告白者 01
「暑いな……」
屋台が立ち並ぶ中庭。
鉄板の熱気に耐えきれずに呟いた。
天正高校学園祭も3日目。最終日だ。
ついに、ついにこの日が来た……。
今ここで宣言しよう。俺、高橋は今日告白をする!
あぁぁぁ、何かもう緊張してきた……。
いや、落ち着け、俺。
この日のために準備は完璧だ。肝心なトコでアガってしまう性格を考慮して書いてきたラブレター。
狙いは後夜祭の時だ。
「高橋!」
「ひゅ!?」
やばい、変な声が……。ていうか、この声って……?
「た、立花ぁ?」
振り向くとそこには告白する予定の立花がいた。ショートカットで前髪をピンで止めている。クラスは違うが部活は同じ剣道部だ。
「何でそんな驚いてんの? てか今日ってクラス屋台の当番?」
「いや、俺は昨日だから……」
「ふーん。あ! 暇だったら部活の屋台手伝って! 人手足りなくてさー」
「あれ?女子剣道部って出し物やってるの?」
ちなみに男子剣道部はやらない。思い出作りよりも面倒くささが勝ったのだ。
「あー。結局ギリギリに女子剣道部でやろうってなったの」
「何やってんの?」
そう聞くと、立花はよくぞ聞いてくれましたとばかりに言った。
「焼きそば! 剣道部だけに……メンを扱う店!」
……痛い! ドヤ顔が痛いよ!
そしてそれに満足したのか、そのまま手を振って去っていった。
「絶対来てよねー! お客としてでも良いからさ!」
あぁ、あんな感じだけど俺は好きだ。この気持ちを伝えたい。もう肝心な所で失敗なんてしない!
「ん?」
ふと、ポケットに手を入れて違和感に気づく。咄嗟に他のポケットも確認する。
……無い。ラブレターが無い。
一息。
これからはじまる、長い長い1日。俺の物語が幕を開けるのだ。
開幕の叫びをあげよう。
「どうしていつもこうなるんだぁぁぁ!」