#1.拾って下さい!?
※出てくる地名(一部)と名前、そしてプロ野球チーム名と選手は全て架空のものです。
18:35…新寺学園グラウンド…
三二「あと1本お願いします!」
コーチ「おい三二;無理するな;もう5000本以上お前にノックしたぞ;」
三二「でも俺は甲子園に行きたいんです!お願いします!」
コーチ「仕方ないな…;あと1本だぞ?」
三二「はい!ありがとうございます!」
この野球に熱血な男は三二一。小さいころから野球一筋で育ってきた高校3年生の少年だ。
カキーン!
三二「よし!」
三二はちょうどいいタイミングで捕球してファーストベースを踏んだ。
コーチ「しかしお前もよくやるな;何でキャプテンにならなかったんだ?」
三二「俺もわからないんですよ;何でだろう…;」
五竹「多分その練習熱じゃねえの?なにせお前がキャプテンになったとき市布はケガするし後輩部員は7人ほど辞めちまったし…」
三二「それは根性がないだけだろ五竹…」
三二に話しかけたのは同じクラスの親友、五竹優。小学校時代からずっと同じクラスにいて、三二のよき理解者だ。
五竹「まあお前が何を言っても監督は聞く耳ないみたいだけどな;」
コーチ「まあ練習も大切だが、仲間も大切だということを知って欲しいということだろ。とにかくもう終わりだ。さっさと家に帰るんだ。家族が心配しているかもしれんぞ?」
三二「…」
2人は帰ることにした。しかし三二はうつむいていた。
18:57…帰り道…
五竹「コーチもわかってないな;三二は孤児だったってこと…」
そう、三二は1歳の頃に親に捨てられたのだ。原因は育児放棄…
三二「ああ。でも今はもう気にしてない。五竹がうらやましいよ…」
五竹「家族がいるのも楽じゃないぜ?ずっとこき使われるから俺;」
三二「いないよりはマシさ…でも俺には野球がある!絶対に名をとどろかせてやるさ!」
五竹「いつもうちは金鯨高校に潰されてるもんな;」
金鯨高校。地区大会で新寺学園が甲子園に行くという夢を幾度となく潰してきた強豪校である。
三二「ああ。でも今年こそは勝ってやる!絶対だ!」
五竹「俺もだ!絶対に勝とうぜ!」
三二「おう!」
2人は腕を組んだ。
五竹「おっと!俺はこっちだから、そんじゃ!」
三二「ああ、またな!」
五竹は左の道へ、三二はそのまままっすぐ歩いた。
足取りが重い…一人ぼっちだ…
いつもの街灯…いつもの塀…そしていつもの捨て人間…
ちょっと待て?…捨て人間…?
何かがおかしい…何でこんなところに人が…?
その人間を見てみると、見た目はだいたい10歳前後の女の子で、髪の毛はほんのりとしたクリーム色で瞳は淡い褐色と言ったところだろうか…
でもやっぱりおかしい…
三二「なんなんだアンタは!!!?」
三二は思わず声をかけた。
女「あ、きづいてくれました?」
捨てられている女は暗い顔一つせず、笑顔で三二を見ている。
三二「いや、気づくだろ普通!!!何してんだよ!!?」
女「捨てられてるので、ここで拾ってくれる人を待っているんです♪」
女が指したところには『拾って下さい』の文字が…;
三二「お前、家族とかいなかったのか?」
女「いましたよ♪」
三二『どうも調子が狂うなコイツ…』
女はまだ笑顔のままだ。
三二「じゃあそこに帰ればいいだろ;」
女「それがもうお家がなくて;」
女はそう言うと遺書らしき何かを広げて見せた。
『私が死んだとき、この家を売却し、我が娘であるのえるの通帳に売却した金額分の金を振り込む。その後ののえるの家に関してはのえる自らの手で購入することを命ずる…湯井武頼』
三二「家…捨てられたのか…お前…」
女「そうなんですよ;だからお家がないんです;」
三二は考えた。その時、女は通帳らしきものを見せた。
女「これだけのお金があるのでどうかそちらに住ませてはくれませんか?」
三二「!?」
三二は通帳を見て驚愕した。見たこともない額のお金が記録されている…;
三二「ちょっと待て!12億ってどんだけ金持ちなんだよ!?家買えるじゃねえか!!!」
女「それがですよ?『未成年に売る家は無い!』って言って皆断るんです;;;」
三二「勝手な奴らだなあ…;」
女「ですよね!?だから、私を助けるという意味で一緒に住ませて下さい!!!」
女は涙ながらに頼んできた。
三二「(本当は野球に打ち込みたいんだけど…)わかった;わかったから俺のカバンで鼻をかもうとするのはやめろ!!!」
女「ずぴぴー…;ありがとうございます♪あ、私は湯井のえるです!よろしくお願いします♪えっと…」
三二「俺は三二一だ。よろしく;」
のえる「はい!三二さん♪ちなみに私はこの見た目ですけど19歳です♪」
三二「えぇ!?」
…なんだか先が思いやられるなあ;と三二は思った。
こうして、三二に新たな住人が出来た…果たしてどうなることやら…;
マフ「感想待ってます!」
一条寺「野球か…俺も出してくれよ!!!」
マフ「新寺学園生としては出れないし、本名を出す羽目になるぞ?」
一条寺「構わん!」
マフ「わかった…検討しとく…」