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PACE3-1→この子の七つのお祝いに

†残響†

   

      

       

     

      

      

     

    

      

     

   

      

       

     

      

      

     

    

      

     

絶叫

反響

残響

言葉に意味が亡くなる程

絶叫

反響

残響

呪いに意味が亡くなる程

絶叫

反響

残響

廻る廻る世界と怨念

反響

残響

呪いはいつまでも耳奥を舐める

   

      

       

     

      

      

     

    

      

     

   

      

       

     

      

      

     

    

      

     

司令官はいっていた。"伝説が必要なんだ"と。

それがどういう意味なのか、深くは聞かなかった。なんとなく予想はついていたが。

世界と言うものは、そこに生きている生物にはどうにも理解が出来ないような超現象が起きなくてはならない。そう、たとえば、現代の神隠しとか、原因不明の死亡事故とか。たぶんそれの土台になる任務なのだろう。無駄なコトに首を突っ込みたくないから聞かなかった。

仕方ない、これが世界を形成するためだ。そう、いいわけをする。

    

仕方ない。

仕方ない?

じゃぁ何故、私とこの子でなくてはならなかったの?

じゃぁ何のために、私は死んだの?

仕方ないの?

仕方ない?

そんなわけないじゃない。

人間なんていくらでもいるじゃない。

どうして私なの

どうしてこの子なの

どうしてどうしてどうして

     

ごとん

     

あああぁあぁぁああぁぁぁあああっ……!!!

      

     

「……っ!」

      

「ぁ、起きました?」

     

反射的に身を起こして、自分が今まで眠っていたことを思い出した。ふと、視線を横にめぐらし、ここにいるはずのない人物に、かるく驚く。

   

「弥…?!」

   

「だって師匠が具合悪いって静鳴さんが……。」

   

昨日の夜呼ばれて、鳴鈴さんと来たんです。という弥の言葉が飲み込めない。

    

「昨日の夜……か?」

    

「あぁ、師匠丸一日眠ってたからよくわかんないですか?昨日何度か起きたんですけど、すごく朦朧としてて……過度の睡眠不足と疲労だそうですから、安静にしててくださいね。」

   

「ぁ…あぁ…?悪い、全く意味がわからない。」

   

首を傾げると弥は小さくため息をついた。

   

「つまり、師匠は仕事を終えてきた朝から、24時間以上たってるってことです。もうお昼過ぎてるんですよ。」

   

「………あぁ。なるほど。」

   

ということは、俺の役目は終わっているらしい。布団を跳ねのけて立ち上がると、弥は不思議な顔をした。

    

「なんだ。」

    

「……何処行くんですか?」

    

「当たり前だろ、帰る。」

    

「その服着たままで、ですか?」

    

弥はもの珍しそうに浴衣を眺めている。興味をもったらしく、袖をひっぱったり、帯に触れてみたり…。面白いのでそのままにしておいたが、それがいけなかったらしい。弥の目が足元に落ちる。そして、停止。

   

「どうしたんですかソレっ?!」

    

「あぁ…靴擦れた。」

    

「真っ赤じゃないですか!手当てしないと…。」

   

「ほっとけば治る。」

   

「ダメですよ!ほら座って足出してください!」

   

こうなると弥はとまらない。あきらめて座ると、何処からか消毒液と包帯をだした彼は手際よく手当てを終了した。

そんな険しい顔をしていたのだろうか、消毒しみました?なんてきかれてしまった。お前じゃないんだよ、と返してやれば、僕は我慢できますもん、なんて生意気に答えてきた。

10歳ともなると、こんなに生意気になるものなのか、自分がどうだったか、考えだしてやめた。疲れているのだろうか、声が耳から離れないのだ。あと、あの目も。

   

「何考えてるんですか?」

   

弥の声に、別に、と返す。そうだ、なんてことない。地球では人間の命をもてあそべば犯罪になるんだし、声が耳障りだから殺した、なんてなったら普通に大犯罪者なんだろう。郷に入れば郷にしたがえ。だっけか?このくらい、甘んじて受けるべきだろう。理不尽に死んだ、奴らの恨みくらい。

それにほら、あの女も言ったじゃないか。どうして、ゆるさないわ。あぁそうだ許されようなんて思っちゃいない。

   

「師匠?」

   

「なんだ。」

   

「何考えてるんですか…?」

    

「何も考えちゃいないさ。」

    

そう、まともなコトなんて何一つ…あぁでも、願わくば。

    

「師匠…?」

    

「お前がこんな思いをしないといいと思っただけだ。」

   

「…師匠、なんか変です……。」

   

そんなことない、俺はお前が思っている以上にお前の幸を祈ってる。

絶対言ってはやらないけれど。

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

村は怯えていた。

死んだ老夫婦、並べられた首。山奥で空を見上げる女の死体。居なくなった子供。すべては御狐様のなさった事だと、村人は恐怖した。

御狐様がお怒りだと、子供は帰ってこないと、人々は噂し恐れる。

そんなある日、村に少年が帰ってきた。

  

「あぁ」

「あぁ何処へ行っていたの」

「御狐様はどうしたの」

「あぁでも」

「あぁ無事でよかった」

   

子供が、ふと、顔をあげた。

   

    

「……どけ。」

   

    

それは、とてもとても低い声。村人は静まり返り、少しだけ距離を置いた。

   

「どうしたの?」

「何があったの?」

「何処か苦しいの?」

「どうしたの?」

   

とおくから、からんころん、音が近づいてくる。

少年は一度深く息を吸うと、叫んだ。

  

「どけどけっ!御狐様がお通りだ!」

   

草むらから双眸を縫った狐が飛び出て、村人に飛び掛かる。首を、足を食い千切り、けらけら、けらけらと笑う。

からんころん、音は急に止まり、少年は小さく振り向いた。

   

「あぁあぁ、まったく恥べき奴等だ。貴様等の幸せなどもとより望んではおらぬ。」

   

冷たい御狐様はけらけら笑い、冷たい少年は無表情で村人を見下ろしていた。

    

「あぁ」

「あぁ御狐様」

「どうかお許しを」

「どうか御慈悲を」

「あぁどうか」

「お許しください」

「我らは決して」

「決して忘れませぬ」

「もう二度と」

「この様なことが」

「ないように」

「あぁ」

「あぁ御狐様」

   

恐怖に震える村人を残し、御狐様は姿を消した。最後に一つ、決して忘れるな、と言い残して。

   

村には伝説が残っている。

『御狐様』

盗られたくなきゃ隠して育てろ愛しい子。

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

「えー、今日未明、再び――県――市――村の小学校で遺体が発見されました。

遺体は頭部が切断されており、頭部はまだ、発見されておりません。

遺体は――村に住んでいる〇〇〇〇さん(42)また、娘の〇〇さんも行方不明ということで、警察は二つの事件に関連があるとみて捜査をすすめる方針です。以上――村から中継でお伝えしました。」

   

テレビから流れる無機質な声、生放送のワイドショーらしく、芸能人とアナウンサーが入り乱れて座っている。

   

「――村の事件はこれで三件目ですね。」

   

「子供がいなくなり、その母親を殺害する。という手口のようですが…なんて残酷な。…ねぇ、〇〇さん。」

   

「えぇ…子供たちが無事帰り、一刻も早い事件解決を望みます。」

   

「そういえば、‐‐さんは――県の出身でしたね。」

   

「あぁはい…」

   

「ぁっ、今速報が入りました。――村で居なくなった〇〇君が発見されたとの事です。」

   

「それはよかったですね!」

   

「――村に中野記者がインタビューに行っています、中野記者?」

    

「はい。私は今――村の山、〇〇君が発見されたお寺にきています。村のかたの話によりますと、このお寺は昔から御狐様がいらっしゃるお寺とされていたようです。警察は〇〇君に詳しく話を聞き捜査をすすめる模様です。以上――村からお伝えしました。」

    

「はい。…しかし御狐様とはいったい?」

    

「あぁ、村に伝わる守り神の事です。御狐様の怒りに触れると、七つになる前の子供がさらわれる、といい伝えがあるんですよ」

    

「はぁ、そうなんですか。」

    

「結構根強く残っている言い伝えですね。信じている方もいるようですし。」

    

「犯人はその話を知ってるのかもしれませんねぇ。」

    

「そうですね。まさか御狐様がいるわけありませんから。」

     

テレビに笑い声が広がる。

    

「では、次はスポーツの………」

    

    

    

    

   ごとんっ

    

     

    

     

あぁ

だから忘れるなと言ったのに。

     

     

     

これはまた、別の話。

     

     

     

      

    

    

    

    

PACE3 FIN

NEXT PACE4

TO BE CONTINUD

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