戦国桃太郎
昔話の桃太郎を、戦国時代を舞台にアレンジした短編コメディ小説です。
よかったら最後まで読んでいただけたら幸いです。
昔、昔の物語。
これは今から五百年ほど前の時代の物語である。
--享禄2年--
西暦でいうと、1529年の事である。
備前国は岡山の地に、宇喜多という姓の、とある老夫婦が住んでおりました。
ある日、お爺さんは山に柴刈りに、お婆さんは川に洗濯に行く事になりました。
「では、婆さんや。ちょっくら、柴刈りに行ってくるべ。夕方までには帰ってくるからのう。」
「そいじゃあ、あたしは川へ洗濯にでも行きますかね。」
「婆さんや。くれぐれも気を付けてのう。」
「あいよ。爺様もあまり無理をせんようにのう。」
「んじゃあ、行ってくるからのう。」「あたしも行ってきますねえ。」
お爺さんは、住んでいる屋敷から、一里ほどの所にある山に着きました。
お爺さんは、柴を刈っては、それを村や町で売るという生業をしておりました。
良質の柴はないかと、お爺さんは辺りを見渡したところ、とある金色に輝く柴を発見しました。
「あんらまあ!! なんじゃあ、あの黄金の柴はあ! 見た事も聞いた事も無いべえ!! 」
お爺さんは早速、仰天しながらも、その黄金の柴に近づきました。
……すると、真っ赤な顔をして角が生えている、巨躯の鬼達が三体、やって来ました。
「おいっ!! 貴様! 俺達が育てた黄金の柴に何をする!!! 」
鬼達の怒号で、お爺さんはすっかり腰を抜かしてしまいました。
「ひ、ひえ〜っ!! な、何もしてませなんだ。かかか、堪忍してくだせえませ〜!! 」
「問答無用!!! 懲らしめてやる!! 」
…………お爺さんは、柴刈りどころか、鬼達にシバかれてしまいました。
そして、ひときわ図体が大きな鬼が言いました。
「ワッハッハッハ! ワシは尾張の鬼柴田勝家じゃ!! 親分のお宝に手を出すからじゃ!! 」
一方、川に洗濯に行ったお婆さんはというと…………。
耳に心地よい川のせせらぎの中で洗濯をしておりました。
しばらくすると………………川の上流の方から、大きな桃と栗が、どんぶらこ。どんぶらこ。と流れて来ました。
「な、なんじゃあ! あの桃と栗は。あんな大きな桃栗は、はじめて見るわい。どっちも美味しそうじゃのう。
…………しかし、どっちか一つしか持てないわい。」
お婆さんは少し思案をしたあげく、大きな桃の方を選択して、洗濯はそっちのけでその桃を背負って屋敷に帰りました。
屋敷に帰ると、お爺さんは大怪我をして横になっていて、お婆さんはというと、大きな桃を背負っているではないか。
「爺さんや!! 」「婆さんや!! 」
お爺さん、お婆さん共に腰を抜かしてしまいました。
そしてお互いに、事情を説明しました。
「爺さんや。身体の方は大丈夫かい? 」
「ああ、婆さんや。なんとかワシは大丈夫じゃ。
……しかし、その大きな桃は見るからに美味しそうじゃのう。」
「そうだねえ、爺さんや。この桃を食べれば怪我にも良いかも知れないねえ。」
早速、お婆さんは包丁を用意して、大きな桃に包丁の刃を入れようとした途端、パカーンと、桃が真ん中より真っ二つに割れました。
…………すると、その大きな桃の中から、元気な男の赤子が飛び出してきました。
「婆さんや!! こ、これは一体、どういうことじゃあ!!!! 」
「爺さんや!! きっと、この子は子供がいない、わたしらへの天からの授かりものじゃあ!!!! 」
と、その様な訳でその赤ん坊は、宇喜多桃太郎直家、通称、桃太郎と名付けられました。
----数年の時日が経ち………………桃太郎はすくすくと育ちました。
桃太郎は、桃から生まれたという事で、辺り一帯で評判になりました。
少しづつ執筆して行きますので、完成までよろしくお願いします。