とある高校の学級新聞の記事より
お題:暴かれた笑い声 必須要素:ラガーマン
こんなうわさが、今、私たちの学校で流行っているのをご存じだろうか。夜な夜な、校庭のラグビー場で、笑い声が聞こえてくるというものだ。新聞部は、今回、その謎を解明することにした。
本題に入る前に、断っておきたいことがある。これは怪談などではない。もちろん、怪談の特集ではあるが、謎を謎で終わらせるつもりはない。それは、我々新聞部のプライドにかけて誓う。絶対に、謎を解明して見せる、と。
私たちは、6日、さっそく問題のラグビー場を調査することにした。時計は6時を回っている。日が沈むのが早いこの時期、あたりはすっかり真っ暗だった。取材班の一人、Aが部室に忘れたカメラを取りに行っている時、残った私が、ぼんやりと一人でラグビー場を眺めていると、本当に聞こえてきたのだ。問題の、笑い声が――。
私はすかさずICレコーダーを取り出した。カメラを取りに行ったAの帰還が待ち遠しい。音声を録画しても、この学級新聞に載せられないからだ。せいぜいこの音声ファイルの有効な活用法は、あとでじっくりと聞いて、正確に笑い声をここに文章で記すことだけだ。では、とりあえず、その声を皆様に聞いていただこう。「うーはっはははははっははははっはははははっは! はははははっは!」という感じだった。
あまり待っていても時間が惜しい。私はAの帰還を待たずに、なぞの笑い声(ここでは仮に、幽霊としする)に突撃取材を試みた。前代未聞の挑戦だ。おそらくこの新聞は歴史に残るだろう。永久保存版だ。ギネスに載るかもしれない。世界で初めて、幽霊に取材した新聞と。よもや、生徒会や教師たちは、わたしの記事でこの学校が日本一の高校になることを予想だにしていない。くっくっく、これは将来が楽しみだ。と、希望を胸に、ラグビー場の中心へ走った。
周りには雪が積もっている。季節は冬。幽霊が出るには季節外れだが、この際気にしない。そして、私は、なんと、見事、幽霊への取材に成功したのである。以下は、私がしたインタビューの内容だ。
――こんな時間に笑っているなんて、どうしたんですか?
幽霊「いやーすいませんね。気合を入れていたんですよ。ほらそろそろ花園が近いでしょう? だから、こうして、誰にも迷惑をかけないように夜中、いつも練習しているグラウンドに立って、『絶対勝つぞー!』って自分を鼓舞していたんです。ほら私、ラグビー部のキャプテンですから」
なんと、これにて正体は暴かれた。暴かれた笑い声は、ラガーマンだったのだ。写真がないのが残念である。