怪しい敗北
お題:怪しい敗北 必須要素:ガラパゴス諸島
「ガラパゴス諸島ってなんだ?」
男は疑問を投げかけた。その言葉は彼にはなじみが薄く、全く想像がつかない。かろうじて、何かの諸島であることは理解できるのだが、それくらい、日本語が読めれば誰だってわかる。
「なんだと思う?」
投げかけられた女は、挑発するように答えた。
そして、「ヒントを出すから、十分で答えられなかったら負けね」と付け加える。
「なんで勝負になるんだ? まあいいけど。じゃあさっそくヒントをくれよ」
「そうねえ、じゃあまず。ガラパゴスって言葉は知っている?」
「ああ、最近よく聞くよな。ガラパゴスケータイとかって。時代に取り残されたとか、そんな意味だっけか?」
男は頭の中の辞書を捲って答えた。
ちなみに、彼はその、いわゆるガラケー愛用者だ。スマートフォンとやらはなぜか気に入らない。特に、タッチスクリーンが最悪だ。スマートフォンは触ったことがないが、アイ○ッドタッチで経験している。3回に1回くらい思いもよらぬ場所をタッチしているのだ。そのせいで、何度興味もない広告をタッチして、ア○ストアが開いたことやら。思い出すだけで嫌気がさす。
閑話休題。と男は嫌な記憶から抜け出して、言った。
「つまりなんだ、時代に取り残された諸島ってことか? なんだよ、アトランティスみたいなのもんか?」
「違うわよ。何よそれ。時代に諸島が取り残されることなんて、あるはずもないじゃない」
「そうだよな。意味わからないよな。うーん。じゃあ次のヒントくれよ」
たった一つのヒントでは、やっぱりガラパゴス諸島の意味の見当がつかない。
「じゃあ次はーそうねえ……」
時間を稼ぐように、女は勿体つける。
「いややめてくれよそういうの。あと三分しかねえよ制限時間。早く次のヒントくれって」
「うーんじゃあ、諸島って、島が諸々あることよね?」
「そうだな、たぶん。感じをそのまま読んだらな。だからなんだ」
「ガラパゴスという島が、諸々あるわけよ」
言い換えただけである。それくらい、男でもできる。
「だから……?」
「あ、あと一分~!」
「もしかして、女、お前もわかっていないんじゃないのか? ガラパゴス諸島の意味」
「さあ。どうでしょう?」
「正解がないんじゃあ、俺に勝ち目はねえじゃねえか! こんなの勝負として成り立ってない!」
男の悲痛な叫びがこだまする。
そして、制限時間がやってきた。
おしまい。