表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/54

PACE4-2→鈴

†追憶2†

     

    

    

    

    

     

    

    

    

    

     

    

    

    

    

     

    

    

    

    

それは法則

    

失われた物

     

    

    

    

    

     

    

    

    

    

     

    

    

    

    

     

    

    

    

    

すべてを失った時(少なくとも自分はそう思った。)茫然と窓の外を眺めて気付いたことがある。

    

12月には何か因縁がある。

    

あれも、これも、亡くしたのは12月。

それは偶然なのか、必然なのか。解らないから、余計に神経質になって他の法則を探す。

   

執着するな。執着すれば、失う。

    

解ってやってしまうのはどうしようもない弱さで。

見つけだした。法則。

執着と12月。

感情と冬。

あぁなんだ。すべて壊すのはやはり自分なのかと。馬鹿みたいに笑ってしまった。

亡くしたくない。失いたくない。いいながら、他から大切を奪うなんて。

失って、悲しむ資格はない。

そうだ、これが仕事。悪魔に産まれついたからには仕方のない、これも法則。

   

「師匠…まだ起きてたんですか?」

   

勝手に部屋に入ってきた、漠然となくしたくないものの、一つ。

   

「あ、やっぱり熱あがってる。仕事はいいですから、横になってください。疲れてるんですよ。」

    

幼い手で熱を計られて、苦笑して大丈夫だと言えば、手近にあった本でぱこんと頭をたたかれた。

ハードカバーな所為か、やけに痛い。痛いと呟けば、しおらしいごめんなさい。

これが本当に俺の弟子か、なんて、思ってしまった。

    

「弥。」

    

子供の後ろの本棚を眺めつつ、思いついたことをいってみる。

    

「暇ができたら、どこかつれていってやろう。」

    

精一杯、親子ごっこ。二年たって、やっとモノになってきた、自分と子供の関係。

子供はすっかり弟子…息子になって、そうだな。少し生意気になってきた。

あぁでも、自分は未だ、自分のままで。父親どころか師匠も上手くできなくて、それでも、俺みたいに育たなかった。優秀な子供を誉めてやりたい。

    

「え。どこにですか?」

     

「どこかだ、どこか。詳しくは当日考えりゃいい。」

     

「えー不安だなぁ、それ。」

    

師匠って計画性ないですし。なんて、手厳しい。

    

「いやならつれて行かないだけだ。」

    

「ぇ〜。つれていってくださいよ〜。」

    

でもそのまえに。と。

    

「ほら、睨めっこしてる書類はいいですから、少し寝てくださいね。」

    

まったく師匠は無理をしすぎるから目が離せません。

    

愛しい女が言った言葉を、子供は呟き。

   

ぐにゃりと歪んだ本棚に、苦笑。

    

「師匠…?」

    

「あ?ただの欠伸だ。」

    

「え?」

    

彼女から一文字、未練の名前。

    

止めたほうがいい、きっと傷つくのはお前だと。言われた言葉を押し切ってつけた、子供の名前。

弥。

彼女に似ても似つかない。ただ時折、ひどく優しい顔をする。

だから、つい、変に期待して……。

     

「師匠?」

     

「りんと呼んだら返事してやろう。」

     

なんて。

     

「……何言ってるんですか。いいから寝てくださいよ。鈴欠師匠。」

     

馬鹿みたいに、笑って、ね。

   

「しかたない、寝てやるか。」

    

「何が仕方ない、なんですか。まったく。」

    

精一杯。正常な親子ごっこ。

    

     

    

    

    

    

     

    

    

    

    

     

    

    

    

    

     

    

    

    

    

PACE4→fin...

NEXT PACE5

Please TO BE CONTINUD

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ