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PACE3-1→この子の七つのお祝いに...

後書きにて詳細を書きますが、この話は"あさき"という人の"この子の七つのお祝いに"という歌をもとに書いていきたいと思っています…。気になる方は後書きへどうぞ★

†散華†

 

 

 

 

 

お月様の下で追いかけっこ

お月様と追いかけっこ

御狐様は口の端をつりあげて

 

背中二シガミツイテ首カルゾ。

 

 

 

 

後ろの正面だぁーれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタカタと白黒キネマのテープが廻る。

夫をなくした女は六つの子にせがまれて、村に伝わるお話を語りだす。

 

『昔、この村には"神の子"っていう考えがあったのよ、七つになるまでは神様の子なの。いい子にしていないと、御狐様に目をつけられてさらわれてしまうのよ。』

 

少年はあわてて居住まいを正して

 

『母様、私は大丈夫でしょうか。』

 

『いい子にしていればね、七つになったらこいのぼりをあげてお祝いをしましょう。』

 

ゆったりと女は笑い、神棚の横のぼんぼりから火を消した。古い屋内に西日が落ちる。

 

『さぁ、父様のお墓参りに行きましょう。』

 

母子互いに手を繋ぎ、西にむかって歩いていく。その背を追う影には気付かず、仲良く会話しながら…。


『父様はどうしているでしょうか。』


『どうしているか…あなたはどう思う?』


『私は……。』


私たちを見守っているといい、と子は呟く。母はほほ笑みそうねと言った。


ぱたぱたと寒椿、からりと晴れた空の青に、染め入るように落ちてゆく。


『父様は喜んでくれるでしょうか。』


『えぇ、きっと。』


父の墓の前で母は懸命に祈っていた。



どうかこのちぃさい幸せ、小さいあなたに幸せの風が吹きますように……。



『さぁ、暗くなる前に帰りましょう。』


母は息子の手をとり、日の墜ちかけた道を歩いていく。その後ろから、からん、ころん、と下駄の音。

子は何気なく振り返り、音の先を見つけようとするが太陽を背負う"ソレ"は逆光ではっきりとした輪郭をとらえることができなかった。


『こんばんは。』


それは、低く透き通る、けれど、聞き慣れない声。村は小さく、来訪者も少ない。不審に思った母は振り返り、そして困惑した。

銀の髪、濃紺の飾り気ない着流し。こんな髪を持つ者は、この村にいない。じゃぁ、この者は? 逆光で表情が見えない不安にかられた母は、それでもただ一つの幸せをなくさぬように、慎重に呟く。


『こんばんは…何方?』


『その子をこちらへ。』


『……何。』


『わからぬか、その子をこちらへ渡せと言っている。』


日が落ちて、"ソレ"の姿がはっきりとする。"ソレ"を見た母は、子を抱き上げ走りだした。


"ソレ"は狐の顔をしていたからだ。




村にはある伝説がある。

御狐様に取られたくなきゃかくして育てろ愛しい子。







あぁどうして。貴方が遺した只一つのちぃさな幸せなのに。

 










*。・.:゜・












あぁ何故にこの子が。


「母様?どうしたのです、母様!」


「走りなさい!」


からん、かろん、ころん、からん。歩調はかわらない。なのに、音は確かに近づいている。


「母様っ…!」


声に疲労が混じっているのにはとうに気付いていた。まだ幼いのだ、疲れてしまうのは当然だろう。


「後ろの正面だぁーれ…」


耳元で、低く擦れた声が響く。振り向かないで子を抱き上げてさっきより早く逃げ出した。


からん

   

     ころん


 かろん

  

       ころん



ころん




「早くその子を渡せ。」


「やりませぬ。この子は誰にも誰にもやらぬ!」


「そうか…?」


声が、笑う。


「そなたは。」


「そなたは私の言うことをきかぬのか?」


後ろから追ってくるのが誰か、など、考えなくても解る。

守り神はたびたび村におりてきて、七つに満たない気に入った子をさらっていく。

あんなもの、迷信だと思っていた。迷信以外なにものでもないと、そう思っていた。

ならばこの状況は何なのだ。後ろから追ってくるこの、人間離れした"アレ"は何なのだ。


御狐様


そんなものが居るはずないと、思えない。

あの狐の顔は面だと言うことなら、とうに気付いていた。それでも、恐かった。

わかったからだ、"アレ"は本気であることが。


「やるものか!この子のすべては彼の方と私のものだ!誰にもやるものか!」


叫べば"ソレ"はケラケラと笑った。何が楽しいのか、ケラケラ、けらけらと。


「な、何が可笑しい!」


「そんなに言うのなら、逃げればよいだろう?」


けらけらけらけら

"ソレ"はひとしきり笑った後、そっと、面を押し上げた。


「どうした、逃げぬのか?」


ひどく端正な顔立ち。薄い唇からちろりと赤い舌が覗く。


「っ……!」


「ならば、その子は私のモノだ。」


冷たい手が首に触れる。それを振り切って走りだす。なんとかしなくては、なんとか…なんとかしなくては。



走る母子と狐。

見ているのは、静かな満月だけだった。

 



















☆.:*・°



















 

朝起きたら、師匠がいなかった。

机の上にはメモが一枚。意外にも整った字で、今日は仕事がある事、危険だから連れていけない事、遅くても今日中には帰ってこれる事なんかが書いてあった。

右に少し傾いた字。ため息をついてメモをごみ箱に放りなげた。メモ書くんだったら、前の日に言っておいてくれればよかったのに。

大体、徹夜あけで大丈夫なんだか。

最近師匠は仕事が立て込んでてまともに寝てない。僕が声をかけないといつまでも机に向かってるくらいだ。

師匠が最近口にだすことって言えば、眠い、とか、終わらない、とか。だいぶ切羽詰まってるのはみればわかるけど、それにしたって無理しすぎだ。昨日の夜、やっと説得に応じて食べてくれたのはトースト一枚。ちょっと怒鳴りたくなったけど気力で我慢した。師匠だって疲れてるんだ、たぶん。

まぁそんなわけで…暇だ。


「……ちゃんと仕事してるかなぁ、師匠…。」


窓の外を眺めてため息。師匠がいないと調子が狂う、本当に。


「早く…帰ってくればいいのに……。」










 

*.。;゜・










 

いない貴方に笹舟を

小さな貴方に折り鶴を


あぁ


こいのぼりが空に上ってゆくまで…




 


何だかわかりづらくてごめんなさいι前書きにも書いたようにこの章は"この子の七つのお祝いに"という歌をもとに書いていこうと思います……。早くも挫折しかけていますが…。あくまでも、参考にする、程度ですので歌を知っている方には違和感を覚える方もいるかもしれませんが、御了承下さい。

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