PACE4-1→雪花 1
†裏目後裏目†
悪いことは続くモノだ。
また
良いことは得てして続かない。
世界はそうにできているのだよ、知らないとは君はなんて浅はかなんだろう。
1525年6月12日 大天使シュトラフ・ブライアン インタビューにて。
久々の幼なじみの機嫌は、最大に悪い。
「お前らの耳は飾りか?俺が何をした。怪我して歩けない女を抱き上げるのがこの国じゃ犯罪になると?幼なじみを抱き上げただけで告発されたんじゃ、この身がいくらあっても足りないだろうが、名誉棄損罪で訴えてやろうか?俺は無実で被害者だ。悪いことは何一つしていないのに急に犯罪者呼ばわりされて殴れたんじゃ俺は報われないんじゃないのか?俺の言っていることに間違いはあるか?反論できるんなら反論してみろ。」
反論できる人なんかいないだろう。もともと、鈴欠は何も悪くないわけだし。
交番の中、パイプ椅子に優雅に腰掛け、長い足を組んでいる幼なじみ鈴欠は、凶悪にほほえんでいた。いつもそうだ、鈴欠は機嫌が悪くなればなるほど、にっこりと笑ってくれる。だからほら、殴った相手、レンはもう開き直ってる……これからが恐いというのに。
「…レーニー…。」
「えっあ、何?」
横からかかったしおらしい声に慌てて返事をする。鈴欠はなぜか顔色をなくしていた。
「なんか…気持ち悪くなってきた……。」
「ぇっ…大丈夫?」
「頭が痛い…。」
「ぇっ……どうしたんだろ。風邪かい?」
額に手をあて、熱がないことを確認しておく。熱をもちはじめている右の頬は、赤く腫れてきていた。この分じゃ、痣になるのも時間の問題だろう。
当たり前と言えば当たり前だ。レンは僕の知ってる奴らの中で一番喧嘩っ早くて強い。その攻撃をしっかり受けてしまって、気を失わなかっただけ凄いと思う、少なくとも僕は。
「あのぅ、僕ら、もうお暇してもよろしいですか?鈴欠、つらそうですし。」
「しかし……。」
渋る警察に、鈴欠はショックを受けたような顔をした。いつもは無表情なのに、こんなときだけ演技力があるのも困りものだ。
「なぁレーニー、俺は捕まるのか?」
「大丈夫だよ、鈴欠は悪いことしてないんだから。」
「こいつらは帰さない気でいるじゃないか。」
「仕方ないよ。まだ状況が把握できてないんだ、きっと。」
納得したように頷いた鈴欠は、ため息をついてうつむいた。痛みがあるんだろう、すっと右頬を押さえる。
「レン、覚えてないの?レンも遊んでもらったコトがあるはずだよ。」
「いくつくらいの時だ…?」
「うーん……七年前までは普通に、鈴兄って懐いてたんじゃなかったっけ。」
「…へ?ぇっ鈴兄?!」
レンの顔がみるみる青ざめていく。うつむいたままの鈴欠に恐る恐る声をかけた。
「鈴兄…?」
「……人の顔をいきなり殴るような知り合い、俺にはいない。」
「ごっごめん!すみません、勘違いでした!」
深々と頭を下げたレンに、警察隊の人は呆気。鈴欠はため息をついてふらつきながらも立ち上がると、ソファーに寝かせていたユナを担ぎあげた。
「かえるぞ。」
「大丈夫?ちょっとふらふらしてるけど……。」
「どこぞの馬鹿が顔なんか殴ってくれたからくらくらするだけだ。」
「大丈夫なの?」
「あぁ。ったく寝穢いな。重いったらない。」
ため息をついた鈴欠は、煙草をくわえて歩き出す。警察の人はとまどいを隠せないようだったけど、鈴欠は気にしていない様だった。ざくざくと雪を踏んで歩いていってしまった。さっきまではあんなに笑顔だったのに、今は冷たい無表情。変わり身の速さには本当に驚きだ。
「どうしたレーニー。早く帰るぞ。」
「あぁ、うん。」
偉そうな態度は健在、か。
昔から、鈴欠はいつもこうだ、斜め四十五度から人を見下す感じ。頭脳明晰、天才と呼ばれてこの村を出て…都会の荒波にもまれたハズなのに、この性格は変わらなかったらしい。はき出される吐息と煙は白い。横顔は小さな頃より落ち着いて綺麗という形容詞が似合っていた。
「お前、前からユナが好きだったんだっけか。」
「き、急に何?!」
思わず声が裏返る。だって気付かれているとは思わなかったのだ、本人にさえ気付かれていない(まぁ気付かれたら気付かれたで困るのだけど。)気持ちを、まさか久々の幼なじみが気付いているなんて、そんなにわかりやすいんだろうか。
「いや、何となく。違うのか。」
「すっ、鈴欠はどうなの?ほっ、ほら、恋人とかっ!」
これ以上聞かれるのがいやで、慌てて話題をすり替える。鈴欠は一瞬きょとんとしたあと、けらけらと笑った。
「居ないように見えるか?」
「自信過剰。」
「よく言われる、が、結果を伴えば問題はないだろう?」
「確かにそうだけどさ。ってことは、彼女、置いてきたの?」
「あぁ……まぁな。どうでもいいのは置いてきた。」
「ぇ。」
問い返すと、鈴欠は静かに煙りを吐いて呟いた。
「どうでも良くない奴は、ちゃんと、此処にいる。」
「…え、どこ?」
間抜けに問い返すと、彼は首に掛かっているリングを見せた。
「コレ。」
「……ごめん、聞いちゃいけなかったみたいだ。」
「ん?あぁ、別にいいさ。もう前のことだし。忘れた。」
鈴欠は嘘が上手い。
忘れた、なら、指輪なんか首にかけてるわけがないのに。どうしようもなく淋しくなって、二人、ため息をついてしまった。
「で、お前はどうなんだ。」
「どうにもならないよ…知ってる?こういっちゃ悪いけど、ユナって鈍いんだ。」
「あぁ、お前は反射神経が鈍そうだけどな。」
さらりと冷たい言葉をはかれて、ちょっとショックだった。
「まぁ……、お前、悪くないと思うけどな。」
「え?」
「同じコトは二度は言わん。」
怒った様に呟いた鈴欠はすたすたと先に行ってしまう。
一つだけ、変わったこと。
彼は淋しく、優しくなった。
今日の師匠はついていない。
「ごっ、ごめん!大丈夫?!」
帰ってきた師匠は右頬を腫らして、しかもユナさんを肩に担いでいた。彼は重い、とユナさんをソファーに放り出すと、自分の手当より先にユナさんの怪我を診だした。だけど、靴下を脱がして包帯を巻きだした時点でユナさんが目覚め、そして、叫んだ。
「いやぁあぁ!さわらないで変態っ!」
大いなる勘違い、ユナさんの渾身の蹴りは驚いている師匠にクリティカルヒット。吹っ飛ばされた師匠はぐったりと床に倒れてしまった。本当に、師匠はついてない。
「本当にごめん!痛い?痛いよね!」
「……。」
そして今、右頬を張らして、首に湿布を貼った(捻ったらしい)師匠は、ユナさんに凄い勢いで謝られている。
「ごめんねっ?で、でも何で殴られたの?」
「犯罪者に間違われた。」
「えぇっ?!」
ぼそっと呟いた師匠の声に、ユナさんが声を上げる。即席の氷嚢を師匠の頬に当てているユナさんは、さーっと白くなった。
「えっと……も、もしかして誘拐とか……?」
「それ以外になにがあると?」
「あたしのせい、よね。」
「それ以外に何がある、と?」
師匠が恐ろしくやさしい声で問い掛ける。恐い。
「……あぁ頭が痛い。もういい。もぅ寝る。」
「しっ、師匠?」
「気持ち悪いし、頭は重いし、起きてたっていいことがない。弥、いつもの。」
ユナさんを押し退けた師匠が、ソファーに横になる。薬の瓶を渡すと、ユナさんが不思議そうな顔をした。
「それ、何?」
「よく眠れる薬。」
答えた師匠が、ひらひらと手を振る。うつ伏せになった彼は起こしたらただじゃ置かないからな、と言い置いて目を瞑った。奧から毛布を取ってきて掛けてあげるとお疲れ様。とレーニーさんが言ってくれる。
「鈴欠って睡眠薬使ってるの?」
「はい。なんか、眠れないんですって。」
「鈴欠そんなに繊細だったかしら。」
「それはあり得ませんね。」
師匠が繊細だったら世界中の生物で繊細じゃないのなんか居なくなる。
だけど、と、レーニーさんが呟いた。
「鈴欠は、ちょっと変わったよ。彼は、淋しい。」
レーニーさんの言葉、ユナさんは小さく首をかしげあんた何が言いたいの、と不審そうに言った。
「まぁいいけど。」
なんでレーニーさんには解るんだろう。師匠の、深い所。
悪夢を見た
君を愛していた頃のもう久しく忘れていた夢
あんなにも、君のことを……。
テスト期間が終わりました。昨日のことです。ですが、今日、もう、テストが帰ってきました。何ですか、これは、もうちょっと、喜びに浸らせて下さいよ先生!と、思っていた立津です。テストも終わったことですし、これからはもっと頑張って更新して行こうと思いますので、感想ご要望等有りましたらお気軽にメッセージなどお願いします…では♪




