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PACE1-3

仕事

 

「あのぉ、師匠?」

 

「…ぁ?」

 

「すごく眠そうなんですが。大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ、眠ることはありえない。」

 

「その自信はいったい何処から?」

 

「空の彼方から。」

 

「ぇ。」

 

「って答えた奴がいたな。」

 

 夜の十時。

書斎で何か書類整理のようなモノをしている師匠は、つまらなそうにあくびをした。

赤ペンでなにやら書き込むと、他のを取る。 

 

「んとに、やる気あんのかこいつらは…。ぁ、不正。何人目だ、まったく。本気で逆さに釣り下げるか。」

 

 とりあえず読め、と渡された分厚い本を、やっと一冊読み終えた僕は、手近の紙を引き寄せてみた。

象形文字みたいな字、僕からそれを奪った師匠は、なんだこの字は、と切り捨ててそれを飛行機に折り始める。彼の脳内はただ今混線中のようだ。

 

「ねぇ師匠。」

 

「なんだ?」 

 

話かけてみたけど、言葉がでてこない。なんとなくあわててボクは言った。

 

「明日、何日でしょう?」

 

「あ?17だろう。」

 

びっくり。師匠が覚えていた。顔に出ていたのだろう。師匠はぴくっと眉をあげた。

 

「顔にださない努力くらいしろ。」

 

「はぁい。」

 

「明日は出掛ける。」

 

「は〜い。…え?」

 

17日。そういえば、その日は毎月、師匠が部屋に閉じこもる日だ。

 

「いつも出掛けてないじゃないですか。」

 

「あぁ…。仕事が入った。」

 

「え〜…。」

 

「ついてくるか。」

 

「…ぇ?!」

 

予想外の言葉に目を丸くすると、師匠はひゅっと神飛行機を投げた。

 

「あぁ、ただし…。」

 

「?」

 

「あまり綺麗な仕事じゃないからな。お前には…むかない。」

 

「え?」

 

「悪魔の仕事に幻滅するだろう。それでも来たいなら勝手にしろ。」

 

勝手にしろ。って言われてもなぁ。深くため息をついて、僕はいった。

 

「連れていってください。」

 

「…わかった。言っとくが、気を抜くと死ぬからな。」

 

行くと言ったことに、少しだけ後悔した。



*******



珍しく朝早くから起きだした師匠は、真っ黒のスーツに身を包んでいた。

グレーのワイシャツに、黒ネクタイ。師匠の白い肌と、プラチナブロンドがよく映える。


「弥、こっちこい。」

 

手招きをされる。ぱたぱた走っていくと、服を押しつけられた。黒くてひらひらしてる。 

 

「ぇ?」

 

「着ろ。」

 

「は?」

 

「お前言葉も通じないのか。猿か?」

 

「…通じてますよ!僕が言いたいのはそういう事じゃなくて…。この服…。」

 

「あぁ、この前あった女が居ただろう?白い服着てた…。」

 

あの綺麗なヒトだろうか。師匠の恋人さん1。ついでにほかにも恋人さんがいる、師匠曰く…別に遊んでるわけじゃない、研究してるだけだ、とか。

 

「で、その人がどうしたんですか?」

 

「お前なんかの為にわざわざ作ってくれた。だから、着ろ。まったくもって気に食わないが、着ろ。」

 

「師匠にプレゼントは?」

 

すごい顔でにらまれた。なかったんだ。

 

「お前があそこで出てこなければ、俺だってあんな肩身の狭い思いをしなくてすんだんだ。どうしてくれるんだ、俺の平穏を壊しやがって。」

 

「それって、なんつーか、八つ当りっていうか、逆恨みっていうか。」

 

「黙らないと口裂くからな。」

 

「ってゆうか、そんなにデート続けたかったんなら気付かないフリとかすればよかったじゃないですか。」

 

「…誘拐でもされたら夢見が悪いじゃないか。もっとも、請求する金なんかないが。」

 

でしょうね、借金があるくらいですから。

ため息をつくと、もう一度服を突き付けられる。

 

「着ろ。」

 

「…。はい。」

 

まぁいいかな。素材はよさそうだし、なんとなく師匠に勝った気がしてうれしいし。

有り難く受け取って自室に走っていく。師匠の早くしろよ〜という声が追い掛けてきた。

 

「…ひらひらだ…。」

 

女の子の服みたいだなっていうのが第一印象。

真っ黒なのが唯一の救いだ。そうじゃなかったら恥ずかしい。袖口がふんわりと広がっていて、襟が合わさるところに青い石が縫い付けてある、肌ざわりのいいズボンはやっぱり裾が広がっていて、膝丈。…高いんだろうな、これ。っていうのが、僕の見解だ。

 

「師匠?着替えました、けど。」

 

「ん。…じゃぁ、い…。」

 

こっちをみた師匠が、とまった。

 

「師匠?」

 

「っ…。い、嫌、なんでもない。」

 

そういう師匠の肩は小刻みに震えていて。

ついには壁に背を付けて口とお腹を押さえはじめて…そこでやっと、彼が笑っていることに気付いた。

 

「し、師匠?」

 

「ふ…く、苦しいっ…。お前、なんだ、そ、それ、に、にに似合いすぎ…っ。あ、杏は、…あれか、本当に、飛ぶ子供とか、目指したのか?…ま、まぁ、いい。ん、物凄く似合ってる。よかったな。」

 

…いや、大爆笑されたあと言われても、全然うれしくないんですが。

 

「…確かに金になりそうな気がするな。あいつ相当儲けてたし…やってみるか…。」

 

「あの、行かないんですか?」

 

「……どこに?」

 

あぁ、誰かこの人を治してください。

十分間たっぷり悩んだ師匠が連れていってくれたのは、人間界、地球だった。 

悪魔の仕事、拝見します。

携帯でやってるんですが、どうも書きすぎている気がしてならないので半分に分けました。批評感想お待ちしております(o>□<o)/゛

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