表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/54

PACE5-4→梅 5

    

   

   

    

   

    

    

   

    

    

    

   

    

   

    

    

立法192条〜記憶者による製造物の扱いについて〜

   

一、記憶者は何事があろうとも請け負った製造物を傷つけてはならない。

   

一、記憶者は何事があろうとも請け負った製造物に道を外させてはならない。

   

一、記憶者は何事があろうとも請け負った製造物を手放してはならない。

   

一、記憶者は何事があろうとも請け負った製造物を危機にさらしてはならない。

   

一、記憶者は何事があろうとも請け負った製造物を破壊してはならない。

   

一、記憶者は何事があろうとも請け負った製造物を護り切らなくてはならない。また上記に関して記憶者が破壊された場合、これに付いての保障は一切ない。

   

以上に背いた記憶者は理由の如何にかかわらず極刑翼狩りに処すことをここに明記する。

   

   

    

   

    

    

翼狩り【つばさがり】

別名羽斬り。罪を犯した悪魔ないし天使を極刑に処す方法の一つ。二つの羽斬り刃により翼を狩り落とし、地獄へと落とす。

関連用語→羽斬り刃 地獄 羽斬り 極刑

関連ページ→254 356 444

   

   

    

   

   

    

   

    

   

    

   

   

     

    

     

胸の内を話したら、お前はとどまると言ってくれるのだろうか。

   

    

僕の言葉を聞いた師匠は手に持った蒼いグラスを見つめたまま小さくため息をついた。

    

「……馬鹿なことを言うな。」

   

「僕は本気です!」

   

それを聞いた師匠は、急にくつくつと肩を揺らして笑いだした。

   

「何が本気だ、馬鹿者。自分が何を言っているのかわかってないのか?俺に捨ててください。といっているのと同じだぞ?そんな事もわからない程お前は馬鹿だったのか。」

   

「捨ててください。」

   

それは簡単に唇から離れた。師匠は冷たい目で僕を睨んだあと、 上から下まで僕の体をたどる。

   

「じゃあ全部おいていけ。」

   

「え。」

   

「お前を俺が捨てる前に、お前は俺に愛想を尽かすんだろう? なら俺の与えたモノは全て置いていけ。何がここに残るだ。養って貰っている分際でなにをほざく。」

   

「それについては美子さんが計らってくれる事になりました。ご心配なく。着ているものを返さなくてはならないのなら、後日お返しします。」

   

師匠の目に怒りともいらだちとも取れない感情がちらりと見え隠れする。けれどそれはすぐに消え、後には冷たいため息だけが残る。

   

「では……そういう事ですので。」

   

立ち上がる。のばされた手に気付かないふりをして歩きだそうとしたとき、右顔面にすごい衝撃が走った。

  

「鈴欠さん!」

  

詩葉さんの声。地に両手をつくとそこは土で、縁側から転げ落ちた事に気付いた。

 師匠はひどく冷たい目で僕を見下ろす。怒らせた。それも今までにないくらいに。

   

「勝手にしろ。」

   

僕が何かいう前に、師匠は縁側からでて障子をしめる。この時やっと、自分がとんでもない事をしたことに気付いた。

    

「師匠…。」

    

声は届かない。

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

さぁ、疲れたでしょう。少しお休みなさい。

そう、言って欲しい。

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

「鈴欠さんどういうつもりですか!」

  

「どうもこうも無いだろ?」

   

「貴方極刑に掛かるつもりですか!」

  

「それも一興。楽でいいな。やっと死ねる。」

  

「鈴欠さんっ!」

  

「疲れたんだよいい加減。」

   

「す……。」

  

「詩葉さぁん、無駄だと思いますよ。」

  

銀髪の男を必死に説得しようとする詩葉に、秋穂は呟いた。

  

「課長は言い出すと聞きかないっすから。」

 

「そうだな。」

  

「なんで課長が肯定してるんですか。………酒、いります?」

  

「もってこい。」

   

机に肘をつき二人と目をあわせようともしない銀髪男は、さらりと命令。頷こうとした秋穂が、けれど途中で止められる。

   

「……焼酎がいい。」

  

「はいはい。」

  

なんだかんだ言って、痛手なのだ。秋穂は苦笑して、今夜は付き合ってやろうと覚悟する。もっとも、上司が泥水した所など見たこともないが、この男の酒の強さは尋常じゃないのだ。

   

「秋穂。」

  

「はい?」

  

「引き継ぎ、お前な。」

  

「願い下げ。」

  

それ以上、彼は喋ろうとしない。会話にピリオドを打つように、彼は小さくため息をついた。

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

朧月の下 大人が二人内緒話

  

旦那?

     

何だ。

  

旦那、酔っちゃいませんかい?

    

気のせいだ。

  

嫌でも少しふらついて

  

気のせいだと言っているだろう?

  

はぁ。何かありましたかい?

  

貴様には関係ない。

  

  

銀髪の男は珍しく、酒が回っていた。

じろりと話し相手をにらむと八つ当たり気味に呟く。

  

   

気に入らない。

  

は?あの、あっしが何かいたしました?

  

お前なんかどうでもいい。あぁ苛々する、帰る。

  

いや、旦那? 打ち合わせは……。

  

知るか。

  

だっ、旦那?!

   

仕事はする。さっさと帰る。さっさと帰って羽根切られて潔く死んでやろうじゃねぇか。

  

あの、旦那、本当何かありやした?

   

俺は同じ事を何度も説明するのが大嫌いだ。

  

あ、はぁ。

   

あの恩知らずめ。

  

旦那?

  

   

空には朧月、地上にはあれた三日月。

  


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ