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―一幕 魔女の邂逅と決別―

 ある昔、そこには二人の魔女がおりました。


 二人は互いを互いに、東方の魔女、西方の魔女と呼んでいました。


 呼び方は固いわけではありません。二人には名前が無かったのです。


 二人が知っている事は自分達が魔女だと言う事。


 そして、魔女は人間から虐げられる存在だと言う事だけでした。


 二人は「人」である以前に「魔女」として扱われていました。


 しかし、何故自分が魔女であるのかを知りません。


 二人が覚えている事は、互いが西と東の方角に向かい合い意識が目覚めたと言う事だけでした。


 それが二人の始まりであり、出会いでもありました。


 二人は、人里からはとても遠くにある森や洞窟を行き来して生活していました。


 魔女だから、魔法が使える。


 しかし、それほど便利なものではありませんでした。


 まだ幼い彼女達は火を操ろうとすると、周りのもの全てが燃え上がってしまいます。


 風を操れば、あたりのものを全て吹き飛ばしてしまいます。


 二人はまずは、魔法を自分達で制御できるようになることから始めたのです。


 炎を呼び起こし、水を呼び出してそれを消す。


 基本的な自然法則を知らない二人は互いに協力し合い、知識をつけていきました。


 知識を養いつつ、魔法の制御を覚える事で二人は自然に囲まれた環境の中、成長していったのです。


 魔女は魔女でも、人は人です。


 動けばもちろんお腹も空きます。


 自分達で食べられるもの、食べられないものを探し、見極め、知恵を学びました。


二人の生活は十数年続き、やがて大人になりました。


 大人になった二人は体も成長し、魔法も自在に使えるようになりました。


 二人は風を利用して、人々の生活や様式などを少しずつ情報として聞き入れてはいました。


 しかし、時が経ったとはいえ、人が魔女を嫌っている事が変わるわけではありませんでした。


 それでも二人の興味は今や、人里での生活に向いていました。


 自然の中での暮らしを続けてきた今となっては慣れたものだがやはり、たくさんの人が集まっているという点に魅力を感じていました。


 人里へ移り住むには「旅人」という立場に向かうのが良いと考えました。


 時折、風で聞こえてくる言葉の中にはよその里や村から放浪してきたという者がいました。


その者達は今までに訪れた里や村、さまざまな話をしているのが聞こえてきました。


あの村ではこんな風習があった。あの地帯では雨風や砂嵐に見舞われ、大変だったなど。


 二人はまれに聞こえてくる「旅人」の話を聞くのがいつしかある種の楽しみになっていました。


 自然の中でしか過ごしてこなかった二人にとっては、経験した事のない話ばかりでした。


 そして、二人は人里へと旅人として放浪しようと考えたのです。


 とはいえ、せっかく制御できるようになったこの「魔法」を教えたい、広めたいという好奇心もありました。


 自然法則に従う事のない、自分達だけが使役していると分かったこの力。


 独占するわけでもなく、自分達だけが持っているこの力。


 「人」である以前に「魔女」である。


 それはつまり「魔女」であるが「人」の身でもあるという事を示している。


 ならば自分達だけが使えるというわけでもないと考えました。


 しかし、東の魔女はこう言いました。


―教えて使えるようになってしまっては、他にも魔女が増えてしまい、そのものは私たちのように虐げれるようになってしまう。


これに対し、西の魔女はこう答えました。


―皆が魔法を使えるようになれば、私たちも魔女である事を隠さなくてもいいようになる!!


 十数年、共にしてきた二人の人生の中で初めての大きな対立でした。


 東の魔女は、魔法を人に教え、広めるべきではないと。


 西の魔女は、魔法を人に教え、広めるべきであると。


 二人の討論はいつまでも続きました。


 共にしてきた二人、共にした人生、同じ魔女という立場。


 若干、喧嘩腰の討論の最中でも二人は同じことを考えていました。


―なにか、なにか二人でこれからも進む道はなにか無いのか……


 それでも二人の意見は離れたまま、互いが納得できる答えを見つけ出す事はできませんでした。


 結局二人は、それぞれのやり方を貫き通すために分かれて人里へと向かう事になりました。


 お互いが、お互いの信じた道を進むための結論でした。


 東の魔女は東の方角へ。


 西の魔女は西の方角へ。


 かつて向かい出会い、始まった方角を背中合わせに立っていた二人。


 背中合わせの方角は相手の進む道へと変わり、進んでいく事となりました。







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