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PACE4-1→雪花 4

†花†

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

ほらね

きっと貴方は忘れてる

この気持ちに気付いたのは私が先だ、ってこと。    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

銀の髪が、太陽に揺れてキラキラキラ。

    

    

    

「おやおや上がってこないねぇ。」

    

黒い天使シュトラフは、小さく笑う。師匠の、舌打ち。

   

「……シュトラフ、お前死ね。」

    

「残念ながらまだ死ねないな。」

    

いいじゃないか、と黒い天使。

    

「君が優雅に泳ぐところなど、みてみたいと思うが?」

    

「貴様正気か?この極寒の中、俺に飛び込めと?!」

     

「さっき飛び込んだ人間が居ただろう?あぁ、あれは落ちた、のが正しいがね。まぁでも早くしないとまずいんじゃないかい?」

     

「……ちっ。」

    

舌打ち。師匠はため息をついてコートのボタンを外した。

    

「おやおや、簡単に行かせると思うかい?残念ながら、私は仕事熱心なんだ。」

    

ぱんぱんとシュトラフが手をたたく。師匠の前に、ずらりと天使が並んだ。

師匠は小さくため息。ポケットに手を突っ込むと、小さな銃を僕にもたせた。

     

「もしもの時はこれで身を守れ。不本意だが見殺しにすることはできないからな。」

    

「師匠…凍死しないでくださいね。」

    

「努力する。」

      

コートとスーツを脱いだ師匠が、僕の体にかける。寒すぎる、と呟いた彼は、ゆったり笑った。

      

「掛かってこい愚民共め。」

     


たんと飛んできれいに着地、地面に手をついて掛かってくる天使を蹴り付ける師匠は、強か。

めずらしく白いワイシャツは、まわりの雪と反射してきらきら。白い世界に、色のある天使に違和感を感じたり。


ばしゃっと水音。師匠が飛び込んだ音にしては小さい気がして目を懲らす。

    

「あぁレーニー無事だったか。」

    

「ユナが見つからないんだ。」

    

「…およげないのか?」

    

「まぁ僕らにとっては湖って滑るモノで泳ぐものじゃないからね。」

     

師匠はため息をついてレーニーさんをひっぱりあげた。そしてむかってくる天使ににこり、肘を入れる。

激しい水の音に、ご愁傷様、なんて、師匠、あなたがやったんでしょう?

    

「弥。…レーニー頼んだ。」

    

「は……。」

     

返事をする前に水音。師匠にしては、ためらいがなかったな。なんて妙に関心してしまった。

    

「大丈夫かなぁ…。」

    

「レーニーさんこそ大丈夫ですか?びしょぬれだし…。」

    

「あぁ、うん、平気。慣れてるんだよね。」

    

慣れてる?

不審に思って問い返せばけろりとした返答。

     

「ここ、よくわれるんだよね。」

     

「じゃぁなんで危ないところを…。」

    

「う〜ん…趣味?」

    

スリルがあっていいんだってさ。と他人事のようなレーニーさん、なんか呆れてため息をついたら、ぱしゃんと水音。あぁ、師匠無事だったんだ、とちょっと関心。

     

「レーニー!これあずかれ!」

    

気を失ってるユナさんを押しつけた師匠が、ぱしゃんと陸にあがる。ぺったりと頬に付いた銀の髪くらい師匠の頬は白く冷たそうで、大丈夫かな、と少し心配してしまう。家ならまだしも、こんな所で倒れられたら困るし。

    

「大丈夫そうか?」

    

「うん、なんとかなりそうだよ。鈴欠は大丈夫?」

    

「問題ない。」

     

何かを呟いた師匠がパチンと指を鳴らす、と不思議なことに師匠の服や髪は何事もなかったようにパリっと乾いてしまった。スーツとコートを羽織った彼はさらりと言う。

     

「じゃぁ、レーニーあとは頼んだ。」

     

「……ぇ。」

     

「俺は何もみてない。俺はユナを助けてない。いいか、これはチャンスだ。」

     

ユナさんを抱えたまま座ってるレーニーさんはきょとんとしている。その横に膝を付いた師匠はにやりと笑った。

     

「あいつが起きたらうまいことを二言三言囁いて、あとはうまくやれ。お前はこいつが欲しいんだろう?」

     

「ほ、欲しいなんて…。」

     

「あぁ、まぁ細かいことはいい。いいか?こいつはお前が助けたんだ。言えるな?」

     

押されたように頷いたレーニーさんが、でも、と呟く。

     

「それじゃ鈴欠が……。」

   

「俺はお前等にしなれちゃ困るし、くっついてもらわなきゃ困るんだよ。」

    

再びきょとんとしたレーニーさん。思わず本音を洩らした師匠は、慌てて言う。

    

「まぁいい、まぁいい。今の事は忘れろ。お前はユナをものにすることだけ考えてればいいんだ。」

     

押されたように、再び頷くレーニーさん。師匠を満足そうにほほえんで、じゃぁ頑張れよ。と歩きだした。

    

「……寒い。」

    

「待ってください師匠!」

    

凄い早足。小走りじゃないと追い付けなくて、声をあげる。

    

「待ってくださいよ師匠っ待って!」

     

「あぁもう、早く歩け。こっちは凍死しそうなんだ。」

    

くるりと振り替えって、ため息。やっと追い付くと左手が差し出される。

    

「……ほら早く行くぞ。冷たくても離すなよ。」

    

初めての感覚。恐る恐る握るとひどく冷たい指先。ぐいっとひっぱられてよろけながらも後を追う。

お父さん、な、師匠。

      

    

     

     

     

      

    

     

     

     

      

    

     

     

     

      

    

     

     

     

ゆらゆらゆらゆらと、揺らされる感覚。

     

「シュリアシェリア。起きてくれないかい、シュリアシェリア。」

      

頭が痛い。今何時だ。思い浮かぶ言葉は言葉として鼓膜をたたく事はなく、すべてため息として流れ落ちた。

弥にベッドを譲ってソファーで寝ているのもあって体中に鈍痛が走る。……これが筋肉痛ではないことを祈りたい。…間接痛もいただけないが。

     

「シュリアシェリア?寝たふりをするとくすぐるがいいのかい?確か君は脇腹が敏感だったと……。」

     

「あぁあぁ煩い!貴様何のつもりだ!」

     

声を荒げて体を起こせば、今度は頭に鈍痛が走る。反射的にこめかみに手をあてると、シュトラフのもっともらしいため息。

     

「おやおや、大丈夫かい?」

     

「大丈夫に見えるか。」

     

「残念ながら見えないね。頭が痛いのかい?」

     

「見て分かるだろう。」

     

ため息をついて、再び横になろうとする。睡眠が確保できる時間はあまりない、一秒でも長く寝ていたいのに、こんな阿呆の戯言に付き合っている暇はなかった。

    

「シュリアシェリア、待ってくれないか?これを飲めばだいぶ楽になるはずだから。」

    

涼しい音に振り向けば、枯葉見慣れない薬瓶をしゃかしゃかと振ってみせる。

    

「なんだそれ。」

    

「薬だよ。」

    

「……。」

    

「君はずいぶん頑張ったからね、私からのプレゼントだ。」

    

「いらない。」

    

「喜んでもらえてうれしいよ。」

    

「人の話をきいてるか?い・ら・な・い。」

    

「頭が痛いのだろう?早くなおさなければ仕事に支障がでるじゃないか。いいのかね?」

    

結局シュトラフの押しに勝てずに、薬を飲んでみる。飲んだ後で、この男はろくなことをしない。と言うのを思い出してしまった。

    

「よく休むといいよ。おやすみ、よい夢を。」

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

それは、昔話。

    

『上役が倒れてどうすんの?ねぇ、課長さん。』

    

そんな心底嫌そうにするなら、引き受けなきゃよかったのに。

視界の端でゆらゆら揺れる金の光。自分の視界が揺れてるのか、光が揺れてるのか。

    

『ねぇ、聞いてんの?地球で風邪拾ってきて拗らせてみんなに迷惑かけてぶっ倒れた鈴欠課長様様。』

    

『………聞いてる。』

    

擦れた声で、やっと。ね。

呼び掛けるのが君じゃなかったら答えなかったってのは、ここだけの話。

    

『何でも程々ってもんがあるでしょ?あんた馬鹿?』

    

額を冷やすための濡れタオル。ろくに絞らないまま押し当てられて、つぅっと頬に流れる。

全身に嫌々さを感じては、さすがに止めておくこともできず。

     

『…別に、いいぞ。帰っても…。』

     

だってほら。君はそんなにも嫌そうで。

そりゃそうだ。世界で一番大嫌いだ、なんて言って殴った相手の看病なんか、ね。

そのくらい、俺だって察せる。

    

『……あんた一人で平気なの?』

    

『たかだか風邪だ。』

    

熱がいくらあろうが、どんなに頭が痛かろうが、これが永遠なわけではないし。なんて、少し強がってみる。

ほらほら、早く帰らないと、移ったらまた、俺が美歌に怒られるから。

     

『……。』

     

そわそわ。

あぁやっぱり帰りたいのか。思ったとたんに意地の悪い発想。目の前で倒れてやったら、彼女を引き止められるか、なんて。

     

『帰れ。ほかにやることもあるだろうし…ここにいるのは嫌だろう?』

      

体を起こせば、くらり、と。

あぁ結構重症かも知れない、とは、悟られないように。

    

『…あんた。馬鹿じゃないの?』

    

何を唐突に。軽く咳き込めば。彼女は苦笑。

     

『別に嫌なんていってないじゃない。』

     

そんなふうに言われたら、期待してしまうだろう。

ほら、また、馬鹿みたいに。

    

『……あんたは気にしないで寝てればいいの。』

    

ベッドに戻されて、さらりと前髪を撫でられれば昔の感覚を思い出して。

訳もなく涙が流れそうになって、そっと、目を伏せる。

    

『あんたが思ってるほど、あんたは私に嫌われてないのよ。』

    

さらりさらりと。

……そんなことを言われたら、期待してしまうのに。

     

     

     

『おやすみなさい。』

     

     

    


25日までに、完結予定のこの雪花。本日は22日。……おわるんでしょうか。不安になる今日この頃、でした。頑張ります…。

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