#0 始発点
「ロベリアさま、ついに侵入者が現れたようですが、いかがいたしましょう」
「そうですか……。せっかく<禁忌>を使って世界の恒久平和を実現したというのに。名前は?」
ふう、と私は嘆息する。もう少し、この平和を堪能していたかった。だけど、それは無理のようね。<これ>がある限り。
「詳細は不明ですが……。<勇者>かと思われます。ロベリアさま、ここは私めが」
「いいえ、あなたはいつも通りの仕事を。それと、その呼び方、やめてほしいです。ロベリア、と呼んでください!」
「承知しました、ロベリアさま」
臣下の相変わらずの態度に、また嘆息する。
いつか<勇者>がやってくるとはわかっていたものの、こんなに早いとはね。私は指先でトランプのカードをいじくりながら、臣下に告げる。
「対<勇者>については、いいカードがこちらにあります。私自ら対策を打ちましょう」
自分が卑怯な手を使おうとしていることくらい、わかっている。だけど、<これ>を奪われるわけには……。
「ですがそれでは!」
「わかっていますよ。ですが、やるしかないんです。命令に、従ってくださいませんか?」
「了解しました、ロベリアさま」
素直に下がった臣下は、恭しく頭を下げたまま、部屋から退出した。そして、私も立ち上がる。
「さて、はじめましょうか、<勇者>さん。お互いの生存をかけた、<サバイバルゲーム>を」