#5.VS御影第一高校(終盤)
七回表…ツーアウト満塁で、三二の打席…
飯島は息遣いが荒い。
十五夜『テルは疲れてるみたいだな…それも無理はない…もう100球以上投げている…』
三二『ピッチャーは疲れてるみたいだな…っしゃ!ホームラン狙える!』
満月『さすがにホームランはキツイな…;最悪フォアボールで十分だ;』
満月は外角に構えた。
飯島は一瞬嫌な表情をしたが、しぶしぶうなずいたようだった。
三二『なんだあいつ?キャッチャーのサインを嫌がっただって?じゃあ、俺の選択は…』
飯島は外角へスライダーを投げた。
三二は投球を見送った。
主審「ボール!」
満月『フローラル君、外角は捨ててるみたいだ…』
満月はここでタイムをかけた。
三二はバッターボックスから出て素振りを行っている。
満月「どうしたんだ?」
飯島「俺、もう一度内角のスライダーで勝負したいんだ!」
満月と十五夜は驚いて飯島を見た。内角のスライダーは三二にホームランを打たれた時の球なのだ。
十五夜「お前、本気か!?」
満月「それでまたホームラン打たれたら…」
飯島「ホームランを打たれなきゃいいんだろ!」
2人は飯島の気迫に押されている。
飯島「あいつからは何か感じるんだ!」
満月「フローラルの香りかい?」
飯島「いや、そんなんじゃない!もっと別のことさ…」
十五夜は悩んだ。そして重い口を開いた。
十五夜「わかった…だが一つ言っとくぞ…ホームランは打たれるなよ!」
飯島「…ああ!」
3人はそれぞれのポジションに戻った。
三二「…」
飯島は内角のスライダーを放った。
三二『やっぱこうでなくちゃ!お前も男だぜ!飯島!』
カキーン!
飯島はセンターの方向を振り返った。
スタンドには入らなかったが、センターの頭上を越えてフェンスにぶつかった。
ランナーは1人、2人と帰ってくる。
そしてファーストランナーの五竹もホームへ突っ込んできた。
十五夜「早くホームに投げろ!」
立石「言われなくたって…!」
立石の返球はホームへ!
五竹「クッ!間に合え!」
五竹は決死のスライディングでホームへ飛び込んだ!
満月のところへボールは…
帰って来なかった…
ボールは飯島がカットしていた…
満月「!?」
五竹「よかった…;」
十五夜「テル!どういうことだ!」
飯島「今の返球はそれてた…」
十五夜「だけど3点も入れられたんだぞ!」
飯島「冷静さを失ってたぞ…」
十五夜「えっ…!?」
十五夜は飯島を見た。
三二はセカンドベースに立っている。
鍋田「君、本当にフローラルの香りがするんだね;」
三二「ちょっと洗濯失敗しちゃって;」
鍋田「でもすごいよ…君ひとりで飯島先輩から5点も取るなんて;」
三二「飯島投手もすごいと思うよ?自分の芯を通して勝負に来たんだし…」
鍋田「結果的に君の勝ちみたいだけどね;」
三二「まぐれさ;疲れているピッチャーからホームランを打ったとしても、俺は勝ったとは思わない。最初の打席で勝負は決まるんだ。俺にとっては…」
鍋田「へえ…」
※…言っておきますが、これは練習試合ですよ?(新6-3御)
飯島「さっきの返球はそれていたし、それていなかったとしても間に合わずにあいつをサードまで進めていたかもしれない…普段のマモルなら判断できたはずだ…」
十五夜はハッとした。
飯島は十五夜の肩に手を置いた。御影第一高校の監督は飯島に交代を命じた。
飯島「じゃ、俺はファーストにまわるよ…」
十五夜「テル…」
~選手交代(御影第一高校)~
飯島(投)→飯島(一)
八神(一)→高嶺(投)
飯島に代わった高嶺は四野を三振に打ち取った。
その裏、二宮は監督に交代の指示をした。しかし、監督は続投の指示をした。
二宮「えっ!?どうしてですか!?」
監督(新)「十川のスタミナ、田崎、竹若、市田の経験を考えるとまだ一浦に頑張ってもらわなアカンねん;」
十川怜王はMAX152キロの剛腕で球も重いため、長打はめったに出ない投手である。
だが、彼はこの前の試合に登板した上に元からスタミナがあまりないのが弱点である。
二宮はしぶしぶポジションに戻った。
一浦は疲れながらも好投し、高嶺、代打の井谷壁を打ち取った。
だが、扇原にツーベースを打たれた。
飯島『ピッチングもバッティングも今日は課題ばかりだなあ…;』
飯島は肩を回してバットを構えた。
二宮は一浦にカーブを要求した。一浦は息をハアハア言わせながらうなずいた。
飯島は一浦の初球をフルスイングしたが、ファールフライに終わった…
飯島『今日の俺は運が悪かった…;』
八回、監督は一浦に代打、土を送った。
監督(新)「一浦、お疲れさん。好投やったで」
一浦「ハイ…;」
一浦は息も絶え絶えに満足そうな表情を監督に見せた。
土は三振に取られた。
監督は調子の悪かった九住にも代打の市布を送ったが、彼も十五夜のファインプレーに阻まれた。
続く七浜も三振に終わった。
~選手交代(新寺学園)~
土(打)→十川(投)
市布(打)→市布(右)
~選手交代(御影第一高校)~
井谷壁(打)→下山(二)
十川「よっしゃ!今日もしまってくぜ!」
十川は気合をいれた。
その気合が現れ、十五夜、満月、橋枝を凡打に終わらせた。
九回表、新寺学園の攻撃は六車からだったが、六車は空振りの三振に倒れた。
続く八束はフォアボールで出塁するも、二宮がゲッツーに倒れ、チェンジとなった。
監督(新)「九回裏や!皆、気合入れて守りや!」
皆「ハイ!」
十五夜「諦めるな!まだ3点だ!」
監督(御)「そうだ!まだ逆転できるぞ!気合入れていけ!」
皆「ハイ!」
十川はフォークを放った。
立石「まだあきらめないぞ!」
ガキン!
立石「やべえ!詰まった!!!」
五竹はボールの処理に少しもたついてしまった。
立石「あぶねー;『ってかマジでフローラルの香りするわこのファースト;』」
三二「ドンマイ!五竹!」
五竹は三二に謝っているようだった。
次の打者、柘植の打球もサードへ転がった。
三二「ファースト!」
五竹は一瞬セカンドへ投げようとしたが、三二の掛け声通りファーストへ投げ、アウトにした。
御影第一高校は高嶺に代打、浦江を送った。
浦江はその期待に応え、ライト前ヒットにしてみせた。
監督(御)「よくやった!松枝!お前、浦江の代走だ!突っ走ってこい!」
松枝「ハイ!」
~選手交代(御影第一高校)~
浦江(打)→松枝(走)
四野『マズイ…相手のペースに呑まれかけている!十川!なんとか抑えてくれ!まだもつ筈だろ…!』
十川「ハア…ハア…なんのこれしき…ハア…ハア…まだいけるぞ…」
六車『疲れてるし!!;』
十川はなんとか下山を三振に取った。
これでツーアウト…
次の打者は今試合全打席ヒットを放っている扇原…
十川『チイッ!こんな時に…!』
十川は右肩に痛みを感じた。
監督(新)『アカン;アイツ、肩の痛みをおしてまで出とったんかいな;』
十川「ええい!こうなったら!」
十川はすごい気合で低めのストレートを投げた。
扇原「………」
カキーン!
快音が鳴り響いた。レフト七浜は打球を追った。
打球はフェンス直撃だ。
まず立石がホームへ帰ってきた。
さらに松枝もホームへ向かった。
七浜「だめだ!間に合わない!」
七浜はショートに中継した。
ショート六車はバックホームを断念した。
松枝「やったぞ!」
十五夜「よし!あと1点だ!」(新6-5御)
十川「チッ!」
十川は肩と首を回した。
二宮は彼の異常に気付いたようだ。
二宮「おい十川!肩…治ってなかったのか!?」
十川「まさか!平気さ!」
十川は強がっている。実は十川は前の試合の時に肩に強烈なデッドボールを受けていたのだ…
二宮「だけど…」
二宮は何か言いたげだったが、十川はそれを阻止した。
十川「とにかくあと一人抑えりゃ終了だろ?それまで俺が止める!」
二宮「…わかったよ;」
二宮はおとなしくグラブを構えた。
バッターは飯島だ。
飯島「ここまで来たら勝ってやるさ!」
飯島は精神統一してバッターボックスに入った。
十川の初球、外角高めのストレートを放った。
飯島はスイングしたが、当たらなかった。
主審「ストライク!」
飯島「くそっ!」
三二『アイツ…すごい気合だ!』
二球目、十川は力強いフォークボールを放った。
飯島はまたスイングするも空振りだ。
飯島「ああっ!」
十五夜「テル!まだだ!諦めるな!」
満月「そうだ!じゃないと卵焼き頂いちゃうぞ!」
飯島『2人とも…俺は…』
十川の三球目、低めのストレート!
飯島『…!』
カキーン!
打球は低い弾道で一二塁間へ!
十五夜「抜けるぞ!」
満月「行け!」
しかし飯島は走らずにフッと笑っている…
飯島『2人とも悪いけど俺は打てない…それに…』
三二『俺が…俺が止める!』
三二は球に飛びついた!
パシッ!ズザアアアッ!
四野は三二を見た。三二はうつ伏せになりながらも捕球している…試合終了だ!
飯島『卵焼きは入れてないんだ…』
主審「ゲームセット!この試合、新寺学園の勝ち!」
十川「よっしゃあ!」
四野「ナイスファイト!」
三二は照れくさそうに笑った。
三二「俺はいつもの練習の成果を試しただけさ;」
~試合終了~
新寺学園6-5御影第一高校
勝:一浦
敗:飯島
主審「お互いに、礼!」
両チーム「ありがとうございました!」
そしてそのあと…
三二「さてと、弁当食べようぜ!」
五竹「しかしまあこの後は御影のチームとの合同練習とはね;」
六車「あのチームの監督とは親しい仲らしいからね;ウチの監督さん;…ってか三二食べないのか?」
三二は弁当も食べずに何かを探している。
三二「それが…箸が…なくて;」
六車は大笑いだ;
六車「ハッハハハハ!お前今日なんか変だぜ!フローラルな香りに箸を忘れるなんて!」
五竹「笑ってやるなよ;」
その時、
飯島「三二…ちょっと来てくれないか?」
三二「え?」
三二はキョトンとしている。飯島が自分を呼んでいるからだ。
三二「いったい何のようで…」
飯島「とりあえず来てくれ;荷物ごとで!」
五竹「まさか、リンチでもやるのか?」
飯島「いや、三二に用があるだけだ;」
三二「そうだな;五竹、落ち着いて;行ってくるよ;ここにいても腹減るだけだし…;」
五竹は納得したようだ。
飯島は三二を十五夜、満月のもとへ連れて行った。
三二『何をするんだ…?』
3人は三二に何をするのか!?
続く!
~そのころののえる~
御影第一高校グラウンド…
のえる「皆さん…いませんね;」
???「…みたいだな;」←御影第一高校を偵察しようとしていた人
※それもそうです;練習試合を行っている場所は御影第一高校のグラウンドではないのだから;
のえる「ここだと思ったのですが;すみません;;;」
???「いや、泣くな;『本当に気分がコロコロと変わる女だな;』…とりあえず戻ろう;新寺学園というところに;」
のえる「はい;;;」