探偵志望 02
「……変われるぞ、俺たちは……!」
昇降口近くの廊下。
そこに置いた長机が我が探偵部の出張所だ。
封筒を手にした俺は全速力でそこへ向かった。
「この部は変わるぞ! 黒田!」
「……突然何よ?」
文庫本を閉じてこちらを見る黒田。もう一人の部員だ。唯一の女子部員だ。まあ、俺も唯一の男子部員なのだが。
「見ろ、この怪しい封筒。これは俺たち探偵部の出番だぞ」
「……正確には部ではなく同好会だけど。あと落とし物預かってるのは生徒会室よ」
「待て。この封筒、何かあるに違いない。何らかの事件にか変わっているはず……。不正な金が動いた証拠とか……!」
「バカバカしい」
いやいや、突飛な発想なんかではない。
何かあるはずだ……。
とは言いつつもさすがに中を見るのはためらわれる。
「あら。竹中、依頼人みたいよ?」
「何っ?」
顔を上げるとそこにはいかにも気弱そうな男子が立っていた。キョロキョロと落ち着きがない。
「あの……探してほしいものがあって……その……」
その男子は言うべきかどうかためらい、迷っていた様子だったが、意を決したかのように言った。
「封筒を探してまして……」
これは……俺が持っている封筒のことだろうか? おそらくはそうだろう。
横で黒田がやれやれという顔をしている。
まぁそうなるだろう。コレを渡せば依頼完了なのだから。
喉を整え、俺は言った。
「それは大変だ。わかりました。請け負いましょう」
バサッ。と、横で黒田が文庫本を落とす音が聞こえた。
気にせずに続ける。
「……任せてください」