたわ」
「この世界の人間の話だと龍の神子っていうのは英雄と一緒にファフニールと戦ったという話だし、龍の神子とやらが大魔法でも使って眠りについたってのが俺のイメージなんだが」
「はっ!英雄?笑わせないでよ。“あの人”の力とファフニールの宝を狙った盗っ人よ!」
アイラさんが侮蔑を込めて言う。
俺のアイラさんに対するイメージは聞き専で物静かな人だと思ったんだが……
「まぁ、俺にはどっちでも関係ないけどな。それで、質問に答えてないんだけど?俺は何に巻き込まれたんだ?アイラさんも俺と同じ日本から来たのか?」
「私はこの世界の人間よ。私とファフニールは封印されているんだけど、意識だけ世界を越えることができるの」
「へぇ。それで?」
俺の素っ気ない返答にアイラが驚愕の表情を浮かべる。
「へぇって。凄いと思わないの!?自由に異世界に行けるのよ!?ネットゲーマーなら憧れの存在でしょう!?」
「いや、俺はそこまでネトゲ中毒じゃないし、意識だけってのがなんかしょぼい」
アイラは今度はガッカリした表情を浮かべる。忙しいヤツだ。もうアイラでいいよな?
「もう一度聞くけど、俺は何に巻き込まれたんだ?」
アイラは目を逸らし、口笛を吹く仕草をする。漫画かよ。
「封印されているから……。他にやる事がなかったのよ……。だから、色んな世界に行って遊んでたんだけど……私とミツハル君の意識が混ざっちゃったみたいで、一緒に戻ってきちゃったのかな?ごめんね」
最初は申し訳なさそうに話すが、最後のほうは“てへぺろ”だったぞ。
「つまり、暇だったから異世界で遊び歩いてたら、善良な一般人を巻き込んで連れてきたと?もちろん原因とか帰る方法はわかるんだよな?」
「わからないの。なんで意識が混ざったのか、今までこんなことなかったから……ファフニールなら知っているかもしれないけど」
「じゃぁ、そのファフニールとやらにあわせてくれ」
「ファフニールは……何処にいるかわからないわ。応えてくれないの」
「はぁ!?一緒だったって言ってなかったか?じゃぁ、お前は何処にいるんだ?」
「私はたぶんメトにあるルグ教の神殿にいるわ。ミツハル君、お願いよ。私の封印を解いて!なんだか嫌な予感がするの」
「どうすれば封印が解けるのかわからないが、きちんと説教もしたいからな。まぁ、行ってやるよ」
「ありがとう。待ってる。それと、大事な話がもう一つ……ミツハル君の身体は別の人の身体よ。意識が私の他にもう一人混ざってるの。もうすぐ私の意識は消えちゃうけど、身体の持ち主の意識は消えないわ。彼の事も助けてあげて」
「ちょ、なんだよそれ……俺は別人の身体乗っ取ってるのかよ!助けるってどうやって」
「私にはなんでミツハル君がその人の身体に入ってるのかわからないわ。彼と話してみて……私もそろそろ……」
全部言い終わらないうちにアイラの輪郭がぼやけていく。まだ聞きたいこともあるが、俺の意識もハッキリしなくなり、白い夢の世界から暗闇へと落ちていく。




