四人組、新たなる旅立ち!
今回は主人公が遭遇した四人組のお話です~視点無しです
「なんなのアイツ!本当にムカツク!」
四人組の紅一点である田中雅は隠しもせず苛立ちを仲間にぶつけていた
「そう言ってやるなミヤビ。彼女の言うことには一理ある。」
雅の言葉に淡々と答えるのはメンバーの中で僧侶の役割を果す山中玲二だ。
玲二の言葉に他の二人も同意するように雅をたしなめる
「彼女が先程言っていたが広場の男の一件で、同じ境遇にある俺達も信用出来なくなるのは当然だろ」
「そうだな…それを考えると俺が彼女の肩を掴んだのも怖がらせちゃったのかもなー」
玲二の言葉に頷きつつ困ったように答えたのは先程リルに話し掛けた青年、新井信吾だ。
「でもよー?この世界の事だって分からねーのに同じ被害者同士も信用出来ねーなんてこまらねーか?」
不安げにそう溢すのはこのパーティーでも一際ガタイが良く大きな盾を背負い重装備な青年土田啓介だ
「あぁ、参ったね。頭の痛い事態だよ全く…あの神とやらの話では俺達はもう元の世界には戻れないだろうしね」
玲二は眼鏡を指で押し上げ腹立たしげにそう言う。それに対していち早く声を荒げるのは雅だ
「は?何?嘘でしょ!?あんな訳のわからない奴の言葉を信じるっていうわけ!?」
雅の様子をチラッと横目で見て厄介だとばかりに溜め息を吐き玲二は雅の言葉には答えず続ける
「広場の男が使ったようなものが俺達にもそれぞれ3つの能力なりアイテムとして与えられている。今確認出来る間に確認しないか?」
玲二の言葉に同意したメンバーは自分のステータスを開く。そして雅はというと、最初は駄々をこねるも誰も構ってくれないと分かると渋々自らもステータスを開いた
「やはり、他人の開いた画面は見れない様だな…仕方ない。皆それぞれ教えてくれ」
「それじゃ、俺から。名前は良いよな?えーっと属性は火で固有スキルは~世界一の剣術、見透す目だな!あとアイテムに聖剣エクスかリバーがある」
信吾のそれは王道の勇者向けのスキル、アイテムだった。告げられたそれに玲二は特に驚くこともなく頷き次を催促するように啓介を見る
「俺の属性は雷!固有スキルが難攻不落の壁と強靭な肉体とアイテムに守護の加護付き装備だぜ!」
啓介は自慢気に自らを固める美しい白銀の鎧やお揃いの身の丈を越える盾を軽々と背から外すと地面にドカッと音を立てて突き立てる
「じゃあ次は俺だな…属性は光。固有スキルは癒しの波動、神の怒り、アイテムに光の神の杖だな」
玲二はそういうと自分の持つ自らの背を頭ひとつ分高い美しい造形の杖を皆に見せる。その杖は金で作られており、杖の側面には植物の蔓が這うように装飾が施されていて一際目を引くのは杖の上につけられた美しいダイヤを思わせる宝石だ
「わぁー!綺麗!私それ欲しい!私のと交換してよレイジ!」
雅は玲二の持つ美しい杖に見惚れ先程喚いていた事など忘れたように興奮した様子で玲二に詰め寄る
「何を言ってる?嫌に決まってるだろ?それにこれは俺に与えられたものだ…つまりお前には使えない可能性が高い」
玲二は雅に冷たくそういうと他の二人に向き直る
「じゃあお互いのスキルについて詳しく話そうか…名前だけじゃ分からないしね」
二人は雅と玲二のやり取りにひやひやしつつ玲二の提案に頷く
「俺の世界一の剣術は、そのままの力で戦うとき俺は無敵の剣術使いになれるみたいだな。あと見透す目は遠くの物でも良く見えるし、隠された物でも見つけられるらしい」
「それは消費MPはあるか?」
「えーっとー見透す目はあるけど剣術の方はないみたいだな」
「つまりお前は剣術に関してはチートだと言うことだな…簡単に言えばそれこそ今までずっと剣術を学んできた戦士と変わらない」
玲二は少し考え込むも自分の言葉に喜んでいる信吾にそれ以上深くは言わなかった
「俺の難攻不落の壁はその名の通りこのスキル発動中はどんな攻撃も俺の能力が及ぶ範囲内では通らないらしーぞ!んで~この強靭な肉体は消費はねーみてーだ!」
啓介の言葉に頷き玲二は啓介に尋ねる
「ところでその強靭な肉体とはなんだ?」
玲二の言葉によくぞ聞いてくれたとばかりに鎧を脱ぎ捨て自らが得た筋肉がはち切れんばかりの上半身を見せる
「見てくれよ!この筋肉!折角願いが叶うなら筋肉ムキムキの体が欲しくてよ!この体は正に鋼の体がでどんな刃物も魔法も通さないらしーぜ!」
その暑苦しい様子に雅は当然ながら他のメンバーも若干引いていた
「まぁ、人の好みはとやかく言うつもりはない。俺の能力癒しの波動は消費はあるがどんな傷も病も癒せるみたいだな。あと神の怒りは光属性最強の魔法らしいな」
三人の能力について話終え残るはという感じで雅を見れば答える気が無いとばかりに頑なに口を閉ざしている玲二はその様子にやれやれと首をふり一先ず啓介に鎧を着るように言う
すると、どんなに態度で示しても玲二が自分に謝る素振りも見せず自分の希望を叶えようとしないのにしびれを切らし雅は玲二に言い放つ
「レイジと一緒なんてもう嫌!アンタこのパーティーから消えてよ!」
言い終えるとツンとそっぽを向き玲二の返答を待つ雅に玲二は興味ないと言った口調でそうかと言えば雅から背を向け歩き出す
その様子に慌てるのは信吾と啓介だ。二人は慌てて玲二を呼び止める
「ま、待てよ!レイジ!ミヤビの我が儘はいつものことだろ?」
信吾の言葉に玲二は振り返り冷たい眼差しを向ける。
「いつもだからなんだ?これはもう疑似体験のゲームじゃないんだ…恐らく死ねばもうコンティニューなんて出来ないし、怪我をすれば痛みだって感じる…そんな状況でこれ以上そいつのお守りも我が儘も聞いてられない…分かるだろ?」
玲二は今まで耐えてきた物を吐き出す様に信吾に言った。そもそも、彼らがこの状況に陥った事も元を遡ると雅の我が儘にあった。
彼らは元々別のオンラインゲーム内での仲間で、パーティーを組みクエストをこなす間柄だった。そんな中、女子プレーヤーが少ない為チヤホヤされていた雅がこの《クリエイトー3つの贈り物ー》をしようと誘いをかけてきて今に至るのだ
玲二は元々雅のことを気に入らなかったが今回の事でついにぶちギレたそれと同時に、このままこいつを連れていれば自分の身が危うくなる可能性が極めて高い事も意識した
「でもさ?こんな危険な所で女の子残して行くのはさ?」
信吾は玲二の顔色を伺いつつおずおずと言う。しかし、それがどうしたとばかりに玲二は信吾を見やる
「そう思うならお前とケイスケで守ってやればいい。俺は正直そいつが元々気に食わなかった…それはそいつも一緒だろ?なら俺が離れることに問題なんて無いだろ?」
玲二の言葉にそれ以上言えることがないのか信吾は黙って俯くそして玲二は止めていた足を再び進めた
遠ざかっていく玲二に雅は満足げに微笑むもそれはすぐ崩れることになる
「ちょ!シンゴ!ケイスケ!?二人ともどこいくつもり!?」
雅の言葉に二人は吹っ切れたように笑うと揃って言う
「「レイジのとこ」」
そして雅が後ろでごちゃごちゃ言うのも聞かず二人はお互い玲二の肩を掴み一緒に歩を進める
「良いのか?」
驚いた表情の玲二に二人はニッと笑い
「レイジが居ないとつまらないからな!」
「そーだぜ!この世界だって俺ら三人揃えば問題なしだろ!」
二人の言葉に玲二はフッと笑い頷く
悲劇に見舞われるのは我が儘な女の子雅ちゃんだけでしたね♪さてさてどうなっていくのかな?w
次回は主人公リル視点です~